むずむず脚症候群にジピリダモールは有効なのか?
レストレスレッグス症候群には新しい薬理学的標的が必要とされています。前臨床データは、アデノシン作動性低下状態が病態に重要な役割を果たしていることが示唆されています。
そこで今回は、平衡ヌクレオシド輸送体の阻害剤の一つであるジピリダモールが、効果的な対症療法を提供できるかどうかを明らかにすることを目的に実施された二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の結果をご紹介します。
特発性レストレスレッグス症候群の未治療患者におけるジピリダモール(300mgまで増量可能)の有効性が2週間で評価されました。各治療期の後に、複数回の固定テストと睡眠ポリグラフ検査が行われました。重症度はInternational Restless Legs Rating Scale、Clinical Global Impression、Medical Outcomes Study Sleep scaleにより毎週評価されました。
本試験の主要エンドポイントは治療効果でした。
試験結果から明らかになったことは?
29例中28例が組み入れられました。
国際むずむず脚評価尺度得点 | ジピリダモール群 | プラセボ群 |
ベースライン時 | 24.1±3.1 | 23.7±3.4 |
2週目終了時 | 11.1±2.3 P<0.001 | 18.7±3.2 |
国際むずむず脚評価尺度得点は、ベースライン時の平均±標準偏差24.1±3.1から2週目終了時には11.1±2.3に改善したのに対し、プラセボ群では23.7±3.4から18.7±3.2に改善しました(P<0.001)。
Clinical Global Impression、Medical Outcomes Study Sleep、Multiple Suggested Immobilization Testのスコアはすべて改善しました(P<0.001)。
ジピリダモールの平均有効量は217.8±33.1mg/日でした。
ジピリダモール群 | プラセボ群 | P | Effect est. | 95%CI | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Mean | SD | Mean | SD | ||||
総記録時間(分) | 463.1 | 32.7 | 450.7 | 44.6 | 0.273 | 12.37 | −10.32 ~ 35.06 |
総睡眠時間(分) | 382.2 | 45.1 | 351.1 | 56.3 | 0.014 | 31.11 | 6.92 ~ 55.29 |
睡眠潜時(分) | 20.3 | 8.1 | 27.5 | 11.1 | 0.007 | −722 | −12.07 ~ −2.38 |
睡眠効率(%) | 82.5 | 5.9 | 77.1 | 7.9 | 0.003 | 5.41 | 2.26 ~ 8.56 |
入眠後の起床(分) | 59.8 | 22.9 | 74.3 | 30.3 | 0.018 | −14.48 | −26.32 ~ −2.65 |
覚醒指数(#/時) | 23.5 | 15.1 | 30.7 | 14.2 | 0.020 | −7.18 | −14.21 ~ −0.15 |
睡眠変数は改善しました。
ジピリダモール投与終了時の平均周期性下肢運動指数は8.2±3.5であったのに対し、プラセボ群では28.1±6.7でした。
副作用(ジピリダモール vs. プラセボ)は腹部膨満感(18% vs. 7%)、めまい(10.7% vs. 7.1%)、下痢、無力症(各7.1% vs. 3.6%)でした。
コメント
レストレスレッグス症候群(RLS)の原因は明らかとなっていませんが、ドーパミン作動性神経の活動低下、鉄欠乏、遺伝的要因が報告されています。また、アデノシンは神経活動を抑制する神経伝達物質であり、RLS患者ではアデノシンの機能異常が症状に関与している可能性が報告されています。このため、ジピリダモールがアデノシン再取り込みを阻害し、アデノシン濃度を増加させることで、RLS症状の改善に寄与すると考えられています。
さて、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の結果、ジピリダモールはレストレスレッグス症候群の感覚・運動症状および睡眠に対して有意な治療効果を有することが示されました。
症例数、治療期間など試験の限界はあるものの、非常に有益な結果であると考えられいます。再現性の確認も含めて、より大規模かつ長期的な試験の実施が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の結果、ジピリダモールはレストレスレッグス症候群の感覚・運動症状および睡眠に対して有意な治療効果を有することが示された。
根拠となった試験の抄録
背景:レストレスレッグス症候群には新しい薬理学的標的が必要である。前臨床データは、アデノシン作動性低下状態が病態に重要な役割を果たしていることを示唆している。
目的:本研究の目的は、平衡ヌクレオシド輸送体の阻害剤、例えばジピリダモールが効果的な対症療法を提供できるかどうかを明らかにすることである。
方法:2週間の二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により、特発性レストレスレッグス症候群の未治療患者におけるジピリダモール(300mgまで増量可能)の有効性を評価した。各治療期の後に、複数回の固定テストと睡眠ポリグラフ検査を行った。重症度はInternational Restless Legs Rating Scale、Clinical Global Impression、Medical Outcomes Study Sleep scaleを用いて毎週評価した。
主要エンドポイントは治療効果であった。
結果:29例中28例が組み入れられた。国際むずむず脚評価尺度得点は、ベースライン時の平均±標準偏差24.1±3.1から2週目終了時には11.1±2.3に改善したのに対し、プラセボ群では23.7±3.4から18.7±3.2に改善した(P<0.001)。Clinical Global Impression、Medical Outcomes Study Sleep、Multiple Suggested Immobilization Testのスコアはすべて改善した(P<0.001)。ジピリダモールの平均有効量は217.8±33.1mg/日であった。睡眠変数は改善した。ジピリダモール投与終了時の平均周期性下肢運動指数は8.2±3.5であったのに対し、プラセボ群では28.1±6.7であった。副作用(ジピリダモール vs. プラセボ)は腹部膨満感(18% vs. 7%)、めまい(10.7% vs. 7.1%)、下痢、無力症(各7.1% vs. 3.6%)であった。
結論:ジピリダモールはレストレスレッグス症候群の感覚・運動症状および睡眠に対して有意な治療効果を有する。今回の知見は、前臨床試験から予測されたジピリダモールのレストレスレッグス症候群に対する有効性を確認するとともに、レストレスレッグス症候群におけるアデノシンの重要な役割を支持するものである。
キーワード:アデノシンENT阻害薬;臨床試験;ドパミンアゴニスト;グルタミン酸;レストレスレッグス症候群(RLS)
引用文献
A Randomized, Placebo-Controlled Crossover Study with Dipyridamole for Restless Legs Syndrome
Diego Garcia-Borreguero et al. PMID: 34137476 PMCID: PMC8530834 DOI: 10.1002/mds.28668
Mov Disord. 2021 Oct;36(10):2387-2392. doi: 10.1002/mds.28668. Epub 2021 Jun 17.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34137476/
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