日本におけるKDIGOヒートマップによる心血管、腎、死亡リスク(データベース研究; Clin Kidney J. 2024)

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KDIGOヒートマップによる患者予後の予測精度はどのくらい?

KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)は、国際的腎臓病ガイドライン機構と訳され、急性腎障害(AKI)や慢性腎臓病(CKD)に関する診療ガイドラインや基準を提唱しています。その中にCKD患者の予後を予測した腎臓病ヒートマップがありますが、日本人の予後予測にどの程度マッチするのかについては充分に検証されていません。

そこで今回は、日本における慢性腎臓病(CKD)患者の予後を腎臓病ヒートマップ(KDIGO)を用いて評価することを目的に実施された日本のデータベース研究の結果をご紹介します。

本研究では、推定糸球体濾過量(eGFR)が90mL/分/1.73m2未満の人の予後について、日本の電子カルテデータベースを用い、KDIGOヒートマップに基づいて評価されました。

本研究の主要アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)であり、心筋梗塞(MI)、脳卒中、心不全(HF)入院、院内死亡の複合でした(MACE1と呼ばれる)。さらに、アドホックMACE2(MI入院、脳卒中入院、HF入院、院内死亡)が検討されました。副次的転帰は腎転帰でした。

試験結果から明らかになったことは?

対象となった543,606人のうち、平均年齢は61.6±15.3歳、50.1%が男性で、40.9%に尿蛋白が認められませんでした。

MACE1
ハザード比 HR(95%CI)
vs. G2A1
MACE2
ハザード比 HR(95%CI)
vs. G2A1
G3aA1HR 1.16(1.12~1.20HR 1.17(1.11~1.23
G2A2HR 1.17(1.12~1.21HR 1.35(1.28~1.43
G5A3HR 2.83(2.54~3.15HR 3.43(3.00~3.93

MACEのリスクは、KDIGOの初期段階からeGFRの低下と蛋白尿の増加の両方に伴って独立して増加しました:G2A1と比較したMACE1とMACE2のハザード比(95%信頼区間)は、G3aA1ではそれぞれ1.16(1.12~1.20)と1.17(1.11~1.23)、G2A2ではそれぞれ1.17(1.12~1.21)と1.35(1.28~1.43)でした。G5A3ではそれぞれ2.83(2.54~3.15)、3.43(3.00~3.93)まで増加しました。

腎転帰のリスクもCKDの進行とともに増加しました。

コメント

日本においてもKDIGOの提唱するCKD重症度分類(CGA分類)が用いられています。しかし、日本人の予後予測に有効であるのかについては充分に検証されていません。

さて、日本のデータベース研究の結果、日本における心血管および腎リスクの評価におけるKDIGOヒートマップの適用可能性が初めて示されました。リスクはCKDの早期から上昇し、早期診断と適切な検査による介入の重要性が示されました。

CKDは予後不良となりやすく、血圧コントロールなどの適切な介入が求められます。今回の研究結果から、KDIGOヒートマップが日本人の予後予測にも有効であることが示されましたが、重症度分類ごとの介入が、どの程度予後を向上できるのか、については更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 日本のデータベース研究の結果、日本における心血管および腎リスクの評価におけるKDIGOヒートマップの適用可能性が初めて示された。リスクはCKDの早期から上昇し、早期診断と適切な検査による介入の重要性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:本研究の目的は、日本における慢性腎臓病(CKD)患者の予後を腎臓病ヒートマップ(KDIGO)を用いて評価することである: Improving Global Outcomes(KDIGO)ヒートマップを用いて評価した。

方法:推定糸球体濾過量(eGFR)が90mL/分/1.73m2未満の人の予後を、日本の電子カルテデータベースを用いてKDIGOヒートマップに基づいて評価した。
主要アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)であり、心筋梗塞(MI)、脳卒中、心不全(HF)入院、院内死亡の複合であった(MACE1と呼ばれる)。さらに、アドホックMACE2(MI入院、脳卒中入院、HF入院、院内死亡)が検討された。副次的転帰は腎転帰であった。

結果:対象となった543,606人のうち、平均年齢は61.6±15.3歳、50.1%が男性で、40.9%に尿蛋白が認められなかった。MACEのリスクは、KDIGOの初期段階からeGFRの低下と蛋白尿の増加の両方に伴って独立して増加した:G2A1と比較したMACE1とMACE2のハザード比(95%信頼区間)は、G3aA1ではそれぞれ1.16(1.12~1.20)と1.17(1.11~1.23)、G2A2ではそれぞれ1.17(1.12~1.21)と1.35(1.28~1.43)であった。G5A3ではそれぞれ2.83(2.54~3.15)、3.43(3.00~3.93)まで増加した。腎転帰のリスクもCKDの進行とともに増加した。

結論:本研究は、日本における心血管および腎リスクの評価におけるKDIGOヒートマップの適用可能性を初めて示したものである。リスクはCKDの早期から上昇し、早期診断と適切な検査による介入の重要性を示した。

キーワード:KDIGOリスク分類、心血管イベント、慢性腎臓病、観察研究、腎イベント

引用文献

Cardiovascular, renal and mortality risk by the KDIGO heatmap in Japan
Shoichi Maruyama et al. PMID: 39170932 PMCID: PMC11336683 DOI: 10.1093/ckj/sfae228
Clin Kidney J. 2024 Jul 30;17(8):sfae228. doi: 10.1093/ckj/sfae228. eCollection 2024 Aug.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39170932/

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