持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドの体重減少効果はどのくらい?
肥満は世界的な公衆衛生の問題になっており、中国は世界で最も多くの罹患者を抱えていることが知られています。持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドは、副作用として紹介症状や体重減少をもたらしますが、肥満患者における有効性・安全性については充分に検証されていません。
そこで今回は、肥満または過体重で体重関連合併症を有する中国人成人における体重減少を目的としたチルゼパチド治療の有効性および安全性を評価することを目的に実施されたランダム化比較試験(SURMOUNT-CN試験)の結果をご紹介します。
2021年9月~2022年12月に中国の29施設で実施されたこのランダム化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験は、体格指数(BMI)が28以上または24以上で、糖尿病を除く少なくとも1つの体重関連合併症を有する中国人成人(18歳以上)が対象となりました。
試験参加者は、週1回、10mg(n=70)または15mg(n=71)のチルゼパチドを皮下投与する群とプラセボ(n=69)を投与する群にランダムに割り付けられ(1:1:1)、さらに生活習慣への介入が52週間行われました。
本試験の主要エンドポイント(Co-primary end points)は、ベースラインからの体重変化率および52週目における5%以上の体重減少でした。有効性および安全性の解析はintention-to-treat集団で行われました。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された210人の参加者(女性 103人[49.0%];平均年齢 36.1[SD 9.1]歳;体重 91.8[SD 16.0]kg;BMI 32.3[SD 3.8])のうち、201人(95.7%)が試験を完了しました。
第52週における体重の平均変化 (95%信頼区間) | プラセボとの差 (95%信頼区間) | |
チルゼパチド10mg投与群 | -13.6%( -15.8% ~ -11.4%) | -11.3% (-14.3% ~ -8.3%) P<0.001 |
チルゼパチド15mg投与群 | -17.5%(-19.7% ~ -15.3%) | -15.1% (-18.2% ~ -12.1%) P<0.001 |
プラセボ投与群 | -2.3% | Reference |
第52週における体重の平均変化は、チルゼパチド10mg投与群で-13.6%(95%信頼区間 -15.8% ~ -11.4%)、チルゼパチド15mg投与群で-17.5%(95%信頼区間 -19.7% ~ -15.3%)、プラセボ投与群で-2.3%でした(10mgとプラセボの差 -11.3%、95%CI -14.3% ~ -8.3%;P<0.001;15mgとプラセボの差 -15.1%、95%CI -18.2% ~ -12.1%;P<0.001)。
5%以上の体重減少を達成した参加者の割合 | |
チルゼパチド10mg投与群 | 87.7% P<0.001 vs. プラセボ |
チルゼパチド15mg投与群 | 85.8% P<0.001 vs. プラセボ |
プラセボ投与群 | 29.3% |
5%以上の体重減少を達成した参加者の割合は、チルゼパチド10mgで87.7%、チルゼパチド15mgで85.8%、プラセボで29.3%でした(プラセボとの比較ではP<0.001)。
チルゼパチドで最も頻度の高かった治療緊急有害事象は消化器系でした。重症度は軽度から中等度のものが多く、治療中止に至ったものはほとんどありませんでした(5%未満)。
コメント
チルゼパチドは、GIP受容体及びGLP-1受容体のアゴニストであり、両受容体に結合して活性化することで、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させます。2型糖尿病の治療薬として使用されていますが、副作用として消化器系の症状や体重減少が報告されています。肥満患者における効果については充分に検証されていません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、肥満または過体重の中国人成人において、チルゼパチド10mgまたは15mgの週1回投与は、許容可能な安全性プロファイルで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある体重減少をもたらしました。肥満症の適応が追加になる日は遠くなさそうです。
GLP-1受容体作動薬と同様に、体重減少効果が得られるようですが、GIP受容体及びGLP-1受容体作動薬に特有な事象について、長期的な安全性評価が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、肥満または過体重の中国人成人において、チルゼパチド10mgまたは15mgの週1回投与は、許容可能な安全性プロファイルで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある体重減少をもたらした。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:肥満は世界的な公衆衛生の問題になっており、中国は世界で最も多くの罹患者を抱えている。
目的:肥満または過体重で体重関連合併症を有する中国人成人における体重減少を目的としたチルゼパチド治療の有効性および安全性を評価すること。
試験デザイン、設定、参加者:2021年9月~2022年12月に中国の29施設で実施されたこのランダム化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験は、体格指数(BMI)が28以上または24以上で、糖尿病を除く少なくとも1つの体重関連合併症を有する中国人成人(18歳以上)を対象とした。
介入:試験参加者をランダムに割り付け(1:1:1)、週1回、10mg(n=70)または15mg(n=71)のチルゼパチドを皮下投与する群とプラセボ(n=69)を投与する群に分け、さらに生活習慣への介入を52週間行った。
主要アウトカムと評価基準:主要エンドポイント(Co-primary end points)は、ベースラインからの体重変化率および52週目における5%以上の体重減少であった。有効性および安全性の解析はintention-to-treat集団で行われた。
結果:ランダム化された210人の参加者(女性 103人[49.0%];平均年齢 36.1[SD 9.1]歳;体重 91.8[SD 16.0]kg;BMI 32.3[SD 3.8])のうち、201人(95.7%)が試験を完了した。第52週における体重の平均変化は、チルゼパチド10mg投与群で-13.6%(95%信頼区間 -15.8% ~ -11.4%)、チルゼパチド15mg投与群で-17.5%(95%信頼区間 -19.7% ~ -15.3%)、プラセボ投与群で-2.3%であった(10mgとプラセボの差 -11.3%、95%CI -14.3% ~ -8.3%;P<0.001;15mgとプラセボの差 -15.1%、95%CI -18.2% ~ -12.1%;P<0.001)。5%以上の体重減少を達成した参加者の割合は、チルゼパチド10mgで87.7%、チルゼパチド15mgで85.8%、プラセボで29.3%であった(プラセボとの比較ではP<0.001)。チルゼパチドで最も頻度の高かった治療緊急有害事象は消化器系であった。重症度は軽度から中等度のものが多く、治療中止に至ったものはほとんどなかった(5%未満)。
結論と関連性:肥満または過体重の中国人成人において、チルゼパチド10mgまたは15mgの週1回投与は、許容可能な安全性プロファイルで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある体重減少をもたらした。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT05024032
引用文献
Tirzepatide for Weight Reduction in Chinese Adults With Obesity: The SURMOUNT-CN Randomized Clinical Trial
Lin Zhao et al. PMID: 38819983 DOI: 10.1001/jama.2024.9217
JAMA. 2024 May 31. doi: 10.1001/jama.2024.9217. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38819983/
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