混合型高脂血症に対するAPOC3標的RNA干渉剤プロザシランの効果はどのくらい?(DB-RCT; MUIR試験; N Engl J Med. 2024)

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アポリポ蛋白C3(APOC3)RNA干渉剤プロザシランの有効性・安全性は?

混合型高脂血症患者では、中性脂肪(トリグリセリド、トリグリセライド)に富むリポ蛋白中の残存コレステロールに起因する非高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の上昇により、アテローム性動脈硬化性心血管系疾患のリスクが上昇することが報告されています。

トリグリセリドリッチリポ蛋白の代謝とクリアランスは、アポリポ蛋白C3(APOC3)がリポ蛋白リパーゼを阻害することによって制御されます。したがって、APOC3に対するRNA干渉剤であるPlozasiran(プロザシラン)がトリグリセリドリッチリポ蛋白を代謝を制御し、非HDLコレステロール値の低下、アテローム性動脈硬化性心血管系疾患のリスク低減をもたらす可能性がありますが、実臨床での検証は充分ではありません。

そこで今回は、混合型高脂血症患者(すなわち、トリグリセリド値が150~499mg/dL、低比重リポ蛋白[LDL]コレステロール値が70mg/dL以上、または非HDLコレステロール値が100mg/dL以上)を対象に、肝細胞を標的としたAPOC3低分子干渉RNAであるプロザシランの安全性と有効性を評価する48週間の第2b相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の結果をご紹介します。

試験参加者は4つのコホートのそれぞれにおいて、Plozasiran(プロザシラン)投与群とプラセボ投与群に3:1の割合で割り付けられました。最初の3つのコホートでは、参加者は1日目と12週目にプロザシラン(10mg、25mg、50mg)またはプラセボの皮下注射を受けました(四半期ごとの投与)。第4のコホートでは、参加者は1日目と24週目に50mgのプロザシランまたはプラセボを投与された(半年ごとの投与)。プラセボを投与された参加者のデータはプールされました。

本試験の主要エンドポイントは24週目の空腹時トリグリセリド値の変化率でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計353例の参加者がランダム割付けを受けました。

空腹時トリグリセリド値におけるプラセボと比較したベースラインからの変化率の最小二乗平均
10mg/kg四半期投与群-49.8%ポイント(95%CI -59.0 ~ -40.6
P<0.001 vs. プラセボ
25mg/kg四半期投与群-56.0%ポイント(95%CI -65.1 ~ -46.8
P<0.001 vs. プラセボ
50mg/kg四半期投与群-62.4%ポイント(95%CI -71.5 ~ -53.2
P<0.001 vs. プラセボ
50mg/kg半期投与群-44.2%ポイント(95%CI -53.4 ~ -35.0
P<0.001 vs. プラセボ

24週目において、プロザシランにより空腹時トリグリセリド値の有意な低下が観察され、プラセボと比較したベースラインからの変化率の最小二乗平均は10mg/kg四半期用量投与群で-49.8%ポイント(95%信頼区間[CI] -59.0 ~ -40.6)、25mg/kg四半期投与群で-56.0%ポイント(95%CI -65.1 ~ -46.8)、50mg/kg四半期投与群で-62.4%ポイント(95%CI -71.5 ~ -53.2)、50mg/kg半期投与群で-44.2%ポイント(95%CI -53.4 ~ -35.0)であった(すべての比較でP<0.001)でした。

血糖コントロールの悪化
プラセボ投与群10%
10mg/kg四半期投与群12%
25mg/kg四半期投与群7%
50mg/kg四半期投与群20%
50mg/kg半期投与群21%

血糖コントロールの悪化は、プラセボ投与群では10%、10mg/kg四半期投与群では12%、25mg/kg四半期投与群では7%、50mg/kg四半期投与群では20%、50mg/kg半期投与群では21%に認められました。

コメント

アポリポ蛋白C3(APOC3)RNA干渉剤プロザシランの効果について、実臨床での検証は充分ではありません。

さて、混合型高脂血症患者を対象としたこのランダム化比較試験において、プラセボと比較してプロザシランは24週時点でトリグリセリド値を有意に低下させました。一方、血糖コントロールの悪化は、プロザシランの高用量群で悪化がみられました。

臨床上より重要となる心血管疾患の評価は行われていないことから、更なる検証が求められます。また、血糖コントロールを含めた安全性の検証、モニタリング項目の設定についても求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 混合型高脂血症患者を対象としたこのランダム化比較試験において、プラセボと比較してプロザシランは24週時点でトリグリセリド値を有意に低下させた。臨床上より重要な転帰への効果検証が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:混合型高脂血症患者では、トリグリセリドに富むリポ蛋白中の残存コレステロールに起因する非高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の上昇により、アテローム性動脈硬化性心血管系疾患のリスクがある。トリグリセリドリッチリポ蛋白の代謝とクリアランスは、アポリポ蛋白C3(APOC3)がリポ蛋白リパーゼを阻害することによって制御される。

方法:我々は、混合型高脂血症患者(すなわち、トリグリセリド値が150~499mg/dL、低比重リポ蛋白[LDL]コレステロール値が70mg/dL以上、または非HDLコレステロール値が100mg/dL以上)を対象に、肝細胞を標的としたAPOC3低分子干渉RNAであるプロザシランの安全性と有効性を評価する48週間の第2b相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。参加者は4つのコホートのそれぞれにおいて、Plozasiran(プロザシラン)投与群とプラセボ投与群に3:1の割合で割り付けられた。最初の3つのコホートでは、参加者は1日目と12週目にプロザシラン(10mg、25mg、50mg)またはプラセボの皮下注射を受けた(四半期ごとの投与)。第4のコホートでは、参加者は1日目と24週目に50mgのプロザシランまたはプラセボを投与された(半年ごとの投与)。プラセボを投与された参加者のデータはプールされた。
主要エンドポイントは24週目の空腹時トリグリセリド値の変化率であった。

結果:合計353例の参加者がランダム割付けを受けた。24週目において、プロザシランにより空腹時トリグリセリド値の有意な低下が観察され、プラセボと比較したベースラインからの変化率の最小二乗平均は10mg/kg四半期用量投与群で-49.8%ポイント(95%信頼区間[CI] -59.0 ~ -40.6)、25mg/kg四半期投与群で-56.0%ポイント(95%CI -65.1 ~ -46.8)、50mg/kg四半期投与群で-62.4%ポイント(95%CI -71.5 ~ -53.2)、50mg/kg半期投与群で-44.2%ポイント(95%CI -53.4 ~ -35.0)であった(すべての比較でP<0.001)だった。血糖コントロールの悪化は、プラセボ投与群では10%、10mg/kg四半期投与群では12%、25mg/kg四半期投与群では7%、50mg/kg四半期投与群では20%、50mg/kg半期投与群では21%に認められた。

結論:混合型高脂血症患者を対象としたこのランダム化比較試験において、プラセボと比較してプロザシランは24週時点でトリグリセリド値を有意に低下させた。臨床転帰試験が正当化される。

資金提供:Arrowhead Pharmaceuticals社

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT04998201

引用文献

Plozasiran, an RNA Interference Agent Targeting APOC3, for Mixed Hyperlipidemia
Christie M Ballantyne et al. PMID: 38804517 DOI: 10.1056/NEJMoa2404143
N Engl J Med. 2024 May 28. doi: 10.1056/NEJMoa2404143. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38804517/

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