変形性膝関節症に対するクリルオイルの効果はどのくらい?(DB-RCT; JAMA. 2024)

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クリルオイル(オキアミ油)の効果はどのくらいなのか?

変形性膝関節症は障害をもたらしますが、有効な治療法はほとんどありません。クリルオイル(オキアミ油)のサプリメントは膝の痛みを改善することが予備的に示唆しましたが、変形性膝関節症に対する効果は不明です。

そこで今回は、著しい膝関節痛と滲出液-滑膜炎を有する変形性膝関節症患者において、膝関節痛に対するオキアミ油補給の有効性をプラセボと比較して評価することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は、オーストラリア5都市における多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験でした。臨床的変形性膝関節症、著明な膝関節痛、MRIで滲出液-滑膜炎を有する参加者が2016年12月から2019年6月まで登録され、最終フォローアップは2020年2月7日に行われました。

試験参加者はオキアミ油2g/日(n=130)またはマッチングプラセボ(n=132)にランダムに割り付けられ、24週間投与されました。

本試験の主要アウトカムは、24週間にわたる視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale, VAS;範囲 0~100;0は最も痛みが少ないことを示す;臨床的に重要な最小改善度=15)による膝関節痛の変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された262人の参加者(平均年齢 61.6[SD 9.6]歳、女性53%)のうち、222人(85%)が試験を完了しました。

オキアミ油プラセボ群間平均差
(95%CI)
膝関節痛-19.9-20.2群間平均差 -0.3
-6.9~6.4

オキアミ油はプラセボと比較して膝関節痛を改善しませんでした(24週間のVASスコアの平均変化 -19.9[オキアミ油] vs. -20.2[プラセボ];群間平均差 -0.3、95%CI -6.9~6.4)。

1つ以上の有害事象が報告されたのはオキアミ油群で51%(67/130例)、プラセボ群で54%(71/132例)でした。最も多かった有害事象は筋骨格系および結合組織障害で、オキアミ油群で32回、プラセボ群で42回発生し、膝痛(オキアミ油群:n=10、プラセボ群:n=9)、下肢痛(オキアミ油群:n=1、プラセボ群:n=5)、股関節痛(オキアミ油群:n=3、プラセボ群:n=2)が含まれました。

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クリルオイル(オキアミ油)とは、海中に生息するプランクトンの一種である南極オキアミから得られるオイルであり、オメガ3系脂肪酸、リン脂質、アスタキサンチン、EPA、DHA、ホスファチジルコリンなどを含んでいます。生活習慣病や認知機能低下、月経前症候群(PMS)、炎症性疾患などの改善に有効である可能性が示唆されていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、MRIで滲出液-滑膜炎を認め著しい膝関節痛を有する変形性膝関節症患者において、1日2g/日のオキアミ油の補給は、プラセボと比較して24週間にわたって膝関節痛を改善しませんでした。

対象患者は、変形性膝関節症の炎症期であると考えられますが、K-Lスケールによる病期は不明です。またオキアミ油の投与用量2g/日が適切であったかは不明です。とはいえ、現時点においては、変形性膝関節症に対するオキアミ油の効果はないようです。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、MRIで滲出液-滑膜炎を認め著しい膝関節痛を有する変形性膝関節症患者において、2g/日のオキアミ油の補給は、プラセボと比較して24週間にわたって膝関節痛を改善しなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:変形性膝関節症は障害をもたらすが、有効な治療法はほとんどない。クリルオイル(オキアミ油)のサプリメントは膝の痛みを改善することが予備的に示唆されたが、変形性膝関節症に対する効果は不明である。

目的:著しい膝関節痛と滲出液-滑膜炎を有する変形性膝関節症患者において、膝関節痛に対するオキアミ油補給の有効性をプラセボと比較して評価すること。

試験デザイン、設定、参加者:オーストラリア5都市における多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。臨床的変形性膝関節症、著明な膝関節痛、MRIで滲出液-滑膜炎を有する参加者が2016年12月から2019年6月まで登録され、最終フォローアップは2020年2月7日に行われた。

介入:参加者はオキアミ油2g/日(n=130)またはマッチングプラセボ(n=132)にランダムに割り付けられ、24週間投与された。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは、24週間にわたる視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale, VAS;範囲 0~100;0は最も痛みが少ないことを示す;臨床的に重要な最小改善度=15)による膝関節痛の変化であった。

結果:ランダム化された262人の参加者(平均年齢 61.6[SD 9.6]歳、女性53%)のうち、222人(85%)が試験を完了した。オキアミ油はプラセボと比較して膝関節痛を改善しなかった(24週間のVASスコアの平均変化 -19.9[オキアミ油] vs. -20.2[プラセボ];群間平均差 -0.3、95%CI -6.9~6.4)。1つ以上の有害事象が報告されたのはオキアミ油群で51%(67/130例)、プラセボ群で54%(71/132例)であった。最も多かった有害事象は筋骨格系および結合組織障害で、オキアミ油群で32回、プラセボ群で42回発生し、膝痛(オキアミ油群:n=10、プラセボ群:n=9)、下肢痛(オキアミ油群:n=1、プラセボ群:n=5)、股関節痛(オキアミ油群:n=3、プラセボ群:n=2)が含まれた。

結論と関連性:MRIで滲出液-滑膜炎を認め著しい膝関節痛を有する変形性膝関節症患者において、1日2gのオキアミ油の補給は、プラセボと比較して24週間にわたって膝関節痛を改善しなかった。これらの所見は、この集団における膝痛の治療にオキアミ油を支持するものではない。

試験登録:Australian New Zealand Clinical Trials Registry Identifier: ACTRN12616000726459; Universal Trial Number: U1111-1181-7087.

引用文献

Krill Oil for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial
Laura L Laslett et al. PMID: 38776073 PMCID: PMC11112499 (available on 2024-11-22) DOI: 10.1001/jama.2024.6063
JAMA. 2024 May 22:e246063. doi: 10.1001/jama.2024.6063. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38776073/

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