急性虚血性脳卒中患者における降圧治療は早期に行った方が良いのか?(Open-RCT; BMJ. 2023)

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急性虚血性脳卒中患者における早期の降圧治療が患者予後に及ぼす影響は?

急性虚血性脳卒中は局所的な脳虚血に起因して突然生じる神経脱落症状のうち、永続的な脳梗塞を伴います。一般的には、血圧が220/120mmHgを超えていなければ、すぐには高血圧の治療は行われません。動脈が狭窄している場合、脳に充分な血液を送るためには血圧を通常より高くする必要があるためです。しかし、早期の高圧治療が患者予後へどの程度の影響を及ぼすのかについては充分に検証されていません。

そこで今回は、脳卒中発症後24~48時間以内に開始した早期降圧治療と、8日目まで治療を遅らせた場合の機能的依存や死亡の減少効果を比較した多施設共同ランダム化オープンラベル試験の結果をご紹介します。

本試験は、2018年6月13日~2022年7月10日に中国の106病院で実施されました。

症状発現から24~48時間以内の急性虚血性脳卒中患者で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満に上昇した患者4,810例(40歳以上)を登録。

介入:患者はランダム割付け後すぐに降圧治療を受ける群(最初の24時間以内に収縮期血圧を10~20%低下させ、7日以内に平均血圧を140/90mmHg未満にすることを目標とする)と、降圧薬を服用している場合は7日間降圧薬を中止し、8日目に治療を受ける群(平均血圧140/90mmHg未満を達成することを目標とする)にランダムに割り付けられた。

主要アウトカム評価項目:主要アウトカムは90日後の機能的依存(modified Rankin score* of 3〜5)または死亡の組み合わせとした。Intention to treat解析が行われた。

試験結果から明らかになったことは?

2,413例が早期治療群に、2,397例が遅延治療群に割り付けられました。

平均収縮期血圧はランダム化後24時間以内に早期治療群で9.7%(162.9mmHg→146.4mmHg)、遅延治療群で4.9%(162.8mmHg→154.3mmHg)に低下しました(群間差のP<0.001)。

7日目の平均収縮期血圧は早期治療群で139.1mmHg、遅延治療群で150.9mmHgでした(群間差のP<0.001)。さらに、早期治療群では54.6%、遅延治療群では22.4%の患者が7日目の血圧が140/90mmHg未満でした(群間差のP<0.001)。

早期治療群遅延治療群オッズ比
(95%信頼区間)
主要アウトカム
90日後の機能的依存または死亡
289例(12.0%)250例(10.5%)オッズ比 1.18
0.98~1.41

90日目の時点で、早期治療群では289例(12.0%)が死亡または機械的依存を経験したのに対し、遅延治療群では250例(10.5%)でした(オッズ比 1.18(95%信頼区間 0.98~1.41)、P=0.08)。

脳卒中の再発や有害事象については、両群間に有意差はみられませんでした。

コメント

急性虚血性脳卒中患者における早期の降圧治療の有益性については充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満で静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期の降圧治療は90日後の機能的依存や死亡のオッズを低下させませんでした。

一般的には、血圧が220/120mmHgを超えていなければ、早期の高血圧治療は行わないことから、従来通りの治療方法で差し支えないようです。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満で静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期の降圧治療は90日後の機能的依存や死亡のオッズを低下させなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:脳卒中発症後24~48時間以内に開始した早期降圧治療と、8日目まで治療を遅らせた場合の依存症や死亡の減少効果を比較すること。

試験デザイン:多施設共同ランダム化オープンラベル試験

試験設定:2018年6月13日~2022年7月10日に中国の106病院。

試験参加者:症状発現から24~48時間以内の急性虚血性脳卒中患者で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満に上昇した患者4,810例(40歳以上)を登録。

介入:患者はランダム割付け後すぐに降圧治療を受ける群(最初の24時間以内に収縮期血圧を10~20%低下させ、7日以内に平均血圧を140/90mmHg未満にすることを目標とする)と、降圧薬を服用している場合は7日間降圧薬を中止し、8日目に治療を受ける群(平均血圧140/90mmHg未満を達成することを目標とする)にランダムに割り付けられた。

主要アウトカム評価項目:主要アウトカムは90日後の機能的依存(modified Rankin score* of 3〜5)または死亡の組み合わせとした。Intention to treat解析が行われた。

*modified Rankin score:脳血管障害や神経障害の最も一般的な機能的アウトカムの1つ。
0(まったく症候がない):自覚症状と他覚徴候がともにない
1(症候はあっても明らかな障害がない):日常の仕事や活動は可能。自覚症状と他覚徴候はあるものの、 発症以前から行っていた仕事や活動に制限がない
2(軽度の障害):発症以前の活動が全て行えるわけではないものの、 自分の身の回りのことは介助なしに行える。発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるものの、 日常生活は自立している状態
3(中等度の障害):何らかの介助が必要であるが、歩行は介助なしに可能。買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を要すが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助不要
4(中等度から重度の障害):歩行や身体的要求には介助が必要。通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は不要
5(重度の障害):寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りが必要。他者の継続的な介助が必要
6(死亡)

結果:2,413例が早期治療群に、2,397例が遅延治療群に割り付けられた。平均収縮期血圧はランダム化後24時間以内に早期治療群で9.7%(162.9mmHg→146.4mmHg)、遅延治療群で4.9%(162.8mmHg→154.3mmHg)低下した(群間差のP<0.001)。7日目の平均収縮期血圧は早期治療群で139.1mmHg、遅延治療群で150.9mmHgであった(群間差のP<0.001)。さらに、早期治療群では54.6%、遅延治療群では22.4%の患者が7日目の血圧が140/90mmHg未満であった(群間差のP<0.001)。90日目の時点で、早期治療群では289例(12.0%)が死亡または機械依存症を経験したのに対し、遅延治療群では250例(10.5%)であった(オッズ比1.18(95%信頼区間 0.98~1.41)、P=0.08)。脳卒中の再発や有害事象については、両群間に有意差はみられなかった。

結論:軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満で静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期の降圧治療は90日後の機能的依存や死亡のオッズを低下させなかった。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier NCT03479554

引用文献

Early versus delayed antihypertensive treatment in patients with acute ischaemic stroke: multicentre, open label, randomised, controlled trial
Liping Liu et al. PMID: 37813418 PMCID: PMC10561001 DOI: 10.1136/bmj-2023-076448
BMJ. 2023 Oct 9:383:e076448. doi: 10.1136/bmj-2023-076448.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37813418/

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