アロプリノール開始時における抗炎症薬予防投与時の安全性は?
痛風に対してアロプリノールなどの治療薬を開始するが、この際にコルヒチンまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症薬が予防的に投与されることがあります。しかし、抗炎症薬を予防投与した場合の安全性については充分に検討されていません。
そこで今回は、痛不治療としてアロプリノールを開始した際に、予防的に抗炎症薬を投与した場合に関連する有害事象のリスクを明らかにしたコホート研究の結果をご紹介します。
本試験では、英国のClinical Practice Research DatalinkとHospital Episode Statisticsのデータセットをリンクさせ、2つのマッチさせたレトロスペクティブコホート研究が実施されました。
(1)コルヒチンまたは(2)NSAIDの予防的投与とともに痛風治療薬アロプリノールを開始した成人と、予防薬なしでアロプリノール治療を開始した成人とが、年齢、性別、および該当する予防薬の投与傾向で個々にマッチされ比較されました。コルヒチン/NSAIDと特定有害事象との関連についてCox比例ハザードモデルで検討されました。
試験結果から明らかになったことは?
予防薬投与 | 予防薬なし | |
コルヒチンコホート | 13,945例 | 13,945例 |
NSAIDコホート | 25,980例 | 25,980例 |
コルヒチンを処方された13,945例は予防薬なしの13,945例と、NSAIDを処方された25,980例は予防薬なしの25,980例とマッチされました。
コルヒチン | NSAID | |
有害事象発生率 | 下痢(784.4、95%CI 694.0〜886.5) 吐き気(208.1、95%CI 165.4〜261.7) | 狭心症(466.6、95%CI 417.2〜521.8) |
有害事象発生率は、コルヒチンでは下痢(784.4、95%CI 694.0〜886.5)と吐き気(208.1、95%CI 165.4〜261.7)、NSAIDでは狭心症(466.6、95%CI 417.2〜521.8)を除き、200/10,000患者・年未満でした。
下痢(HR 2.22、95%CI 1.83~2.69)、心筋梗塞(MI)(1.55、95%CI 1.10~2.17)、神経障害(4.75、95%CI 1.20~18.76)、筋肉痛(2.64、95%CI 1.45~4.81)、骨髄抑制(3.29、95%CI 1.43~7.58)、あらゆる有害事象(1.91、95%CI 1.65~2.20)はコルヒチンの方が予防なしより多いことが示されましたが、悪心/嘔吐(1.34、95%CI 0.97~1.85)は認められませんでした。
狭心症(1.60、95%CI 1.37〜1.86)、急性腎障害(1.56;95%CI 1.20〜2.03)、心筋梗塞(1.89;95%CI 1.44〜2.48)、消化性潰瘍疾患(1.67、95%CI 1.14〜2.44)およびあらゆる有害事象(1.63、95%CI 1.44〜1.85)は、NSAIDを使用した方が使用しなかった場合よりも多いことが示されました。
コメント
痛風治療において、尿酸生成抑制薬であるアロプリノールやフェブキソスタット、トピロキソスタットが使用されます。また、痛風発作予防として抗炎症薬であるコルヒチンやNSAIDが使用されますが、特にNSAIDは心血管イベントの発生リスクを増加させる可能性が報告されています。したがって、抗炎症薬の予防的投与における安全性評価が求められています。
さて、英国の傾向スコアマッチコホート研究の結果、抗炎症薬の予防投与なしと比較して、コルヒチン予防投与による下痢が顕著に認められました。またコルヒチンについては吐き気、NSAIDについては狭心症の発生リスクの増加が示唆されました。
ただし、本試験はあくまでも有害事象の発生リスクを比較しているに過ぎません。実際の発生リスクの程度については、さらなる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 英国の傾向スコアマッチコホート研究の結果、抗炎症薬の予防投与なしと比較して、コルヒチン予防投与による下痢が顕著に認められた。またコルヒチンについては吐き気、NSAIDについては狭心症の発生リスクの増加も示唆された。
根拠となった試験の抄録
目的:痛風に対してアロプリノールを開始する際のコルヒチンまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の予防投与に関連する有害事象のリスクを明らかにすること。
方法:英国のClinical Practice Research DatalinkとHospital Episode Statisticsのデータセットをリンクさせ、2つのマッチさせたレトロスペクティブコホート研究を実施した。
(1)コルヒチンまたは(2)NSAIDの予防薬とともに痛風治療薬アロプリノールを開始した成人と、予防薬なしで開始した成人とを、年齢、性別、および該当する予防薬の投与傾向で個々にマッチさせて比較した。コルヒチン/NSAIDと特定有害事象との関連をCox比例ハザードモデルで検討した。
結果:コルヒチンを処方された13,945例は予防薬なしの13,945例と、NSAIDを処方された25,980例は予防薬なしの25,980例とマッチさせた。有害事象発生率は、コルヒチンでは下痢(784.4、95%CI 694.0〜886.5)と吐き気(208.1、95%CI 165.4〜261.7)、NSAIDでは狭心症(466.6、95%CI 417.2〜521.8)を除き、200/10,000患者・年未満であった。下痢(HR 2.22、95%CI 1.83~2.69)、心筋梗塞(MI)(1.55、95%CI 1.10~2.17)、神経障害(4.75、95%CI 1.20~18.76)、筋肉痛(2.64、95%CI 1.45~4.81)、骨髄抑制(3.29、95%CI 1.43~7.58)、あらゆる有害事象(1.91、95%CI 1.65~2.20)はコルヒチンの方が予防なしより多かったが、悪心/嘔吐(1.34、95%CI 0.97~1.85)はなかった。狭心症(1.60、95%CI 1.37〜1.86)、急性腎障害(1.56;95%CI 1.20〜2.03)、心筋梗塞(1.89;95%CI 1.44〜2.48)、消化性潰瘍疾患(1.67、95%CI 1.14〜2.44)およびあらゆる有害事象(1.63、95%CI 1.44〜1.85)は、NSAIDを使用した方が使用しなかった場合よりも多かった。
結論:有害事象は、アロプリノールを予防的に投与した場合に多く、特にコルヒチンによる下痢が顕著であった。その他の事象はまれであり、患者および臨床医に安心感を与え、意思決定を共有できるようにした。
キーワード:抗炎症薬、非ステロイド、疫学、痛風
引用文献
Safety of colchicine and NSAID prophylaxis when initiating urate-lowering therapy for gout: propensity score-matched cohort studies in the UK Clinical Practice Research Datalink
Edward Roddy et al. PMID: 37788904 DOI: 10.1136/ard-2023-224154
Ann Rheum Dis. 2023 Oct 3:ard-2023-224154. doi: 10.1136/ard-2023-224154. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37788904/
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