骨髄由来の同種間葉系間質細胞は膝軟骨を再生できるのか?
変形性関節症は慢性、進行性、退行性の疾患であり、治療の選択肢は限られています。これまでは疼痛や炎症を抑える対処療法が中心です。近年、生物学的療法が変形性関節症の治療法として発展しつつあります。
そこで今回は、変形性関節症患者において、同種間葉系間質細胞(MSC)が機能的パラメーターを改善し、軟骨再生を誘導する可能性があるかどうかを評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、グレード2および3の変形性関節症患者146例を、MSC群とプラセボ群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。各群73例の患者が、骨髄由来MSC(BMMSC;2,500万個)またはプラセボの関節内注射を1回受け、その後超音波ガイド下でヒアルロン酸を20mg/2mL投与されました。
本試験の主要エンドポイントはWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC)トータルスコアでした。副次的エンドポイントは、疼痛、こわばり、身体機能のWOMACサブスコア、痛みのvisual analog scaleスコア、T2マッピングと軟骨体積を用いたMRI所見でした。
試験結果から明らかになったことは?
全体として、BMMSC群65例、プラセボ群68例が12ヵ月の追跡を完了しました。
WOMAC総スコアの変化率 BMMSC群 vs. プラセボ群 | |
6ヵ月時 | -23.64%(95%CI -32.88 ~ -14.4) |
12ヵ月時 | -45.60%(95%CI -55.97 ~ -35.23) P<0.001 |
BMMSC群はプラセボ群と比較して、6ヵ月後および12ヵ月後のWOMAC総スコアで有意な改善を示しました(変化率:6ヵ月時 -23.64%、95%CI -32.88 ~ -14.40、12ヵ月時:-45.60%、95%CI -55.97 ~ -35.23、P<0.001;変化率:-44.3%)。
BMMSCは、6ヵ月時と12ヵ月時に、WOMACの疼痛、こわばり、身体機能のサブスコアと視覚的アナログスケールスコアを有意に改善しました(P<0.001)。
T2マッピングでは、12ヵ月後の追跡調査において、BMMSC群では膝の内側大腿脛骨コンパートメントの深部軟骨の悪化はみられませんでしたが、プラセボ群では、軟骨の有意かつ緩やかな悪化がみられました(P<0.001)。軟骨量はBMMSC群で有意な変化は認められませんでした。
有害事象は、注射部位の腫脹と疼痛でしたが、数日で改善がみられました。
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変形性膝関節症は膝関節の擦る減りにより、軟骨下骨が擦れることで痛みや炎症が生じます。治療の基本は体重コントロールや対症療法ですが、軟骨が再生することがないため、生涯にわたり治療が必要となります。より根本的な治療法の開発が望まれていました。
さて、小規模な二重盲検ランダム化比較試験の結果、骨髄由来同種間葉系間質細胞の関節内投与は、プラセボと比較して、持続的な疼痛とこわばりの緩和、身体機能の改善をもたらし、12ヵ月以上にわたって軟骨の質の悪化を予防しました。再現性の検証が求められますが、根治的治療法として期待が持てる結果です。
続報に期待。
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