アルブミン尿進行抑制に対する
2型糖尿病で微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿を有する患者において、アルブミン尿の進行を抑制する治療戦略の確立は重要な課題です。SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は腎機能に対して保護的に作用することが報告されていますが、単独療法と併用療法の比較に関する検証は充分ではありません。
そこで今回は、ダパグリフロジン、エキセナチド、およびダパグリフロジンとエキセナチドの併用によるアルブミン尿低下効果を評価したクロスオーバーランダム化比較試験の結果をご紹介します。
2型糖尿病、推定糸球体濾過量(eGFR)30ml/min/1.73m2以上、尿中アルブミン:クレアチニン比(UACR)3.5mg/mmoL以上、100mg/mmoL以下の参加者が6週間の治療期間を3回終え、この間にダパグリフロジン10mg/日、エキセナチド2mg/週、両剤併用がランダムに投与されました。
本試験の主要アウトカムはUACRの変化率でした。副次的アウトカムは、血圧、HbA1c、体重、細胞外容量、リチウム分画排泄量、MRIによる腎臓の血行動態変数でした。
試験結果から明らかになったことは?
20例の患者を登録し、合計で53回の治療期間を終了しました。
尿中アルブミン:クレアチニン比(UACR)の ベースラインからの平均変化 | |
ダパグリフロジン | -21.9%(95%CI -34.8 ~ -6.4%) |
エキセナチド | -7.7%(95%CI -23.5 ~ 11.2%) |
ダパグリフロジン-エキセナチド | -26.0%(95%CI -38.4 ~ -11.0%) |
UACRのベースラインからの平均変化率は、ダパグリフロジン投与時は-21.9%(95%CI -34.8 ~ -6.4%)、エキセナチド投与時は-7.7%(95%CI -23.5 ~ 11.2%)、ダパグリフロジン-エキセナチド投与時は-26.0%(95%CI -38.4 ~ -11.0%)でした。
アルブミン尿の反応については、異なる治療法間での相関は観察されませんでした。
収縮期血圧、体重およびeGFRは、ダパグリフロジンまたはエキセナチド単独投与と比較して、ダパグリフロジン-エキセナチド投与時に数値的に大きな減少が観察されました。
腎血流および有効腎血漿流量(ERPF)は、いずれの治療レジメンでも有意な変化は認められませんでした。しかし、ダパグリフロジン群およびダパグリフロジン-エキセナチド群では、それぞれ4例および2例を除くすべての患者でERPFの減少がみられました。濾過率は、ダパグリフロジンまたはエキセナチドによる治療では変化せず、ダパグリフロジン-エキセナチド治療では低下しました(-1.6%、95%CI -3.2 ~ -0.01%;P=0.048)。
コメント
2型糖尿病は腎機能低下(eGFRやCrCl)を伴うことが報告されています。腎症は3大合併症であり、この増悪リスクを低減させることが求められます。ナトリウム-グルコース共輸送体 (Sodium glucose co-transporter-2, SGLT-2)阻害薬や、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(Glucagon-like peptide-1 receptor agonist, GLP-1RA)が腎保護作用を示すことが報告されていますが、充分に検討されていません。
さて、クロスオーバーランダム化比較試験の結果、2型糖尿病でアルブミン尿を有する患者において、ダパグリフロジン、エキセナチド、ダパグリフロジン-エキセナチド併用療法はアルブミン尿を減少させ、ダパグリフロジン-エキセナチド併用療法群では減少幅が大きいことが示されました。
ただし、本試験はクロスオーバーランダム化比較試験であり、持越効果の影響を排除できません。また、UACRへの影響はSGLT-2阻害薬による効果が主体であり、GLP-1RAを併用する意義は小さいように受け取れます。
臨床上、より重要なアウトカム(透析導入、腎関連死亡など)への影響についての検証が求められます。
続報に期待。
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