栄養リスクに懸念のある重症患者に対して高用量タンパク質の投与は有効なのか?
国際的な重症患者栄養ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき、様々な量のタンパク質投与を推奨しています。しかし、重症時に高用量タンパク質を投与することの効果については充分に検討されていません。
そこで今回は、重症患者に高用量のタンパク質を提供することで、臨床転帰が改善されるか否かを検証したランダム化比較試験(EFFORT Protein試験)の結果をご紹介します。
この国際的な医師主導の実用的なレジストリベースの単盲検ランダム化試験は、16ヵ国の85の集中治療室(ICU)で実施されました。機械的人工呼吸を受けている栄養的にリスクの高い成人(≧18歳)を登録し、ICU入室後96時間以内に開始し、最長28日間継続する高用量タンパク質(≧2~2g/kg/日)と通常用量タンパク質(≦1~2g/kg/日)の処方についての比較、また、死亡、経口栄養への移行についても検討されました。
本試験の主要評価項目は、ICU入室後60日までの退院生存期間、副次的評価項目は、60日間の死亡でした。
試験結果から明らかになったことは?
2018年1月17日から2021年12月3日の間に、1,329例の患者がランダム化され、1,301例(97.9%)が解析に含まれました(高用量タンパク質群 645例、通常用量群 656例)。
高用量群 | 通常用量群 | ハザード比 HR あるいは相対リスク RR (95%CI) | |
生存退院の累積発生率 | 46.1% (95%CI 42.0%〜50.1%) | 50.2% (46.0%〜54.3%) | HR 0.91 (0.77〜1.07) p=0.27 |
60日死亡率 | 34.6%(642例中222例) | 32.1%(648例中208例) | RR 1.08 (0.92〜1.26) |
ランダム化後60日までに、生存退院の累積発生率は、タンパク質の高用量群で46.1%(95%CI 42.0%〜50.1%)だったのに対し、通常用量群では50.2%(46.0%〜54.3%)でした(ハザード比 0.91、95%CI 0.77〜1.07;p=0.27)。
60日死亡率は、高用量タンパク質群で34.6%(642例中222例)、通常用量タンパク群で32.1%(648例中208例)でした(相対リスク 1.08、95%CI 0.92〜1.26)。
ベースライン時に急性腎障害や臓器不全のスコアが高い患者では、高用量のタンパク質投与が特に有害であるというサブグループ効果が示唆されました。
コメント
栄養リスクの高い、機械的人工呼吸を要する重症患者における高用量タンパク質投与の効果については明らかにされていません。
さて、本試験結果によれば、機械的人工呼吸を要する重症患者に対して高用量タンパク質を投与しても、退院-生還までの時間は改善せず、急性腎障害や臓器不全スコアが高い患者の転帰を悪化させる可能性が示されました。
患者背景にもよりますが、単に高用量のタンパク質を投与しても患者予後は改善しないようです。
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