プロトンポンプ阻害薬の使用と薬剤耐性腸内細菌の獲得リスクとの関連性は?(コホート内症例対照研究; JAMA Netw Open. 2023)

glass blur bubble health 04_消化器系
Photo by Edward Jenner on Pexels.com
この記事は約3分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、薬剤耐性菌のコロニー形成リスクと関連しているが、生活習慣関連因子や疾患の重症度による交絡の可能性があり、この関連性に疑問が持たれている。

目的:PPIの使用と薬剤耐性腸内細菌を獲得するリスクとの関連性を評価し、微生物学的変化をもたらす可能性のある薬剤との相互作用を検討することである。

試験デザイン、設定、参加者:このネステッドケースコントロール研究は、2018年12月31日から2021年1月6日の間にアムステルダム大学医療センターの微生物学研究所データベースから特定された2,239例の入院した成人(18歳以上)患者を対象とした。症例群の患者は、新たに検出された拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)産生またはカルバペネマーゼ産生Enterobacterales(臨床検体により特定)を有していた。リスクセットサンプリングにより、ESBLおよびカルバペネマーゼ産生Enterobacteralesが陰性であった患者を対照群に割り付け、年齢および培養日により症例群の患者と5:1の割合でマッチングさせた。2つ目の検証ケースコントロール研究では、前向きに登録された患者のマッチングペア(1:1比、各群94例)を対象とした。

曝露:培養の30日前(一次曝露)および90日前(二次曝露)のプロトンポンプ阻害薬の使用および臨床データ。

主要アウトカムと指標:条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、PPI用量および時間的リスクウィンドウ(主要アウトカムは30日、副次アウトカムは90日)によるESBL-またはカルバペネマーゼ産生Enterobacterales取得の調整済み発生率比(aIRR)を推定した。

結果:入院患者2,239例(男性 51.1%、平均年齢 60.9[SD 16.7]歳)のうち、374例が症例群(男性 51.6%、平均年齢 61.1[SD 16.5]歳)、1,865例がマッチした対照群(男性 51.0%、平均年齢60.9[SD 16.7]歳)。全体のPPI使用のaIRRは、30日時点で1.48(95%CI 1.15~1.91)であった。感度分析およびプロスペクティブに登録された患者を対象としたペアマッチ試験の分析(aIRR 2.96、95%CI 1.14~7.74) でも同様の結果が得られた。結果はサブグループで一貫しており、陰性対照暴露分析で裏付けられた。微生物学的撹乱剤(microbiome-disturbing agents:細菌叢を変化させることが知られている薬剤である免疫抑制剤など)との関連は認められなかった。下剤と抗生物質は、単独で2倍以上の発症リスク増加と関連していた(抗生物質:aIRR 2.78、95%CI 2.14~3.59]、下剤:aIRR 2.26、95%CI 1.73~2.94)。

結論と関連性:本研究では、交絡を慎重にコントロールし感度分析を行った結果、PPIの使用は成人入院患者におけるESBLまたはカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌 (Enterobacterales)の獲得リスクの上昇と関連していた。これらの知見は、PPIの慎重な使用の必要性を強調するものである。

引用文献

Association of Proton Pump Inhibitor Use With Risk of Acquiring Drug-Resistant Enterobacterales
Roel P J Willems et al. PMID: 36821114 PMCID: PMC9951039 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.0470
JAMA Netw Open. 2023 Feb 1;6(2):e230470. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.0470.
— 読み進める jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2801744

コメント

タイトルとURLをコピーしました