小児の急性咳嗽に対するハチミツの効果はどのくらいですか?(SR&MA; Cochrane Database Syst Rev. 2018)

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小児の急性咳嗽に有効な介入には何があるのか?

咳嗽は保護者の悩みの種であり、外来受診の主な原因です。咳は、小児やその親にとって、生活の質に影響を与え、不安を引き起こし、睡眠に影響を与える可能性があります。いくつかの鎮咳薬が販売されていますが、そのほとんどが中枢作用を有していることから、副作用の懸念が残ります。

ハチミツは鎮咳作用を有していることから、咳の症状を緩和するために使用されてきました。しかし、エビデンスは充分でないことから、情報のアップデートが求められます。

そこで今回は、2014年、2012年、2010年に発表されたコクランレビューのアップデート結果をご紹介します。本レビューの目的は、外来環境における小児の急性咳嗽に対するハチミツの有効性を評価することでした。

検索として、Cochrane Acute Respiratory Infections Group’s Specialised Registerを含むCENTRAL(2018年2号)、MEDLINE(2014年から2018年2月8日まで)、Embase(2014年から2018年2月8日まで)、CINAHL(2014年から2018年2月8日まで)、EBSCO(2014年から2018年2月8日まで)、Web of Science(2014年から2018年2月8日まで)、およびLILACS(2014年から2018年2月8日まで)が対象となりました。また、2018年2月12日にClinicalTrials.govおよび世界保健機関国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO ICTRP)の検索が行われました。2014年のレビューでは、AMEDとCAB Abstractsの検索が行われましたが、今回のアップデートでは、機関アクセス権がないため、これらの検索は行われませんでした。

対象となった試験は、外来環境における12ヵ月~18歳の小児の急性咳嗽に対して、ハチミツ単独、または抗生物質との併用と、無治療、プラセボ、蜂蜜ベースの咳止めシロップ、または他の市販の咳止め薬とを比較したランダム化対照試験でした。

試験結果から明らかになったことは?

899例の小児を対象とした6件のランダム化対照試験が対象となりました(今回の更新で3件の試験、331例が追加)。2件の試験をパフォーマンスバイアスおよび検出バイアスのリスクが高い、3件の試験を消耗(除外)バイアスのリスクが不明、3件の試験をその他のバイアスのリスクが不明として評価が行われました。5件の研究では、咳の症状緩和を測定するために7点リッカートスケール(尺度)を使用し、1件は不明瞭な5点スケールを使用していました。すべての研究で、低スコアはより良い咳の症状緩和を示しました。

7点リッカート尺度を使用して、ハチミツはおそらく無治療またはプラセボよりも咳の頻度を減らすことが示されました(無治療:平均差(MD)-1.05、95%信頼区間(CI)-1.48 ~ -0.62=0%、2研究、小児154例、中程度の確実性のエビデンス、プラセボ:MD -1.62、95%CI -3.02 ~ -0.22=0%、2件の研究、402例の小、中程度の確実性のエビデンス)。

ハチミツの有効性咳嗽頻度の減少
 vs. デキストロメトルファンMD -0.07(95%CI -1.07~0.94
=87%、2件の研究、小児149例
確実性の低いエビデンス
 vs. ジフェンヒドラミンMD -0.57(95%CI -0.90 ~ -0.24
1研究、小児80例
確実性の低いエビデンス

ハチミツは、咳嗽頻度の減少においてデキストロメトルファンと同様の効果を有する可能性が示されました(MD -0.07、95%CI -1.07~0.94=87%、2件の研究、小児149例、確実性の低いエビデンス)。

ハチミツは、咳嗽頻度の減少においてジフェンヒドラミンよりも優れている可能性が示されました(MD -0.57、95%CI -0.90 ~ -0.24、1研究、小児80例、確実性の低いエビデンス)。最大3日間ハチミツを与えることは、おそらくプラセボまたはサルブタモールと比較して咳症状の緩和において効果的であることが示されました。

投与期間が3日を超えても、咳の重症度、煩わしい咳、親や小児の睡眠に対する咳の影響を減らす上で、ハチミツはおそらくサルブタモールやプラセボに比べて利点が得られないことも示されました(中程度の確実性のエビデンス)。

有害事象には、神経質、不眠、多動などがあり、ハチミツで治療した小児7例(9.3%)およびデキストロメトルファンで治療した小児2例(2.7%)が(リスク比(RR) 2.94、95%Cl 0.74~11.71=0%、2研究、小児149例、確実性の低いエビデンス)、ジフェンヒドラミン群の小児3例(7.5%)が傾眠を経験しました(RR 0.14、95%Cl 0.01~2.68、1研究、小児80例、確実性の低いエビデンス)。プラセボと比較した場合、ハチミツ群の小児34例(12%)とプラセボ群の小児13例(11%)が胃腸症状を訴えました(RR 1.91、95%CI 1.12~3.24=0、2研究、小児402例、中程度の確実性のエビデンス)。サルブタモールを投与された小児4例に発疹がみられたのに対し、ハチミツ群では小児1例でした(RR 0.19、95%CI 0.02~1.63、1研究、小児100例、中程度の確実性のエビデンス)。無処置群では有害事象は報告されませんでした。

コメント

ハチミツによる鎮咳作用が報告されていますが、試験数や試験規模が充分でないことから更なる検証が求められています。

さて、本試験結果によれば、ハチミツは、おそらく無処置、ジフェンヒドラミン、プラセボよりも咳の症状を緩和するものの、デキストロメトルファンと比較するとほとんど差がない可能性が示されました。ただし、ハチミツの使用に対する強い根拠は得られませんでした。有害事象の発生は、ハチミツ群と対照群で差がありませんでした。

ただし、組み入れられた試験は1~2件(小児80~149例)であるため、あくまでも傾向が得られた程度にとどめておいた方が良いと考えられます。ハチミツがデキストロメトルファン(中枢性鎮咳作用)やジフェンヒドラミン(後鼻漏による咳嗽リスクの低減)に優れているとは結論付けられません。続報が求められます。

とはいえ、無処置やプラセボよりも優れている可能性が示されていることから、小児の急性咳嗽に対する治療選択肢の一つとしてハチミツを考慮することは妥当であると考えられます。3日を超えるような咳嗽の場合、二次感染による細菌感染症や他のウイルスなどの再感染の可能性があるため、ハチミツによる鎮咳作用を過信しすぎず受診した方が良いと考えられます。

続報に期待。

woman holding a jar while feeding a girl with honey

☑まとめ☑ ハチミツは、おそらく無処置、ジフェンヒドラミン、プラセボよりも咳の症状を緩和するが、デキストロメトルファンと比較するとほとんど差がない可能性がある(ハチミツの使用に対する強い根拠はなかった)。有害事象の発生は、ハチミツ群と対照群で差がなかった。

試験結果から明らかになったことは?

背景:咳は保護者の悩みの種であり、外来受診の主な原因である。咳は、小児やその親にとって、生活の質に影響を与え、不安を引き起こし、睡眠に影響を与える可能性がある。ハチミツは、咳の症状を緩和するために使用されてきた。これは、2014年、2012年、2010年に発表されたレビューのアップデートである。

目的:外来環境における小児の急性咳嗽に対するハチミツの有効性を評価すること。

検索方法:Cochrane Acute Respiratory Infections Group’s Specialised Registerを含むCENTRAL(2018年2号)、MEDLINE(2014年から2018年2月8日まで)、Embase(2014年から2018年2月8日まで)、CINAHL(2014年から2018年2月8日まで)、EBSCO(2014年から2018年2月8日まで)、Web of Science(2014年から2018年2月8日まで)、およびLILACS(2014年から2018年2月8日まで)により検索を行った。また、2018年2月12日にClinicalTrials.govおよび世界保健機関国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO ICTRP)の検索を行った。2014年のレビューでは、AMEDとCAB Abstractsの検索を行ったが、今回のアップデートでは、機関アクセス権がないため、これらの検索は行わなかった。

選択基準:外来環境における12ヵ月~18歳の小児の急性咳嗽に対して、ハチミツ単独、または抗生物質との併用と、無治療、プラセボ、蜂蜜ベースの咳止めシロップ、または他の市販の咳止め薬とを比較したランダム化対照試験

データの収集と分析:コクランで期待されている標準的な方法論に従った。

主な結果:899例の小児を対象とした6件のランダム化対照試験を対象とし、今回の更新で3件の試験(331例)を追加した。2件の試験をパフォーマンスバイアスおよび検出バイアスのリスクが高い、3件の試験を消耗(除外)バイアスのリスクが不明、3件の試験をその他のバイアスのリスクが不明として評価を行った。5件の研究では、咳の症状緩和を測定するために7点リッカートスケール(尺度)を使用し、1件は不明瞭な5点スケールを使用していた。すべての研究で、低スコアはより良い咳の症状緩和を示した。7点リッカート尺度を使用して、ハチミツはおそらく無治療またはプラセボよりも咳の頻度を減らすことが示された(無治療:平均差(MD)-1.05、95%信頼区間(CI)-1.48 ~ -0.62=0%、2研究、小児154例、中程度の確実性のエビデンス、プラセボ:MD -1.62、95%CI -3.02 ~ -0.22=0%、2件の研究、402例の小、中程度の確実性のエビデンス)。ハチミツは、咳の頻度の減少においてデキストロメトルファンと同様の効果を有する可能性がある(MD -0.07、95%CI -1.07~0.94=87%、2件の研究、小児149例、確実性の低いエビデンス)。ハチミツは、咳嗽頻度の減少においてジフェンヒドラミンよりも優れている場合がある(MD -0.57、95%CI -0.90 ~ -0.24、1研究、小児80例、確実性の低いエビデンス)。最大3日間ハチミツを与えることは、おそらくプラセボまたはサルブタモールと比較して咳症状の緩和において効果的である。3日を超えても、咳の重症度、煩わしい咳、親や小児の睡眠に対する咳の影響を減らす上で、ハチミツはおそらくサルブタモールやプラセボに比べて利点がない(中程度の確実性のエビデンス)。有害事象には、神経質、不眠、多動などがあり、ハチミツで治療した小児7例(9.3%)およびデキストロメトルファンで治療した小児2例(2.7%)が経験した(リスク比(RR) 2.94、95%Cl 0.74~11.71=0%、2研究、小児149例、確実性の低いエビデンス)。ジフェンヒドラミン群の小児3例(7.5%)が傾眠を経験した(RR 0.14、95%Cl 0.01~2.68、1研究、小児80例、確実性の低いエビデンス)。プラセボと比較した場合、ハチミツ群の小児34例(12%)とプラセボ群の小児13例(11%)が胃腸症状を訴えた(RR 1.91、95%CI 1.12~3.24=0、2研究、小児402例、中程度の確実性のエビデンス)。サルブタモールを投与された小児4例に発疹がみられたのに対し、ハチミツ群では小児1例であった(RR 0.19、95%CI 0.02~1.63、1研究、小児100例、中程度の確実性のエビデンス)。無処置群では有害事象は報告されなかった。

著者らの結論:ハチミツは、おそらく無処置、ジフェンヒドラミン、プラセボよりも咳の症状を緩和するが、デキストロメトルファンと比較するとほとんど差がない可能性がある。ハチミツはおそらくプラセボやサルブタモールよりも咳の持続時間を短くする。ハチミツの使用に対する強い根拠はなかった。ほとんどの小児が一晩の治療を受けており、このレビューの結果には限界がある。有害事象の発生は、ハチミツ群と対照群で差がなかった。

根拠となった試験の抄録

Honey for acute cough in children
Olabisi Oduwole et al. PMID: 29633783 PMCID: PMC6513626 DOI: 10.1002/14651858.CD007094.pub5
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4(4):CD007094. doi: 10.1002/14651858.CD007094.pub5.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29633783/

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