高齢CKD患者におけるアロプリノール投与開始量と重篤な皮膚反応リスクに関連性はありますか?(人口ベースコホート研究; Am J Kidney Dis. 2022)

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高齢CKD患者ではアロプリノール投与開始量によって重篤な皮膚反応リスクが異なるのか?

アロプリノールは、慢性腎臓病(CKD)患者では、副作用を避けるため、低用量から開始する必要があります。ザイロリック®️の添付文書では、腎機能障害患者において「投与量の減量や投与間隔の延長を考慮すること。本剤やその代謝物の排泄が遅延し高い血中濃度が持続する。特に腎不全患者に副作用が発現した場合は重篤な転帰をたどることがあり、死亡例も報告されている。」と記載されています。また、用量については「血中尿酸値を測定しながら投与し、治療初期1週間は1日100mg投与が望ましい。」とされています。しかし、高齢CKD患者における具体的な用量比較に関する報告は充分ではありません。

そこで今回は、様々な用量のアロプリノールを新規で処方された高齢CKD患者において、重篤な皮膚反応のリスクを調査した人口ベースのコホート研究の結果をご紹介します。本試験では、カナダ・オンタリオ州の66歳以上、eGFR<60mL/min/1.73m2で、アロプリノールを新規に使用した患者が対象でした(2008~2019年)。アロプリノールの曝露用量は100mg/日超あるいは100mg/日以下でした。本試験の主要アウトカムは、アロプリノール開始後180日以内に重篤な皮膚反応を伴う病院受診でした。副次的アウトカムは、全入院と全死亡率でした。

試験結果から明らかになったことは?

47,315例の患者(年齢中央値 76、eGFR 45mL/min/1.73m2)のうち、55%がアロプリノール100mg/日超で治療を開始しました。

アロプリノール
100mg/日超(コホート全体の55%)
アロプリノール
100mg/日以下
重症皮膚反応リスク103/25,802例
(0.40%)
46/25,816例
(0.18%)
加重リスク比(RR)加重RR 2.25
(95%CI 1.50〜3.37
加重リスク差(RD)加重RD 0.22%
(95%CI 0.12%〜0.32%])

アロプリノール100mg/日超では、100mg/日以下と比較して、重症皮膚反応のリスクが増加しました;イベント数(加重)、103/25,802例(0.40%) vs. 46/25,816例(0.18%)、加重RR 2.25 [95%CI 1.50〜3.37]、加重RD 0.22% [95%CI 0.12%〜0.32%] 。

アロプリノールを100mg/日超で開始することは、100mg/日以下の場合と比較して、全入院のリスク上昇と関連していましたが、全死亡とは関連していませんでした。

コメント

アロプリノールは、腎機能低下時に骨髄抑制(血球減少症,再生不良性貧血)、皮膚過敏反応、肝障害などの重篤な副作用を引き起こすことが報告されています。そのため、腎機能に応じた投与用量の設定が求められます。

さて、本試験結果によれば、eGFR<60mL/min/1.73m2の高齢CKD患者において、アロプリノールを100mg/日超で開始する場合、100mg/日以下と比較して、その後180日以内に重度の皮膚反応で病院を受診する可能性が2倍になりました。また、全入院のリスク上昇とも関連していました。一方で、全死亡とは関連していませんでした。ただし本試験は、カナダ・オンタリオ州のコホート研究の結果であることから、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。特に重篤な皮膚な反応は遺伝的素因が大きいことが報告されていることから、交絡因子が残存している可能性があります。

ちなみに日本の診療ガイドライン(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン)では、アロプリノールの投与用量を以下のように設定しています。

腎機能アロプリノール投与量
Ccr >50mL/分100〜300mg/日
30mL/分< Ccr ≦50mL/分100mg/日
Ccr ≦30mL/分50mg/日
血液透析施行例透析終了時に100mg/日
腹膜透析施行例50mg/日
表1 腎機能に応じたアロプリノールの使用量
person holding a hand cream

✅まとめ✅ eGFR<60mL/min/1.73m2の高齢CKD患者において、アロプリノールを100mg/日超で開始する場合、100mg/日以下と比較して、その後180日以内に重度の皮膚反応で病院を受診する可能性が2倍になった。

根拠となった試験の抄録

理由と目的:アロプリノールは、慢性腎臓病(CKD)患者では、副作用を避けるため、低用量から開始する必要がある。我々は、様々な用量のアロプリノールを新たに処方されたCKDの高齢者において、重篤な皮膚反応のリスクを調査した。

試験デザイン:リンクされた医療データベースを用いた人口ベースコホート研究。

試験設定と参加者:カナダ・オンタリオ州の66歳以上、eGFR<60mL/min/1.73m2で、アロプリノールを新規に使用した患者(2008~2019年)。

曝露:アロプリノール>100mg/日の新規処方と、≦100mg/日の処方。

主要アウトカム:主要アウトカムは、アロプリノール開始後180日以内に重篤な皮膚反応を伴う病院受診とした。副次的アウトカムは、全入院と全死亡率。

分析方法:傾向性スコアに治療の逆確率加重を用いることにより、ベースラインの健康状態の指標について曝露群と参照群のバランスを取った。加重リスク比(RR)は修正ポアソン回帰で、加重リスク差(RD)は二項回帰で求めた。

結果:47,315例の患者(年齢中央値 76、eGFR 45mL/min/1.73m2)のうち、55%が100mg/日超のアロプリノールを開始した。アロプリノール100mg/日超では、100mg/日以下と比較して、重症皮膚反応のリスクが増加した:イベント数(加重)、103/25,802例(0.40%) vs. 46/25,816例(0.18%)(加重RR 2.25 [95%CI 1.50〜3.37]; 加重RD 0.22% [95%CI 0.12%〜0.32%] )。アロプリノールを100mg/日超で開始することは、100mg/日以下と比較して、全入院のリスク上昇と関連していたが、全死亡とは関連していなかった。

試験の限界:本研究は、eGFRカテゴリー(すなわち、45〜59、30〜44、および<30 ml/min/1.73m2)間のアロプリノール投与量の関連におけるリスク差を検出するには力不足であった。

結論:アロプリノールを100mg/日超と100mg/日以下で開始した高齢のCKD患者は、その後180日以内に重度の皮膚反応を起こして病院を受診する可能性が2倍になった。

引用文献

Initiation Dose of Allopurinol and the Risk of Severe Cutaneous Reactions in Older Adults With CKD: A Population-Based Cohort Study
Lavanya Bathini et al. PMID: 35644439 DOI: 10.1053/j.ajkd.2022.04.006
Am J Kidney Dis. 2022 May 26;S0272-6386(22)00704-1. doi: 10.1053/j.ajkd.2022.04.006. Online ahead of print.
— 読み進める www.ajkd.org/article/S0272-6386(22)00704-1/fulltext

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