2型糖尿病患者の心血管、腎臓、安全性に対する抗糖尿病薬の第二選択薬使用の効果に差はありますか?(SR&MA; Diabet Med. 2022)

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2型糖尿病患者の心血管系および腎臓アウトカムに対する抗糖尿病薬の有効性は?

2型糖尿病は、血管内皮機能低下および血糖値上昇を伴う内分泌代謝系疾患であり、微小血管や大血管の合併症が引き起こされます。これを防ぐために、血糖の低下作用だけでなく、腎臓や心血管安全性の高い薬剤の開発が望まれています。インスリン及びメトホルミン以外の糖尿病治療薬としては、α-グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)、チアゾリジン系薬(グリタゾン)、スルホニル尿素系薬、DPP-4阻害薬、ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)の7クラスがあり、第二選択薬として位置付けられています。

海外の診療ガイドラインでは、第一選択薬としてメトホルミンが推奨されていますが、腎臓を含め心血管リスクの高い患者においては、SGLT-2iあるいはGLP-1RAの単独あるいはメトホルミンとの併用が推奨されています。これら2剤については、特に多くの臨床試験が実施されていますが、2型糖尿病患者の治療に使用される第二選択薬の心血管系、腎臓系、安全性に関する成績を比較検討したデータは充分ではありません。

そこで今回は、第二選択血糖低下療法とプラセボ、標準治療、または互いに比較したランダム化対照試験を対象にメタ解析を行った試験の結果をご紹介します。

本試験ではMEDLINE、EMBASE、CENTRALを開始時から2021年7月13日まで検索しました。主要アウトカムは心血管系および腎臓のアウトカム、副次的アウトカムは心血管系以外の有害事象でした。リスク比(RR)および対応する信頼区間(CI)または信用区間(CrI)は、ペアワイズおよびネットワークメタ解析内で報告されました。エビデンスの質はGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)基準で評価されました。治療必要数(NNT)および有害性必要数(NNH)は、発生率とRRを用いて5年後の値が算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

血糖低下薬7クラスのいずれかを用いた試験38件が対象となりました。

SGLT2iとGLP-1RAはともに3ポイント主要有害心血管イベント(3P-MACE)のリスクを中程度から高い確実性で減少させました(ネットワーク推定値:SGLT2i [RR 0.90、95%CrI 0.84〜0.96NNT 59]、GLP-1RA [RR 0.8、95%CrI 0.83〜0.93NNT 50] )、心血管死、全死亡、腎複合アウトカムおよび微量アルブミン尿のリスクを中程度から高い確実性で低減することが確認されました。

SGLT2iは、心不全による入院(hHF)、末期腎不全(ESRD)、急性腎障害、血清クレアチニンの倍加、eGFR低下のリスク低減にも高い確実性が示されました。

GLP-1RAは脳卒中リスクの低下(高い確実性)と関連していましたが、グリタゾンの使用はhHFリスクの上昇(非常に低い確実性)と関連していました。ESRDの発症リスクはスルホニル尿素の使用で低くなることが示されました(確信度が低い)。

有害事象については、スルホニル尿素とインスリンは低血糖イベントの増加と関連し(確実性が非常に低い~低い)、GLP-1RAは治療中止に至る胃腸の副作用リスクを増加させました(低い確実性)。DPP-4iは急性膵炎のリスクを増加させました(低い確実性)。SGLT2iは、生殖器感染症、体液減少(高い確実性)、(下肢)切断、ケトアシドーシス(中程度の確実性)のリスク上昇と関連していました。骨折リスクは、グリタゾンの使用で増加しました(中程度の確実性)。

コメント

2型糖尿病治療薬としては、多くの薬剤が販売されていますが、日本の診療ガイドラインでは特定の薬剤クラスの推奨はなされておらず、個々の薬剤の特徴に合わせて使用するよう横並びの推奨となっています。一方、海外の診療ガイドラインではメトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体刺激薬の使用が推奨されています。

さて、本試験結果によれば、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体刺激薬は、2型糖尿病患者においてメトホルミンと併用した場合、異なる心腎系エンドポイントのリスクを低下させることが示されました。特に5年間の3P-MACEに対しては、SGLT2阻害薬でNNT 59、GLP-1受容体刺激薬でNNT 50と有用な値です。

ちなみに過去のメタ解析の結果では、メトホルミンの併用の有無に関わらず、両薬剤共に心血管保護的に作用することが報告されています。

症例数の多い大規模臨床試験の結果の影響が大きいことが予想されますが、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体刺激薬は、心血管、腎臓に対して保護的に作用することは疑いようがなさそうです。治療費用を考慮する必要がありますが、2型糖尿病は心血管、腎臓合併症リスクが高いことから両薬剤の使用は許容される可能性が高いです。

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✅まとめ✅ SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体刺激薬は、2型糖尿病患者においてメトホルミンと併用した場合、異なる心腎系エンドポイントのリスクを低下させることが示された。

根拠となった試験の抄録

目的: 2型糖尿病患者の治療に使用される二次治療薬の心血管系、腎臓系、安全性に関する成績を比較する。

方法:MEDLINE、EMBASE、CENTRALにて、第二選択血糖低下療法とプラセボ、標準治療、または互いに比較したランダム化対照試験を開始時から2021年7月13日まで検索した。
主要アウトカムは心血管系および腎臓のアウトカムとした。副次的アウトカムは心血管系以外の有害事象とした。リスク比(RR)および対応する信頼区間(CI)または信頼区間(CrI)は、ペアワイズおよびネットワークメタ解析内で報告された。エビデンスの質はGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)基準で評価した。治療必要数(NNT)および有害性必要数(NNH)は、発生率とRRを用いて5年後に算出した。PROSPERO(Crd42020168322)。

結果:血糖低下薬7クラスのいずれかを用いた試験38件を対象とした。ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)とグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP1RA)はともに3ポイント主要有害心血管イベント(3P-MACE)のリスクを中程度から高い確実性で減少させた(ネットワーク推定値:SGLT2i [RR 0.90、95%CrI 0.84〜0.96NNT 59]、GLP1RA [RR 0.8、95%CrI 0.83〜0.93NNT 50] )、心血管死、全死亡、腎複合アウトカムおよび微量アルブミン尿のリスクを低減することが確認された。SGLT2iは、心不全による入院(hHF)、ESRD、急性腎障害、血清クレアチニンの倍加、eGFR低下のリスク低減にも高い確実性が示された。GLP1RAは脳卒中リスクの低下(高い確実性)と関連していたが、グリタゾンの使用はhHFリスクの上昇(非常に低い確実性)と関連していた。ESRDの発症リスクはスルホニル尿素の使用で低くなった(確信度が低い)。有害事象については、スルホニル尿素とインスリンは低血糖イベントの増加と関連し(確信度が非常に低い~低い)、GLP1RAは治療中止に至る胃腸の副作用リスクを増加させた(確信度が低い)。DPP-4iは急性膵炎のリスクを増加させた(確信度が低い)。SGLT2iは、生殖器感染症、体積減少(高い確実性)、切断、ケトアシドーシス(中程度の確実性)のリスク上昇と関連していた。骨折のリスクは、グリタゾンの使用で増加した(中程度の確実性)。

結論:SGLT2iおよびGLP1RAは、2型糖尿病患者においてメトホルミンと併用した場合、異なる心腎系エンドポイントのリスクを低下させることが示された。さらに、SGLT2iは、腎臓病進行の代替エンドポイントのリスク低減に有益であることが示された。安全性については、使用可能な薬物療法によって異なる。

キーワード:糖尿病治療薬、心血管治療薬、メタアナリシス、腎臓治療薬、システマティックレビュー、2型糖尿病

引用文献

Comparative effectiveness of cardiovascular, renal and safety outcomes of second-line antidiabetic drugs use in people with type 2 diabetes: A systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials
Ruth Sim et al. PMID: 34962662 DOI: 10.1111/dme.14780
Diabet Med. 2022 Mar;39(3):e14780. doi: 10.1111/dme.14780. Epub 2022 Jan 5.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34962662/

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