SARS-CoV-2の迅速抗原検査における偽陽性の割合はどのくらい?(JAMA. 2022)

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SARS-CoV-2に対する迅速抗原検査で偽陽性が認められる割合は?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染収束の兆しは見えません。ウイルス変異株によっては感染状況を把握(パンデミックマネジメント)するためにPCR検査や抗原検査が用いられています。抗原検査は約10〜30分で結果判定が得られる機種もあることから実臨床における利用が急速に拡大しています。しかし、SARS-CoV-2に対する迅速抗原検査で偽陽性となり(PMID: 34416257PMID: 32871543)、COVID-19のパンデミックマネジメントを阻害する可能性について懸念されています。したがって、迅速抗原検査の偽陽性の発生率について検証する必要があります。

そこで今回は、カナダ全土の無症候性労働者のスクリーニングに使用された迅速抗原検査の大規模サンプルにおける偽陽性結果の発生率を調査した研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

537の職場(事業所)で903,408の迅速抗原検査が実施されました。そのうち、1,322の陽性結果(0.15%)が認められ、そのうち1,103はPCR情報を有していました。約3分の2の検体はロット番号で追跡可能でした。

偽陽性は462件(スクリーニングの0.05%、PCR情報を持つ陽性結果の42%)でした。このうち、2021年9月25日から10月8日の間に異なる企業が運営する675km離れた2つの事業所で278件(60%)の偽陽性が発生しました。この2つの職場の偽陽性結果はすべて、アボット社のパンバイオCOVID-19 Ag迅速検査装置の単一バッチから抽出されたものでした。

コメント

抗原検査が使用される頻度が増えています。これは結果判定までの時間が約10〜30分と短いためです。しかし、偽陽性に関する情報は限られており、臨床現場における検査実施の障壁になっていると考えられます。

さて、本試験によれば、カナダの事業所における迅速抗原検査の偽陽性の発生率は0.05%でした。この値はかなり低いと考えられます。ただし、日本においても同様の結果が得られるのかについては不明です。

検査間の比較について、抗原検査よりも感度・特異度共にPCRの方が優れています。しかし、PCR検査の場合、結果判定まで数時間を要します。そのため抗原検査が用いられるケースが増えています。今回の結果からは偽陽性率はそこまで高くない印象です。

man doing a sample test in the laboratory

✅まとめ✅ カナダの事業所における迅速抗原検査の偽陽性率は0.05%であった。

根拠となった試験の抄録

背景:SARS-CoV-2に対する迅速抗原検査が偽陽性となり、COVID-19のパンデミックマネジメントを阻害する可能性が懸念されている。
本研究では、カナダ全土の無症候性労働者のスクリーニングに使用された迅速抗原検査の大規模サンプルにおける偽陽性結果の発生率を調査した。

方法:SARS-CoV-2の迅速抗原検査は、Creative Destruction Lab Rapid Screening Consortium(CDL RSC)によって、カナダ全土の職場における感染を制御するための追加的な保護層として導入された。無症状の従業員は、週2回のスクリーニングを受けた。職場の参加は任意であった。2021年1月11日から10月13日まで、従業員による検査が行われ、一部の職場は自宅でのスクリーニング、その他の職場はサイトスクリーニングプログラムが実施された。この期間、カナダでは3月〜6月、8月〜10月の2回、デルタ変種による大きな伝播が発生した。スクリーニングの結果は、識別可能な記録識別子、勤務先、検査内容、(オプションで)ロット番号などを含めて記録された。検査結果が陽性であった場合、患者は直ちに24時間以内に完了するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)確認検査に回された。最初のデータ検証は、収集の時点で完了した。6月26日以前に収集されたすべてのデータ、および9月15日以前に報告された推定陽性画面結果とPCR検査結果は、参加機関による監査プロセスを通じて外部で検証された。偽陽性結果は、ロット番号および検査メーカーと照合された。CDL RSC のデータは、迅速抗原スクリーニングを職場に配備する際の運用要件を示すために収集されたものである。すべての参加者は、スクリーニングプログラムに参加すること、およびCDL RSCとそのデータを共有すること(出版を含む)、および公衆衛生当局に同意書を提出した。本研究は、トロント大学研究倫理委員会の承認を得た。

結果:537の職場で903,408の迅速抗原検査が実施され、1,322の陽性結果(0.15%)があり、そのうち1,103はPCR情報を有していた。約3分の2の検体はロット番号で追跡可能であった。
偽陽性は462件(スクリーニングの0.05%、PCR情報を持つ陽性結果の42%)であった。このうち、2021年9月25日から10月8日の間に異なる企業が運営する675km離れた2つの事業場で278件(60%)の偽陽性が発生した。この2つの職場の偽陽性結果はすべて、アボット社のパンバイオCOVID-19 Ag迅速検査装置の単一バッチから抽出されたものであった。

考察:SARS-CoV-2の迅速抗原検査の全スクリーンにおける偽陽性率は非常に低く、他の小規模な研究と一致している(PMID: 34288728)。これらの結果は、迅速抗原検査で偽陽性が多発し、他の環境でのPCR検査能力を圧迫する可能性があるかどうかという議論に役立つ(PMID: 34416257PMID: 32871543)。また、この結果は、潜在的な問題を迅速に特定するための包括的データシステムを持つことの重要性を示している。24時間以内にバッチの問題を特定できれば、作業員は仕事に戻り、問題のあるテストバッチは廃棄され、公衆衛生当局と製造業者に通知することができる。バッチに関する問題とは別に、検査のタイミング(感染段階で早すぎる、または遅すぎる)や自己検査の完了方法における品質上の問題により、偽陽性が出る可能性がある。この研究の限界は、事業所の便宜的サンプルと、PCR確認結果の報告とロット番号の特定が強制されていないことである。さらに、これらの結果はカナダで経験した疫学を反映しており、COVID-19の発生率が異なる他の国には一般化しない可能性がある。

引用文献

False-Positive Results in Rapid Antigen Tests for SARS-CoV-2
Joshua S Gans et al. PMID: 34994775 PMCID: PMC8742218 (available on 2022-07-07) DOI: 10.1001/jama.2021.24355
JAMA. 2022 Jan 7;e2124355. doi: 10.1001/jama.2021.24355. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34994775/

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