ビデオベースの遠隔健康教育による運動および減量プログラムとオンライン教育による膝関節症のアウトカムの比較(Open-RCT; Ann Intern Med. 2021)

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変形性膝関節症における非薬物療法の有効性は?

変形性膝関節症では、膝の関節軟骨の質が低下し、少しずつすり減ることで、歩行時に膝の痛みが出現します。平地での歩行では問題なくとも、階段での昇降で膝に疼痛(突出痛)が出現する、正座時に疼痛(突出痛や自発痛)が認められるなど、初期症状で気がつくことが多いとされています。さらに疾患が増悪していくと、次第にO脚が進んでいき、階段のみではなく平地での歩行にも支障をきたすようになります。変形性膝関節症発症には、多くの要因がありますが、基本的には食事・運動療法による体重減少と筋力増加による膝関節周囲の保護効果が求められます。

これまでの臨床試験において、変形性膝関節症に対する教育、運動、減量などの推奨介入の有効性が報告されていますが、質の高いランダム化比較試験での検証は充分に行われていません。また通常、食事・運動療法ではトレーナが付いて実施されますが、新型コロナウイルス流行下では遠隔での実施が求められます。

そこで今回はオーストラリアにおいて実施された非盲検(オープンラベル)のランダム化比較試験の結果をご紹介します。本試験では、6ヵ月間の遠隔教育による運動プログラム(食事介入あり、食事介入なし)が評価されました。試験対象者は症候性変形性膝関節症で、肥満度が28~40kg/m2の45~80歳の415例でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計379例(91%)の参加者から6ヵ月間の主要アウトカムが、372例(90%)から12ヵ月間の主要アウトカムのデータが得られました。

食事と運動プログラム
(vs. コントロール)
食事と運動プログラム
(vs. 運動プログラム)
運動プログラム
(vs. コントロール)
6ヵ月後の疼痛-1.5
(95%CI -2.1 〜 -0.8
-0.6
(95%CI -1.1 〜 -0.2
-0.8
(95%CI -1.5 〜 -0.2
6ヵ月後の機能-9.8
(95%CI -12.5 〜 -7
-2.8
(95%CI -4.7 〜 -0.8
-7.0
(95%CI -9.7 〜 -4.2

6ヵ月後、疼痛(NRSの変化のグループ間平均差:食事と運動 -1.5 [95%CI -2.1 〜 -0.8]; 運動 -0.8 [95%CI -1.5 〜 -0.2] )と機能(WOMAC変化のグループ間平均差:食事と運動 -9.8 [95%CI -12.5 〜 -7]、運動 -7.0 [95%CI -9.7 〜 -4.2] )はどちらのプログラムもコントロールに対して優れていました。

食事と運動のプログラムは、運動よりも優れていました(疼痛 -0.6 [95%CI -1.1 〜 -0.2]; 機能 -2.8 [95%CI -4.7 〜 -0.8])。12ヵ月後の所見も同様でした。

コメント

過体重や肥満患者の増加に伴い、変形性膝関節症患者が増えています。薬物療法はいずれも対症療法であるため、根本的な問題解決とはなり得ません。基本的には食事療法と運動療法による体重減少と筋力増加が求められます。

さて、本試験結果によれば、コントロール群と比較して、運動プログラム群、食事・運動プログラム群で有意な疼痛と機能の改善が認められました。さらに食事・運動プログラムは、運動プログラムと比較して、より優れていました。ただし本試験は非盲検かつ主観的評価(NRSは患者の自己申告による疼痛評価)であることから、バイアスを排除しきれないと考えられます。

本試験の最大の特徴は、ビデオベースの遠隔健康教育で実施されたことです。通常の食事・運動療法は、トレーナーが付いて実施されますが、新型コロナウイルスが蔓延する昨今、困難であると考えられます。そのため、本試験結果で同様の効果が示されたことは大変貴重であると考えます。

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✅まとめ✅ 遠隔配信された運動および食事プログラムは、肥満または過体重の変形性膝関節症患者の疼痛と機能を改善するかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:変形性膝関節症に対する教育、運動、減量などの推奨介入を行うためのスケーラブルなプログラムが必要である。

目的:6ヵ月間の遠隔教育による運動プログラム(食事介入あり、食事介入なし)を評価する。

試験デザイン:3群並行ランダム化試験(5:5:2)(オーストラリア・ニュージーランド臨床試験登録番号:ACTRN12618000930280)。

試験設定:オーストラリアの民間医療保険加入者

試験参加者:症候性変形性膝関節症で、肥満度が28~40kg/m2の45~80歳の415例。

介入:全ての群に変形性膝関節症の電子情報へのアクセスを提供した(コントロール)。運動プログラムは、運動、自己管理アドバイス、行動カウンセリングのためのビデオ会議による6回の理学療法士によるコンサルテーションと、運動器具およびリソースから構成されていた。食事・運動プログラムには、ケトジェニック超低カロリー食(毎日2食の代替食と低炭水化物食)、健康的な食事への移行、栄養・行動に関する資料のための管理栄養士による相談が6回追加された。

測定方法:主要評価項目は、6ヵ月(主要時点)および12ヵ月における膝関節痛(数値評価尺度[NRS]0~10、高いほど悪化)および身体機能(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index[WOMAC]、尺度0~68、高いほど悪化)の変化とした。
副次的アウトカムは、体重、身体活動、QOL、メンタルヘルス、グローバルチェンジ、満足度、手術を受ける意思、整形外科の予約、膝関節の手術であった。

結果:合計379例(91%)の参加者が6ヵ月間の主要アウトカムを提供し、372例(90%)が12ヵ月間の主要アウトカムを提供した。6ヵ月後、疼痛(NRSの変化のグループ間平均差:食事と運動 -1.5 [95%CI -2.1 〜 -0.8]; 運動 -0.8 [95%CI -1.5 〜 -0.2] )と機能(WOMAC変化のグループ間平均差:食事と運動 -9.8 [95%CI -12.5 〜 -7]、運動 -7.0 [95%CI -9.7 〜 -4.2] )はどちらのプログラムもコントロールに対して優れていた。食事と運動のプログラムは、運動よりも優れていた(疼痛 -0.6 [95%CI -1.1 〜 -0.2]; 機能 -2.8 [95%CI -4.7 〜 -0.8])。12ヵ月後の所見も同様であった。

試験の限界:試験参加者と臨床医は非盲検であった。

結論:遠隔医療によって配信された運動および食事プログラムは、肥満または過体重の変形性膝関節症患者の疼痛と機能を改善した。食事への介入は、運動よりも痛みと機能に対する付加的な利益を適度にもたらした。

主な資金源:Medibank、Medibank Better Health Foundation Research Fund、National Health and Medical Research Council Centre of Research Excellence。

引用文献

Comparing Video-Based, Telehealth-Delivered Exercise and Weight Loss Programs With Online Education on Outcomes of Knee Osteoarthritis : A Randomized Trial
Kim L Bennell et al. PMID: 34843383 DOI: 10.7326/M21-2388
Ann Intern Med. 2021 Nov 30. doi: 10.7326/M21-2388. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34843383/

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