心不全(HFrEF)患者に対する心筋ミオシン活性化剤 オメカムチブ・メカルビルは心血管イベントの発生を抑制する(DB-RCT; GALACTIC-HF試験; N Engl J Med. 2021)

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心筋ミオシン活性化剤 オメカムチブ・メカルビルとは?

駆出率の低下した心不全の特徴は、心拍出量の減少と充満圧の上昇をもたらす収縮機能の低下です。現在までのところ、収縮機能を直接増強する薬剤で予後を改善したものはありません(PMID: 31407860)。心筋ミオシン活性化剤は、心臓のサルコメアの機能を直接増強することで心機能を改善する新しいタイプの薬剤(myotrope)です(PMID: 31072579)。このクラスの最初の薬剤であるOmecamtiv mecarbil(オメカムチブ・メカルビル:PMID: 21415352PMID: 28315072)は、心筋ミオシンに選択的に結合することで心筋収縮力を増強し(PMID: 28775348)、アクチンフィラメントに結合して収縮開始時にパワーストロークを開始できる収縮力発生器(ミオシンヘッド)の数を増やします。初期の臨床試験では、オメカムチブ・メカルビルの短期静脈内投与により心機能が改善されました(PMID: 21856480PMID: 21856481PMID: 27012405)。

駆出率の低下した慢性心不全患者において、オメカムチブ・メカルビルを20週間投与したところ、左室収縮期駆出時間および拍動量が増加し、左室収縮期および拡張期容積が減少し(心臓の逆リモデリングが有効であることが示唆された)、血漿ナトリウム利尿ペプチド値および心拍数が減少しました(PMID: 27914656)。しかし、ハードなイベントである心血管アウトカムへの影響は不明です。

そこで今回は、駆出率が低下した心不全患者にオメカムチブ・メカルビルを投与することにより、心不全イベントおよび心血管死のリスクが低下するかどうかを評価した第3相試験 GALACTIC-HF(Global Approach to Lowering Adverse Cardiac Outcomes through Improving Contractility in Heart Failure)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

オメカムチブ・メカルビル群
(4,120例)
プラセボ群
(4,112例)
主要アウトカム発生数(率)
イベント
1,523(37.0%)
1,607(39.1%)
ハザード比 0.92
(95%CI 0.86~0.99
P=0.03
  心血管死の初発346例(8.4%)371例(9.0%)
  心不全による入院の初発1,107例(26.9%)1,133例(27.6%)
  心不全による緊急外来受診の初発70例(1.7%)103例(2.5%)

中央値21.8ヵ月の間に、主要アウトカムイベントが発生したのは、オメカムチブ・メカルビル群では1,523/4,120例(37.0%)、プラセボ群では1,607/4,112例(39.1%)でした。

☆ハザード比 0.92、95%信頼区間[CI] 0.86~0.99、P=0.03

心血管系疾患が原因で死亡したのは、それぞれ808例(19.6%)、798例(19.4%)でした。
☆ハザード比 1.01、95%CI 0.92~1.11、P=0.86

また全死亡についても、それぞれ1,067(25.9%)、1,065(25.9%)でした。
ハザード比 1.00、95%CI 0.92〜1.09、P=該当なし

Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(カンザスシティ心筋症質問票)の総症状スコアのベースラインからの変化に、両群間で有意な差はありませんでした。

24週目のN-terminal pro-B型ナトリウム利尿ペプチド値の中央値のベースラインからの変化は、オメカムチブ・メカルビル群がプラセボ群に比べて10%低く、心筋トロポニンI値の中央値は4ng/L高いことが明らかとなりました。

心筋虚血イベントおよび心室性不整脈イベントの頻度は両群で同等でした。

試験概要のビデオ(閲覧には無料アカウント登録が必要)

Cardiac Myosin Activation with Omecamtiv Mecarbil in Systolic Heart Failure | NEJM
Quick Take Video Summary from The New England Journal of Medicine — Cardiac Myosin Activation with Omecamtiv Mecarbil in Systolic Heart Failure

コメント

心筋ミオシン活性化剤であるオメカムチブ・メカルビルは、心不全に対する新たな治療戦略として注目されています。

さて、本試験結果によれば、駆出率35%以下の症候性慢性心不全患者において、標準治療へのオメカムチブ・メカルビル追加は、プラセボと比較して、主要アウトカム(初回心不全イベント(心不全による入院または緊急来院)と心血管系疾患による死亡の複合)の発生が有意に低いことが明らかとなりました。ただし、アウトカムの内訳としては、心不全による入院や緊急外来受診の低下が大きく貢献しているようです。一方、心血管死および全死亡の発生については、群間差はほぼありません。追跡期間は、中央値21.8ヵ月ですので、患者背景によってハードアウトカム発生に差がないのは当然かもしれませんが、追試が必要であると考えます。

いずれのアウトカムについても効果推定値の低下は、これまでの薬剤と比較して、小さいと考えられます。どのような患者で利益が最大化するのか検証した方が良いと考えます。

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✅まとめ✅ 駆出率が低下した心不全患者(EF35%以下)において、オメカムチブ・メカルビル投与は、プラセボと比較して、心不全イベントの発生率が低かった

根拠となった試験の抄録

背景:選択的な心筋ミオシン活性化剤であるオメカムチブ・メカルビルは、駆出率の低下した心不全患者の心機能を改善することが示されている。しかし、心血管アウトカムへの影響は不明である。

方法:駆出率35%以下の症候性慢性心不全患者8,256例(入院患者および外来患者)を、標準的な心不全治療に加えて、オメカムチブ・メカルビル(25mg、37.5mg、50mgを1日2回投与)またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。
主要評価項目は、初回心不全イベント(心不全による入院または緊急来院)と心血管系疾患による死亡の複合とした。

結果:中央値21.8ヵ月の間に、主要アウトカムイベントが発生したのは、オメカムチブ・メカルビル群では1,523/4,120例(37.0%)、プラセボ群では1,607/4,112例(39.1%)であった(ハザード比 0.92、95%信頼区間[CI] 0.86~0.99、P=0.03)。心血管系疾患が原因で死亡したのは、それぞれ808例(19.6%)、798例(19.4%)であった(ハザード比 1.01、95%CI 0.92~1.11)。
Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(カンザスシティ心筋症質問票)の総症状スコアのベースラインからの変化に、両群間で有意な差はなかった。
24週目のN-terminal pro-B型ナトリウム利尿ペプチド値の中央値のベースラインからの変化は、オメカムチブ・メカルビル群がプラセボ群に比べて10%低く、心筋トロポニンI値の中央値は4ng/L高かった。心筋虚血イベントおよび心室性不整脈イベントの頻度は両群で同等であった。

結論:駆出率が低下した心不全患者において,オメカムチブ・メカルビルを投与された患者は、プラセボを投与された患者と比較して、心不全イベントと心血管疾患による死亡の複合イベントの発生率が低かった(資金提供:Amgen社など、GALACTIC-HF ClinicalTrials.gov番号:NCT02929329、EudraCT番号:2016-002299-28)。

引用文献

Cardiac Myosin Activation with Omecamtiv Mecarbil in Systolic Heart Failure
John R Teerlink et al. PMID: 33185990 DOI: 10.1056/NEJMoa2025797
N Engl J Med. 2021 Jan 14;384(2):105-116. doi: 10.1056/NEJMoa2025797. Epub 2020 Nov 13.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33185990/

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