COVID-19の蔓延を抑える対策として地域におけるフェイスマスク使用は有効ですか?(SR&MA; Front Med (Lausanne). 2021)

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COVID-19蔓延に対するマスクの効果とは?

ウイルス性感染症の予防において、フェイスマスク(以下、マスク)の有効性は一貫していません。特にインフルエンザ感染症の予防においては、マスク着用と比較して、手洗いやアルコール消毒等の手指衛生の重要性が示されています。

一方、COVID-19については、マスクによる予防効果がある程度認められています。しかし、地域(コミュニティ)レベルでのマスク使用による効果については充分に検証されていません。

今回ご紹介するのは、地域におけるマスク使用がCOVID-19蔓延を抑制するか検証したメタ解析の論文です。

インフルエンザ感染症COVID-19
症状の特徴しばしば高熱
その他、咳嗽など
発熱
その他、咳嗽、味覚・嗅覚障害など
潜伏期間1〜2日1〜14日
感染経路飛沫感染
接触感染
(空気感染については否定的)
飛沫感染
接触感染
(空気感染については否定的だが、
エアロゾル感染については検証不十分)
無症状者(無症候性キャリア)
からの感染
約10%約60%
致死率0.1%以下3〜4%
ワクチンありあり
インフルエンザ感染症とCOVID-19の特徴

研究結果から明らかになったことは?

システマティックレビューによりランダム化比較試験(RCT)3件(4,017例)、比較試験 10件(18,984例)、予測モデル 13件、実験室における実験的研究 9件を含む研究 35件が同定されました。

死亡率

一般的なコンセンサスでは、マスクの有効性にかかわらず、集団におけるマスクのカバー率がほぼ万人に近い場合には、死亡者数が減少することを指摘しています。

呼吸器感染症

クラスターRCTの推定値において、フェイスマスク着用は、マスクなしと比較して、呼吸器感染症の感染率を低下させたが、統計的に有意なレベルではありませんでした(エビデンスの質:非常に低い)。
・クラスターRCT:RR 0.97、95%CI 0.72〜1.31I2=62%、研究3件)
・クラスターRCT:調整済みOR 0.90、95%CI 0.78〜1.05I2=0%、研究2件)

同様の知見は観察研究でも報告されていましたが、統計的に有意な差は認められませんでした(エビデンスの質:非常に低い)。
合計10件の観察研究が同定されたが、そのうち1件の研究が目的のアウトカムに関連して調整されたデータを報告していたため、メタ解析では未調整推定値のみが報告されています。
全体的な効果はすべての横断研究、症例対照研究、前向きコホート研究において非常に不正確でした。
・横断研究:OR 0.90、95%CI 0.74〜1.10I2=74%、研究4件)
・症例対照研究:OR 0.59、95%CI 0.34〜1.03I2=78%、研究4件)
・前向きコホート研究:OR 0.55、95%CI 0.11〜2.75I2=97%、研究2件)

ウイルス性呼吸器感染症の基本再生産数(R0)

※基本再生産数R0:感染者1人から2次感染する感染者数

数学的モデルを展開した研究13件のうち7件がウイルス性呼吸器感染症のR0を調査していました。これらの研究のうち、4つの論文が結果を明示的に報告していました。Brienenらは最悪のシナリオを報告しており、マスクの有効性を30%、人口カバー率を20%とした場合、R0は初期値の2.0から1.9に低下していました。一方、Chenらはベストケースシナリオを報告しており、マスクの有効率が95%の場合、R0は初期値16.90から0.99に低下しましたが、母集団カバー率、時間軸は報告されていませんでした。

マスクのろ過効率のレベルは、使用される材料に応じて不均一でした(外科用マスク:45~97%)。

コメント

集団レベルにおけるマスクの有効性について、質の高い報告はありませんでした。研究数も10件未満とかなり少なく、堅牢なエビデンスは示されませんでした。しかし、現状において、COVID-19蔓延を防ぐための手段の1つとしてのマスク着用は有効であると考えられます。

有意差があるから実施する、有意差がないから実施しないと判断するのは誤りです。効果推定値がどの程度か、どのような患者、集団において介入による効果が最大化するのかについて議論した方が良いのではないかと考えます。

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✅まとめ✅ 系統的レビュー及びメタ解析の結果は、コミュニティにおけるフェイスマスクの使用を支持するものであったが、エビデンスの質は非常に低かった

根拠となった論文の抄録

背景:SARS-CoV-2の感染を防ぐために、地域社会でのフェイスマスク着用の有効性についてのエビデンスが必要である。

方法:システマティックレビューおよびメタアナリシスにより、コミュニティでのフェイスマスク着用の有効性と効果を調査し、マスク着用の効果を予測することを目的とした。
MEDLINE、EMBASE、SCISEARCH、The Cochrane Library、プレプリントのうち、開始から2020年4月22日までのものを言語による制限なく検索した。
エビデンスの確実性については、コクランとGRADEアプローチに基づいて評価した。
本システマティックレビューの主要アウトカムは以下の通り;

  • 死亡率
  • 呼吸器感染率(イベント頻度として測定)
    発熱≧37.8℃で少なくとも1つの呼吸器症状(喉の痛み、咳、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、頭痛)を有するものと定義
    (検査による感染確認の有無にかかわらず)
  • ウイルス性呼吸器感染症のR0

副次的アウトカムはマスクのフィルタリング能力とウイルス負荷低減であった。

結果:検索では、ランダム化比較試験(RCT)3件(4,017例)、比較試験 10件(18,984例)、予測モデル 13件、実験室における実験的研究 9件を含む研究 35件が同定された。
感染率の低下に関し、クラスターRCTの推定値は、フェイスマスク着用 vs. マスクなしに有利であったが、統計的に有意なレベルではなかった(調整済みOR 0.90、95%CI 0.78〜1.05)。
同様の知見は観察研究でも報告されている。
数学的モデルでは、マスクの有効性にかかわらず、集団のマスクカバー率がほぼ万人に近い場合の死亡率の重要な減少を示した。ベストケースシナリオでは、マスク有効率が95%の場合、R0は初期値16.90から0.99まで低下する。マスクのろ過効率のレベルは、使用される材料に応じて不均一であった(外科用マスク:45~97%)。
ある実験室における研究では、マスク着用 vs. マスクなしの有用性について、0.25(95%CI 0.09〜0.67)のウイルス負荷低減が示唆された。

結果の解釈:この系統的レビューおよびメタアナリシスの結果は、コミュニティにおけるフェイスマスクの使用を支持するものである。フェイスマスクの有効性に関する堅牢なランダム化試験は、エビデンスに基づいた政策を伝えるために必要である。PROSPERO登録:CRD42020184963。

引用文献

Face Mask Use in the Community for Reducing the Spread of COVID-19: A Systematic Review
Daniela Coclite et al.
Front Med (Lausanne). 2021 Jan 12;7:594269. doi: 10.3389/fmed.2020.594269. eCollection 2020.
PMID: 33511141 PMCID: PMC7835129 DOI: 10.3389/fmed.2020.594269

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