救急部に尿路感染症で入院した患者におけるESBL産生腸内細菌感染の有病率はどのくらいですか?(米国の前向きコホート研究; Ann Emerg Med. 2020)

aerial photo of highway 未分類
Photo by Tim Gouw on Pexels.com

尿路感染症患者におけるESBL産生腸内細菌感染の全有病率はどのくらいなのか?

背景

尿路感染症の最も一般的な原因である腸内細菌科Enterobacteriaceae(現在はEnterobacterales属)は、一般的に使用されている抗生物質に対するin vitro耐性の割合が増加していることが示されています。しかし、代替治療薬(具体例:セフトリアキソン及び関連するセファロスポリン)に対する耐性が出現しており、拡張スペクトラムβ-ラクタマーゼ(ESBL)細菌産生を介して媒介されています。2017年の米国におけるESBL産生腸内細菌感染症は、入院197,400例及び死亡9,100例が報告されました。

培養検体調査に基づいて、ESBL産生性腸内細菌症の発生率は、北米では一般的に15%未満ですが、アジア、ラテンアメリカ、中東、ヨーロッパでは、25%~45%の範囲で発生率が観察されています。また有病率は低いですが、カルバペネム耐性腸内細菌も出現しています。

本研究結果から明らかになったことは?

米国の前向きコホート研究の結果、確認検査で分離された菌がESBL産生菌であった参加者435例のうち、89例(20.5%、95%信頼区間 16.9~24.5%、部位別 4.6~45.4%)が ESBL産生菌を有していました。ただし、部位別の感染率は、サンプルサイズが小さいため、参考程度に捉えた方が良さそうです。

また尿路感染症患者において、ESBL産生腸内細菌感染の全有病率は17.2%(95%信頼区間 14.0%~20.7%)でした。

ESBL産生性腸内細菌感染症の危険因子は、入院、長期療養、90日以内の抗生物質曝露、1年以内のフルオロキノロン耐性菌またはセフトリアキソン耐性菌の分離とのこと。一方で、他の腸内細菌科感染症と比較して、ESBL感染症はin vitro活性化治療までの時間が長かったようです(17.3時間 vs. 3.5時間)。

ESBL産生腸内細菌感染による尿路感染症では、敗血症を併発する可能性があることから、感受性検査の結果を待たずに抗生物質のエンピリック使用が必要となるケースもありますが、米国において、ESBL産生腸内細菌感染症の発生率が低いのは、こういった背景があるのかもしれません。しかし、2017年おけるESBL産生腸内細菌感染症は、入院197,400例及び死亡9,100例が報告されていますので、ESBL産生腸内細菌の発生を抑えつつ、入院及び死亡例を減少させられる取り組みが必要であると考えます。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ 米国の尿路感染症患者におけるESBL産生腸内細菌感染の全有病率は17.2%(95%信頼区間 14.0%~20.7%)であった

根拠となった論文の抄録

研究の目的:拡張スペクトラムβ-ラクタマーゼ(ESBL)を媒介とするセフトリアキソン耐性Enterobacteriaceae(腸内細菌)は、世界中で一般的に尿路感染症を引き起こすが、北米ではあまり普及していない。現在の米国での発生率は不明である。我々は、尿路感染症で入院した米国の救急部(ED)患者における腸内細菌の抗菌薬耐性率を明らかにする。

方法:我々は、2018年から2019年にかけて、地理的に多様な11の大学付属病院の救急部に尿路感染症で入院した成人をプロスペクティブに登録した。

培養確認済みの感染症患者のうち、ESBL産生性腸内細菌によるものを含む抗菌薬耐性の有病率、耐性リスク因子、(体外活性型)抗生物質の投与までの時間を評価した。

結果:全参加者527例のうち、444例(84%)が腸内細菌を増殖させた培養物を有していた;確認検査で分離された菌がESBL産生菌であった参加者435例のうち、89例(20.5%、95%信頼区間 16.9~24.5%、部位別 4.6~45.4%)が ESBL産生菌を持っていた。

尿路感染症患者におけるESBL産生腸内細菌感染の全有病率は17.2%(95%信頼区間 14.0%~20.7%)であった。

ESBL産生性腸内細菌感染症の危険因子は、入院、長期療養、90日以内の抗生物質曝露、1年以内のフルオロキノロン耐性菌またはセフトリアキソン耐性菌の分離であった。

その他の抗菌薬の腸内細菌感染症耐性率は、フルオロキノロン32.3%、ゲンタマイシン13.7%、アミカシン1.3%、メロペネム0.3%であった。

抗生物質のエンピリック使用ではセフトリアキソンが最も多かった。

ESBL産生性腸内細菌感染症の参加者48例(53.9%)には、敗血症の17例(58.6%)を含め、提示から12時間以内に抗生物質が投与されなかった。他の腸内細菌科感染症と比較して、ESBL感染症はin vitro活性化治療までの時間が長かった(17.3時間 vs. 3.5時間)。

結論:米国の多くの地域で尿路感染症で入院している成人の中で、ESBL産生性腸内細菌科は、しばしば抗生物質で初期治療されない感染症の一般的な原因として浮上している。

引用文献

Emergence of Extended-Spectrum β-Lactamase Urinary Tract Infections Among Hospitalized Emergency Department Patients in the United States
David A Talan et al.
Ann Emerg Med. 2020 Oct 31;S0196-0644(20)30686-7. 
doi: 10.1016/j.annemergmed.2020.08.022. Online ahead of print.
PMID: 33131912 DOI: 10.1016/j.annemergmed.2020.08.022

コメント

タイトルとURLをコピーしました