痛風患者の心血管安全性に対するフェブキソスタットとアロプリノールの効果はどのくらいですか?(PROBE; 欧州 FAST trial; Lancet 2020)

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Long-term cardiovascular safety of febuxostat compared with allopurinol in patients with gout (FAST): a multicentre, prospective, randomised, open-label, non-inferiority trial

et al.

Lancet, Published:November 09, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32234-0

Funding: Menarini, Ipsen, and Teijin Pharma Ltd.

PMID: 33181081

This study is registered with the EU Clinical Trials Register (EudraCT 2011-001883-23) and ISRCTN (ISRCTN72443728) and is now closed.

背景

フェブキソスタットとアロプリノールは、痛風患者の治療に使用される尿酸値低下治療薬である。

フェブキソスタットの心血管系の安全性に関する懸念を受け、欧州医薬品庁は、アロプリノールと比較したフェブキソスタットの心血管系の安全性を評価するための承認後試験(post-licensing study)を推奨した。

試験方法

我々は、英国、デンマーク、スウェーデンの痛風患者を対象に、フェブキソスタットとアロプリノールの非劣性試験をプロスペクティブ、ランダム化、オープンラベル、盲検、エンドポイント、非劣性試験として実施した。

対象患者は60歳以上で、すでにアロプリノールの投与を受けており、少なくとも1つの心血管系危険因子を有していた。

過去6ヵ月間に心筋梗塞や脳卒中を発症した患者、重度のうっ血性心不全や重度の腎障害を有する患者は除外された

リードイン段階では、血清尿酸値0.357mmol/L(6mg/dL未満)を達成するためにアロプリノールの投与量を最適化した後、患者はランダムに割り付けられた(1:1、心血管イベントの既往歴に応じて層別化)。

主要アウトカムは、非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性の急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中、または心血管疾患による死亡を複合したものであった。

Cox 比例ハザードモデル(層別化変数と国別に調整)におけるフェブキソスタット対アロプリノールのハザード比(HR)は、治療中の解析で非劣性(HR 限界値 1.3)と評価された。

所見

・2011年12月20日から2018年1月26日まで、患者 6,128例(平均年齢 71.0歳[SD 6.4]、男性 5,225例[85.3%]、女性 903例[14.7%]、心血管疾患の既往歴あり 2,046例[33.4%])が登録され、アロプリノール(n=3,065)またはフェブキソスタット(n=3,063)の投与を受けるようにランダム割り付けされた。

・試験終了日(2019年12月31日)までに、フェブキソスタット群189例(6.2%)、アロプリノール群169例(5.5%)がすべてのフォローアップから脱落した。

・追跡期間中央値は1,467日(IQR 1,029~2,052)、治療中の追跡期間中央値は1,324日(IQR 870~1,919)であった。

・主要エンドポイントである治療時の発生率について、フェブキソスタット群(172例[100人・年あたり1.72イベント])はアロプリノール群(241例[100人・年あたり2.05イベント])よりも劣っていなかった。

★調整後HR 0.85、95%CI 0.70〜1.03、p<0.0001

・フェブキソスタット群では、3,063例中222例(7.2%)が死亡し、安全性解析セットの3,001例中 1,720例(57.3%)が少なくとも 1 つの重篤な有害事象を有していた(治療に関連した19例[0.6%]の患者でイベントが23件認められた)。アロプリノール群では、3,065例中263例(8.6%)が死亡し、3,050例中1,812例(59.4%)に1件以上の重篤な有害事象が認められた(治療に関連した5例[0.2%]の患者でイベントが5件認められた)。

・ランダム化治療が中止されたのは、フェブキソスタット群で973例(32.4%)、アロプリノール群で503例(16.5%)であった。

解釈

フェブキソスタットは、主要心血管系エンドポイントにおいてアロプリノール療法と比較して劣ることはなく、長期投与ではアロプリノール療法と比較して死亡または重篤な有害事象のリスクが増加することはなかった。

コメント

フェブリクで心血管リスクが増加する?

これまでの報告では、フェブキソスタット(フェブリク®️)使用により、痛風患者における心血管イベントのリスクが増加する可能性が示唆されています。

米国において、フェブキソスタット承認時に、やはり心血管イベントのリスク増加が示され、追試として市販後臨床試験(CARES試験)の実施をFDAが勧告しました。その結果が2018年に示されました。

欧州においても同様に、フェブキソスタット使用による心血管イベント増加についてけねんがあり、欧州医薬品庁(EMA)が製薬メーカーにpost-licensing studyを推奨しました。

ちなみにCARES試験の批判的吟味はこちら↓

【批判的吟味】心血管疾患を伴う痛風患者に対してフェブリク®️とザイロリック®️はどちらがより安全に使用できますか?(DB-RCT; 非劣性; CARES trial; NEJM 2018)

今回の研究から分かったことは?

主要エンドポイントである治療時の発生率について、フェブキソスタット群はアロプリノール群よりも劣っていませんでした。

  • フェブキソスタット群:172例、1.72イベント/100人・年
  • アロプリノール群  :241例、2.05イベント/100人・年
  • ★調整後HR 0.85、95%CI 0.70〜1.03、p<0.0001

主要エンドポイントは非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性の急性冠症候群による入院非致死的脳卒中、または心血管疾患による死亡、これら4つの複合です。本試験はPROBE法ですので、入院においても客観的な指標が用いられています。論文の抄録を読む限りでは、内的妥当性は低くないように考えます。

今回のFAST試験の結果は、過去に報告されたCARES試験の結果とは異なりました。脱落率や患者背景が関係しているのかもしれません。

こちらの論文は批判的吟味する予定です。

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✅まとめ✅

痛風患者におけるフェブキソスタットは、アロプリノールと比較して、心血管イベントのリスク増加と関連していなかった

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コメント

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