関節リウマチに対するTNF阻害薬あるいはcsDMARDsによる漸減療法は、2年間の費用対効果においてどちらが優れていますか?(費用対効果分析; TARA trial; Ann Rheum Dis. 2020)

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Two-year cost effectiveness between two gradual tapering strategies in rheumatoid arthritis: cost-utility analysis of the TARA trial

Elise van Mulligen et al.

Ann Rheum Dis. 2020 Sep 9;annrheumdis-2020-217528. doi: 10.1136/annrheumdis-2020-217528. Online ahead of print.

PMID: 32907801

DOI: 10.1136/annrheumdis-2020-217528

Trial registration number: NTR2754.

Keywords: economics; health care; methotrexate; outcome assessment; rheumatoid arthritis; tumour necrosis factor inhibitors.

目的

本研究の目的は、関節リウマチ患者を対象に、従来の合成疾患修飾抗リウマチ薬(csDMARD)を最初に投与した後、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬を投与した場合と、その逆の場合の2年間の費用対効果を評価することであった。

方法

関節リウマチにおけるTapering strategies in Rheumatoid Arthritis試験の2年間のデータを使用した。

RA患者は、csDMARDとTNF阻害薬の両方を使用しており、疾患が良好にコントロールされ(疾患活動度スコアが2.4以下、関節腫脹数が1以上)、3ヶ月以上の患者を対象に、csDMARDを最初に使用してからTNF阻害薬を漸減させるか、またはその逆に使用するかをランダム選択した。

QALY(Quality-Adjusted Life Year)は、5つの次元からなるEuropean Quality of life questionnaireを用いて算出した。

医療費および生産性コストは、患者の記録とアンケート調査から得られたデータを用いて算出した。

費用対効果の増分比および純金銭的便益の増分比を用いて、両薬剤の漸減戦略における費用対効果を評価した。

結果

・患者94例がTNF阻害薬の漸減を先に開始し、残りの95例がcsDMARDの漸減を先に開始した。

・QALY(SD)はそれぞれ1.64(0.22)と1.65(0.22)であった。

・投薬コストはTNF阻害薬を先に漸減した患者の方が有意に低かったが、生産性の低下が大きいため間接コストが高かった(p=0.10)。したがって、総コスト(SD)は、csDMARDsを先に漸減した場合は38,833ユーロ(39,616ユーロ)、TNF阻害薬を先に漸減した場合は39,442ユーロ(47,271ユーロ)であった(p=0.88)。

・WTPが83,800ユーロ未満の場合、コスト効果が高いのはcsDMARDを先に漸減した群であり、83,800ユーロ以上の場合はTNF阻害薬が先である可能性が高い。

結論

我々の経済評価では、どちらの漸減戦略でもコストは同じようなものであることが示された。WTPにかかわらず、TNF阻害薬とcsDMARDのどちらを先に投与しても、同じように費用対効果が高いことがわかった。

コメント

関節リウマチの治療において、csDMARDsとTNF阻害薬は、どちらも従来から使用されている薬剤です。

しかし、治療コストはTNF阻害薬の方が高く、長期的な治療が必要な関節リウマチにおいては、治療継続が困難となるケースもあります。

関節リウマチをはじめ、薬物療法により症状が安定すれば、長期的安全性も鑑みて、薬剤の用量を徐々に減量し、最低治療量で継続するケースが多いと考えられます。しかし、漸減療法を実施する上での経済的な評価は充分になされていません。

さて、本試験結果によれば、csDMARDとTNF阻害薬の両方を使用しており、3ヶ月以上にわたり疾患が良好にコントロールされている患者(疾患活動度スコアが2.4以下、関節腫脹数が1以上)においては、どちらを先に漸減しても総治療コストに大きな差はないようです。

今回の試験で重要な点は、疾患活動性が3ヶ月以上安定していることであると考えます。実際は患者背景により、さらに細やかなサポートが必要であることが予測されますが、漸減する薬剤はどちらが先でも良いというのは貴重な結果であると考えます。

個人的な見解ですが、TNF阻害薬から漸減したいところです。今後の研究結果にも注目していきたいです。

✅まとめ✅ csDMARDとTNF阻害薬の両方を使用しており、3ヶ月以上にわたり疾患が良好にコントロールされている患者においては、どちらから漸減しても総治療コストに大きな差はないかもしれない

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