Randomized Trial of Amoxicillin for Pneumonia in Pakistan
Fyezah Jehan et al.
N Engl J Med. 2020 Jul 2;383(1):24-34. doi: 10.1056/NEJMoa1911998.
PMID: 32609980
Funded by the Joint Global Health Trials Scheme [of the Department for International Development, Medical Research Council, and Wellcome] and others
ClinicalTrials.gov number, NCT02372461.
背景
世界保健機関(WHO)は、頻呼吸(多呼吸)を伴う肺炎患者に対してアモキシシリンの経口投与を推奨しているが、まだ試験データは、この条件を治療するためにアモキシシリン非使用がアモキシシリン使用に対し、非劣性である可能性があることを示している。
方法
我々は、パキスタンのカラチの低所得コミュニティにあるプライマリーヘルスケアセンターの小児を対象とした二重盲検ランダム化プラセボ対照非劣性試験を実施した。
生後2~59ヶ月で、WHO基準を満たした頻呼吸を伴う非重症肺炎の小児を、WHOの体重バンド(体重 4~10 kg未満の場合は500 mg/12時間毎、体重 10~14 kg 未満の場合は1,000 mg/12時間毎、体重14~20 kg未満の場合は1500 mg/12時間毎)に従って、アモキシシリン 50 mg/mL(アクティブコントロール)懸濁液の3日間コースまたはプラセボ(試験レジメン)の一致量にランダム割り付けした。
主要アウトカムは、アモキシシリンまたはプラセボの3日間コース中の治療失敗であった。
事前に指定された非劣性マージンは1.75%ポイントであった。
結果
・2014年11月9日から2017年11月30日まで、合計4,002例の小児がランダム化を受けた(プラセボ群:1,999例、アモキシシリン群:2,003例)。
・プロトコール毎の解析では、治療失敗の発生率はプラセボ投与群で4.9%(1,927例中95例)、アモキシシリン投与群で2.6%(1,929例中51例)であった。
★群間差 =2.3ポイント、95%信頼区間[CI] 0.9~3.7
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・意図対治療分析でも結果は同様であった。
・発熱と喘鳴の存在は治療の失敗を予測した。1回の治療失敗を防ぐために必要な治療数は44例(95%信頼区間[CI] 31~80例)であった。
・各群で患者1例(0.1%未満)が死亡した。再発はプラセボ群では40例(2.2%)、アモキシシリン群では58例(3.1%)で発生した。
結論
5歳未満の非重症肺炎の小児において、治療失敗の頻度はプラセボ群の方がアモキシシリン群よりも高く、プラセボの非劣性マージンを満たさない差であった。
コメント
肺炎の起因は、細菌よりもウイルスであることが知られています。そのため、肺炎患者に対する抗菌薬使用の是非については意見が分かれているところです。
さて、本試験結果によれば、5歳未満の非重症肺炎患者において、プラセボの使用は、アモキシシリンの使用と比較して、劣性でした(非劣性マージンを達成できなかった)。NNTは44。つまり、5歳未満の肺炎患者に対しては、アモキシシリンを使用した方が良いかもしれない、と言うことです。
ただし、本試験は、パキスタン(カラチ)の低所得コミュニティのプライマリーヘルスケアセンターの小児を対象としていますので、他の地域や国においても同様の結果が得られるのかについては不明です。
少し今更感のある臨床研究ですが、貴重な報告であると考えます。
コメント
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