International Prescribing Patterns and Polypharmacy in Older People With Advanced Chronic Kidney Disease: Results From the European Quality Study
Samantha Hayward et al.
Nephrol Dial Transplant. 2020 Jun 16;gfaa064. doi: 10.1093/ndt/gfaa064. Online ahead of print.
PMID: 32543669
DOI: 10.1093/ndt/gfaa064
Keywords: chronic kidney disease; pharmacoepidemiology; polypharmacy; prescribing; treatment burden.
背景
慢性腎臓病(CKD)患者はポリファーマシーのリスクが高い。しかし、このグループにおける国際的な処方パターンを調査した先行研究はない。
本論文では、European Quality (EQUAL)研究に参加している国の進行性CKD高齢者の処方とポリファーマシーのパターンを調べることを目的としている。
方法
EQUAL研究は、65歳以上の進行性CKD患者を対象とした国際前向きコホート研究である。ベースラインの人口統計学的データ、臨床データ、投薬データが分析され、記述的に報告された。
ポリファーマシーは5種類以上、ハイパーポリファーマシーは10種類以上と定義した。一変量および多変量線形回帰を用いて、国と処方された薬の数との関連を決定した。一変量および多変量ロジスティック回帰が、国とハイパーポリファーマシーとの関連を決定するために使用された。
結果
・ヨーロッパ5カ国からの参加者1,317例のうち、91%がポリファーマシーを経験しており、43%がハイパーポリファーマシーを経験していた。
・循環器系の薬が最も多く処方されていた(平均3.5剤/人)。
・処方には国際差があり、ドイツ{オッズ比(OR)=2.75[95%信頼区間(CI)1.73〜4.37];P<0.001、参考群イギリス}、オランダ{OR =1.91(95%CI 1.32〜2.76);P=0.001]、イタリア{OR =1.57(95%CI 1.15〜2.15);P=0.004]ではハイパーポリファーマシーが有意に高かった。ポーランドの人々は、ハイパーポリファーマシーを最も経験していなかった[OR =0.39(95%CI 0.17-0.87);P=0.021]。
結論
ハイパーポリファーマシーは進行したCKDの高齢者によくみられ、処方される薬の数には国際的に有意な差がある。
薬物学的治療が有益であるだけでなく、害をもたらす可能性も大きいこの高リスク群に対する適切な処方に関するコンセンサスの欠如を示すものかもしれない。
コメント
ついにハイパーポリファーマシーという定義まで出てきましたね。一般的にポリファーマシーは5種類以上、ハイパーポリファーマシーは10種類以上のようです。
さて、本試験結果によれば、ヨーロッパ5ヵ国からの参加者1,317例において、ポリファーマシーが91%、ハイパーポリファーマシーが43%でした。また国際間で処方に差があり、イギリスを参照国とした場合、ドイツのオッズ比(OR)は2.75、オランダはOR 1.91、イタリアはOR 1.57でした。一方、最も低かったのはポーランドのOR 0.39でした。
個人的には、かなり意外な結果でした。ポリファーマシーなどに対する施策としては、英国が最も進んでいると思っていたからです。
また他国や他の地域と比較して、ヨーロッパではCASPやEBM、フォーミュラリーが比較的広く知られていますので、そもそもポリファーマシーの患者数が少ないと考えられます。さらに、患者数は1,317例と、5ヵ国からの患者組み入れとしては、決して多くないサンプルサイズであると考えます。
そもそもですが、薬剤を5種類以上、10種類以上飲んでいるからダメと言うわけではないと考えます。そもそもCKD患者においては、カリウムや血圧、あるいは血糖などに対する対処として薬剤を使用しますので、自然と薬剤数が多くなります。さらに高齢者では並存疾患が、若年者よりも多くなるため、やはり自然と薬剤数が多くなります。
薬剤数がどのくらいなのか、地域によって、どのくらいの患者がポリファーマシーであるのかを数字で捉えるのには、非常に有意義な試験であると考えます。
問題のあるポリファーマシー(PIMsなど)の解消には、やはり個別介入が必要になりますので、これはまた別のテーマであると考えます。
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