Family Identification of Delirium in the Emergency Department in Patients With and Without Dementia: Validity of the Family Confusion Assessment Method (FAM-CAM)
Tanya Mailhot et al.
J Am Geriatr Soc. 2020 Apr 10. doi: 10.1111/jgs.16438. Online ahead of print.
PMID: 32274799
DOI: 10.1111/jgs.16438
Keywords: FAM-CAM; delirium; dementia; emergency department; family caregivers.
目的
認知症の有無にかかわらず、家族評価を行った家族性錯乱評価法(family-rated Family Confusion Assessment Method, FAM-CAM)が、基準となる標準的な錯乱評価法(Confusion Assessment Method, CAM)と比較して、救急外来(emergency department, ED)でのせん妄を識別する能力を検討すること。
試験デザイン
バリデーション研究。
試験設定
都市部の大学病院の救急外来。
試験参加者
70歳以上のED患者とその家族介護者の群(N = 108)。
アウトカム評価
訓練を受けた標準面接官が認知スクリーン、せん妄症状評価、CAMの採点を行った。
介護者はFAM-CAMを自己記入した。
認知症は、Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(高齢者の認知機能低下に関する質問票)と医療記録を用いて評価した。
併存的妥当性(concurrent validity)については、FAM-CAMとCAMのパフォーマンスを比較した。
予測的妥当性(predictive validity)については、FAM-CAM陽性患者と陰性患者の6ヵ月間の臨床転帰(ED受診、入院、死亡率)を年齢、性別、併存疾患、認知状態をコントロールして比較した。
結果
・患者108人のうち、30人(28%)がせん妄でCAM陽性、58人(54%)が認知症を呈した。
・FAM-CAMの特異度は83%、陰性予測値は83%であった。偽陰性(9/13例、69%)のほとんどは、介護者がFAM-CAMでせん妄の不注意基準を確認しなかったことによるものであった。
・認知症患者では、認知症のない患者よりもFAM-CAMによる感度が高かった(61% vs. 43%)。
・調整モデルでは、FAM-CAM陽性患者は陰性患者と比較して、その後6ヵ月間の入院リスクが3倍以上であった。
★オッズ比 =3.4;95%信頼区間 1.2〜9.3
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結論
認知症の有無にかかわらず、FAM-CAMはせん妄の鑑別に重要な資質を示している。EDのシステマティックなスクリーニング戦略の一環としてFAM-CAMを使用し、家族による患者の評価が医療専門家の評価を補完することは有望である。
コメント
医療現場において、せん妄の鑑別は重要です。また、せん妄は救急外来など、患者の状態が思わしくない時に発症・併発しやすいことが知られています。この せん妄の評価として、医療従事者が実施する錯乱評価法(Confusion Assessment Method, CAM)が知られています。
今回の試験デザインであるバリデーション研究とは、基準関連妥当性(criterion related validity)を明らかとするために行います。基準関連妥当性とは、検査や測定により得られた値が、外部基準と高い相関を持つかどうかを指す指標です。例えば、今回のように介護者や患者家族が患者のせん妄を評価する検査であれば、医師による外部評価(客観的評価)が外部基準となります。能力検査の得点と外部基準の相関が低ければ検査の妥当性は低いということになります。そして、基準関連妥当性は、同時期に行われた外部評価や類似の検査との相関を見る併存的妥当性(concurrent validity)と、業績などのように後になって分かるような基準との相関を見る予測的妥当性(predictive validity)に区分されます。つまり今回の場合は、併存的妥当性がFAM-CAMとCAMの比較、予測的妥当性がFAM-CAM陽性患者と陰性患者の6ヵ月間の臨床転帰(ED受診、入院、死亡率)を年齢、性別、併存疾患、認知状態を調整して比較することに当たります。
今回の研究では、家族性錯乱評価法(family-rated Family Confusion Assessment Method, FAM-CAM)という評価方法を用いて、患者のせん妄の程度を患者家族が評価しています。標準的な方法であるCAMと比較していますが、アブストラクトの結果の項にはFAM-CAMの結果のみが記されています。
さて、本試験結果によれば、FAM-CAMの感度は43〜61%(認知症なし〜認知症あり)、特異度は83%、介護者が せん妄の不注意基準を確認しなかった場合は偽陰性が69%だったとのこと。いずれにしても感度は高くなく、特異度は高いため、SnOUT、つまりRule INに向いています。したがって、FAM-CAMで陽性と判定されれば、せん妄の可能性が高い、ということです。ただし、事前オッズや尤度比により確率は異なります。
FAM-CAMの各パラーメータは次の通り;
- 感度 :43%〜61%(認知症なし〜認知症あり)
- 特異度 :83%
- 陽性尤度比:0.83/(1 – 0.43〜0.61)=1.46〜2.13
- 陰性尤度比:(100-0.83)/0.43〜0.61=0.28〜0.40
例えば、事前オッズ(検査前オッズ)が50%の場合、事後オッズは次の通り;
- 陽性の場合:0.50×1.46〜2.13=0.73〜1.07(73%〜107%)
- 陰性の場合:0.50×0.28〜0.40=0.14〜0.20(14%〜20%)
つまり陰性であっても、せん妄を否定できないことになります。陽性であれば事前オッズが50%であっても確率が73%以上に上がりますので、検査をする意義はあります。
実際の医療現場では、看護師や医師が対応しますので、医療従事者が行うCAM(客観的な評価)だけでは、患者の普段の状態を知らないために誤解を含めバイアスがかかり、正確に疾患を確定できない可能性があります。今回のFAM-CAMを併用することで、CAMを補完でき流かもしれません。
ただし、サンプルサイズが小さく、外的妥当性についても低い可能性があります。追試が必要であると考えます。
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