COVID-19患者に対するヒドロキシクロロキンおよびアジスロマイシンの併用療法は有用ですか?(単施設 小規模 後向き研究; Med Mal Infect. 2020)

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No evidence of rapid antiviral clearance or clinical benefit with the combination of hydroxychloroquine and azithromycin in patients with severe COVID-19 infection

J.M. Molina et al.

Med Mal Infect. 2020 Mar 30doi: 10.1016/j.medmal.2020.03.006 [Epub ahead of print]

PMCID: PMC7195369

PMID: 32240719

背景

COVID-19の流行は、これまでに50万人以上の症例と2万5千人以上の死亡者を出しており、100年ぶりに世界的に最悪のパンデミックとなっている。

フランスでは3月27日までに30,000件以上の症例が報告され、2,000人近くが死亡している。

ワクチンができるまでは、有効な治療法を見極める必要があり、世界中で多くの臨床試験が実施されている。

クロロキン類似物質は、エンドソームの酸性化を阻害し、幅広い新興ウイルス(HIV、デング熱、C型肝炎、チクングニヤ、インフルエンザ、エボラ、SARS、MERSウイルス)、そして最近ではCOVID-19に対して、高マイクロモル濃度で非特異的な抗ウイルス活性をin vitroで示すことが報告されている。

フランスでは、マルセイユでの臨床試験の結果を受けて、COVID-19の治療にヒドロキシクロロキンを使用することに大きな関心が寄せられており、フランス保健省は最近、進行中の臨床試験の結果を待って、COVID-19の治療にヒドロキシクロロキンを使用することを許可している。

Gautretらの研究では、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用投与5日後と6日後に、患者6例の鼻咽頭拭い液(swab)から100%のウイルスクリアランスが得られたことが報告されている。このウイルスクリアランス率は、ヒドロキシクロロキン単独では57.1%と低く、ヒドロキシクロロキンを投与しなかった患者では12.5%にとどまった(P<0.001)。

目的・方法

このような迅速かつ完全なウイルスクリアランスは全く予想外であったため、Gautretらが報告した投与レジメンを用いてヒドロキシクロロキン(600mg/d、10日間)とアジスロマイシン(1日目に500mg、2~5日目に250 mg)を投与された当科に入院した11例の連続した患者のウイルス学的および臨床的転帰をプロスペクティブスタディで評価することを目的とした。

結果

・平均年齢58.7歳(範囲 20~77歳)の男性7例、女性4例で、8例は予後不良に関連する重大な併存疾患を有していた(肥満2例、固形がん3例、血液がん2例、HIV感染症1例)。

・治療開始時、10/11例は発熱があり、鼻腔内酸素療法を受けていた。5日以内に1例が死亡し、2例がICUに搬送された。1例では、治療前のQT間隔が405msだったが、併用投与後では460msと470msに延長したため、4日後にヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用を中止した。

・治療開始後3~7日目のヒドロキシクロロキンの平均血中濃度は678 ng/mL(範囲 381~891)であった。

・定性PCR法(Nuclisens Easy Mag®を用いた核酸抽出、Biomerieux、RealStar SARS CoV-2®を用いた増幅、Altona)を用いた患者10例(死亡した患者では実施していない)の鼻咽頭拭い液(swab)の反復検査では、治療開始後5~6日目にも患者8~10例(80%、95%信頼区間 49~94)でSARS-CoV2 RNAが陽性であった。

考察

これらのウイルス学的結果は、Gautretらの報告とは対照的であり、この併用療法の強力な抗ウイルス効果に疑問を投げかけている。さらに、Gautretらの報告では、ヒドロキシクロロキンを投与された26例の患者のうち、死亡1例とICUへの転院3例が報告されており、この併用療法の臨床成績の悪さが強調されている。

さらに、COVID-19患者を対象とした中国における最近の研究では、7日後のウイルス学的クリアランス率は、5日間のヒドロキシクロロキン投与の有無に差はなく、臨床的転帰(入院期間、体温正常化、放射線学的進行)にも差はないことが示されている。これらの結果は、多くのウイルス感染症において、治療または予防のためにクロロキンが評価され、時にウイルス複製に劇症的な影響を及ぼすことがあった場合には、ウイルス学的または臨床的に有益ではなかったことと一致している。

要約

in vitroでCOVID-19に対するクロロキンの抗ウイルス活性が報告されているにもかかわらず、重症COVID-19入院患者の治療にヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンを併用しても、強力な抗ウイルス活性や臨床的有用性を示す証拠は見出されなかった。

ヒドロキシクロロキンを用いたランダム化臨床試験を継続して実施することで、この併用療法の有効性に関する決定的な答えが得られ、その安全性が評価されることになるだろう。

コメント

これまでいくつかの試験で検証されていますが、COVID-19に対するクロロキンあるいはヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用療法は、有益性がなく、QR延長症候群などの副作用が示されています。

さて、本試験結果においても同様に、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用療法の有効性は認められませんでした。11例と小規模ではありますが、これまでに報告された研究結果と矛盾はありません。

そろそろクロロキンあるいはヒドロキシクロロキンによる臨床試験は止めた方がよいのではないでしょうか。一貫して効果がない治療候補薬剤よりも、他の薬剤を検討した方が良いと考えます。

✅まとめ✅ 重症COVID-19入院患者11例に対しヒドロキシクロロキンおよびアジスロマイシンを併用しても、強力な抗ウイルス活性や臨床的有用性を示す証拠は認められなかった

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