ACE阻害薬およびARBの使用はCOVID-19検査陽性にどのくらい影響しますか?(オーバーラップ傾向スコア後向きコホート研究; JAMA Cardiol. 2020)

Association of Use of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Angiotensin II Receptor Blockers With Testing Positive for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19).

Mehta N et al.

JAMA Cardiol. 2020 May 5. doi: 10.1001/jamacardio.2020.1855. [Epub ahead of print]

PMID: 32369097

PMCID: PMC7201375 [Available on 2021-05-05]

DOI: 10.1001/jamacardio.2020.1855

試験の重要性

コロナウイルス病2019(COVID-19)パンデミックの設定におけるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の役割は、熱く議論されている。

いくつかの慢性疾患状態の治療に不可欠なこれらの薬剤を中止する勧告がある一方で、臨床的証拠がない中で、専門学会はそれらの使用を継続することを提唱してきた。

目的

ACEIs/ARBsの使用とCOVID-19陽性の可能性との関連を研究し、COVID-19の臨床的転帰の重症度(例えば、入院、集中治療室入院、機械換気の必要性)と、陽性判定されたACEIs/ARBsを服用している患者サブセットの転帰データを研究すること。

試験デザイン、設定、参加者

オハイオ州とフロリダ州のクリーブランド・クリニック・ヘルスシステムで、オーバーラップ傾向スコアの重み付けを行ったレトロスペクティブ・コホート研究を実施した。2020年3月8日~4月12日の間にCOVID-19の検査を受けた全患者を対象とした。

曝露

COVID-19検査時にACEIまたはARBを服用していた既往歴。

主要評価項目と測定方法

コホート全体における COVID-19 検査の結果、陽性と判定された患者のうち、入院を必要とした患者数、集中治療室への入院、および機械換気を必要とした患者数。

結果

・合計18,472人の患者がCOVID-19の検査を受けた。平均年齢(SD)は49(21)歳、7,384(40%)が男性、12,725(69%)が白人であった。

・COVID-19検査を受けた患者1,8472人のうち、2,285人(12.4%)がACEIまたはARBのいずれかを服用していた。

・COVID-19検査で陽性となった患者は18,472人中1,735人(9.4%)であった。陽性と判定された患者のうち、421例(24.3%)が入院し、161例(9.3%)が集中治療室に入院し、111例(6.4%)が機械的人工呼吸を必要とした。

・オーバーラップ傾向スコアの重み付けにより、ACEIおよび/またはARBの使用とCOVID-19検査陽性との有意な関連は示されなかった。

★オーバーラップ傾向スコア重み付けオッズ比 =0.97;95%CI 0.81〜1.15

結論と関連性

本研究では、ACEIまたはARBの使用とCOVID-19検査陽性との間に関連性は認められなかった。

これらの臨床データは、COVID-19パンデミックの状況下ではACEIまたはARBを中止しないという現在の専門学会ガイドラインを支持するものである。

しかしながら、ACEIおよびARB療法を受けている入院患者の数が多く、COVID-19の重症度の臨床指標との関連性を決定するためには、さらなる研究が必要である。

コメント

以前から議論されていたCOVID-19およびACEI/ARBとの関連性について、後向きに検討した試験。オーバーラップ傾向スコアの重み付けを行っておりますが、あくまでも仮説生成的な結果です。

基本的に傾向スコアは、「マッチングと層別化に使われるべき」と開発者のルービンが述べています。

そもそも傾向スコア(PS)は未調整の交絡因子(unmeasured confounding factors)については無力です。またPSモデルには交絡因子だけでなくアウトカムの予測因子(今回の論文ではCOVID-19陽性率に影響する因子)も含めるべきであることも述べられています。そして、含められた交絡因子により推計されたPSが、両群(今回の論文ではACE阻害薬/ARB使用者と非使用者)を識別できているかを確認するため、ROC(receiver operating characteristic)曲線を描きc統計量を求めます。

今回の研究では、オーバーラップ傾向スコアの重み付けを実施しているため、前述のマッチングの方法とは異なります。

ちなみにc統計量は0.5〜1の実数で、どうやらc統計量が0.6未満と低い場合、PS分析をやる意味は本来ありません(結果は多変量回帰分析とほとんど変わらないとのこと)。一方、c統計量が0.9以上と高過ぎる場合、つまり両群でオーバーラップがほとんどない場合、PSでマッチングできるペア数が極端に少なくなってしまいます。したがって統計的検定力が低下してしまいます。最終的には結果の一般化の可能性が損なわれてしまうと考えます。

さて、今回の研究では、患者の年齢、性別、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、心不全、慢性閉塞性肺疾患の有無を含む多変量ロジスティック回帰モデルから推定されました。またオーバーラップ傾向スコア加重ロジスティック回帰モデルを用いて、投薬状況とCOVID-19陽性の確率、および他の臨床転帰との関連を調査しています。患者の約3分の1で体格指数値が欠落していたため、オーバーラップ傾向スコアの重み付けには含まれていないとのこと。個人的には、体重や免疫疾患、免疫抑制薬の使用など、他にも含めた方が良いと考えます。

試験結果から、オーバーラップ傾向スコア重み付けのオッズ比は0.97(95%CI 0.81〜1.15)と、ACE阻害薬/ARBの使用とCVID-19陽性率に差は認められませんでした。

過去の報告と矛盾しませんが、試験デザインおよび内的妥当性にやや課題があるように考えます。

✅まとめ✅ ACE阻害薬/ARB使用はCOVID-19陽性率に影響しないかもしれない

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