COVID-19 and smoking: A systematic review of the evidence.
Vardavas CI et al.
Tob Induc Dis. 2020 Mar 20;18:20.
doi: 10.18332/tid/119324. eCollection 2020.
PMID: 32206052 PMCID: PMC7083240
DOI: 10.18332/tid/119324
KEYWORDS: COVID-19; coronavirus; smoking; tobacco
背景
COVID-19は、2019年12月に中国湖北省武漢市で発生したコロナウイルスのアウトブレイクであるが、すでに世界的に急速に広がるパンデミックへと発展している。2020年3月18日現在、COVID-19の総症例数は194,909例、死亡者数は7,876例と報告されており、その大半は中国(3,242例)とイタリア(2,505例)で報告されている。
しかし、パンデミックは残念ながらまだ進行中であるため、患者の臨床的特徴や予後因子に関するデータは限られている。広範な証拠は、肺の健康と呼吸器疾患の多数との因果関係にタバコの使用の負の影響を強調しているとして、これまでのところ、喫煙は、おそらく病気の予後悪化に関連付けられていると仮定されている。喫煙はまた、免疫システムと感染症への反応性に有害であり、喫煙者は感染症に脆弱になる。これまでの研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて2倍以上インフルエンザに感染する可能性が高く、症状が重篤であることが示されている。
このようなエビデンスのギャップを考慮して、我々は患者の喫煙状況に関する情報を含むCOVID-19に関する研究の系統的レビューを実施し、疾患の重症度、機械換気の必要性、集中治療室(ICU)への入院の必要性、死亡を含むCOVID-19のアウトカムと喫煙との関連を評価した。
方法
文献検索は、2020年3月17日に2つのデータベース(PubMed、ScienceDirect)を用いて、検索語を以下のようにして行った。
検索語:[‘smoking’ OR ‘tobacco’ OR ‘risk factors’ OR ‘smoker*’] AND [‘COVID-19’ OR ‘COVID 19’ OR ‘novel coronavirus’ OR ‘sars cov-2’ OR ‘sars cov 2’]で検索し、2019年と2020年に発表された研究を含むものとした。
さらなる採択基準は、研究が英語であり、ヒトを対象としていることであった。また、含まれている研究の参考文献リストも検索した。
結果
・合計71件の研究が検索されたが、そのうち66件はフルテキストスクリーニングの結果除外され、5件の研究が含まれた。すべての研究は中国で実施され、4件は武漢で、1件は中国本土の各省にまたがって実施された。
・対象はすべての研究でCOVID-19患者であり、サンプルサイズは41~1,099人であった。研究デザインに関しては、レトロスペクティブ法とプロスペクティブ法が用いられ、5つの研究の期間はすべてCOVID-19パンデミックの最初の2ヵ月間(2019年12月、2020年1月)を対象とした。
・具体的には、研究者Zhouらは、COVID-19に感染した191人の疫学的特徴を研究したが、死亡リスク因子や疾患の臨床転帰についてはより詳細に報告していない。患者191人のうち死亡者は54人(28.3%)で、生存者は137人(71.7%)であった。死亡者のうち9%が喫煙者であったのに対し、生存者では4%であり、COVID-19による死亡率に関しては、生存者と非生存者の喫煙率に統計学的に有意な差はなかった(p=0.21)。
・同様に、研究者Zhangらは、COVID-19患者140人の臨床的特徴を発表した。その結果、重症患者(n=58)では、現在の喫煙者が3.4%、元喫煙者が6.9%であったのに対し、非重症患者(n=82)では、現在の喫煙者が0%、元喫煙者が3.7%であり、ORは2.23(95%CI:0.65-7.63、p=0.2)であった。
・研究者Huangらは、患者41人を対象にCOVID-19の疫学的特徴を調査した。この研究では、ICUへの入院が必要な患者(n=13)のうち、現在喫煙者であった患者は1人もいなかった。対照的に、ICU非入院群の患者3人は現在の喫煙者であり、本研究のサンプル数が少ないにもかかわらず、両群間に統計学的に有意な差はなかった(p=0.31)。
・COVID-19患者1,099人という最大の研究集団では、中国本土の複数の地域から集まった症例であり。研究者Guanらによって提供されたものである。患者の喫煙状況に関する記述的結果が患者1,099人について提供され、そのうち173人が重度の症状を有し、926人が非重度の症状を有していた。その結果、重度の症状を呈する患者では、現喫煙者が16.9%、元喫煙者が5.2%であったのに対し、非重度の患者では,現喫煙者が11.8%、元喫煙者が1.3%であった。さらに、機械換気が必要な患者あるいはICUへの入院が必要な患者、死亡した患者のいずれかのグループでは、現在の喫煙者が25.5%、元喫煙者が7.6%であった。対照的に、これらの有害な転帰を伴わなかった患者群では、現在の喫煙者は11.8%、元喫煙者は1.6%に過ぎなかった。この研究では、疾患転帰の重症度と喫煙状況との関連を評価するための統計解析は行われていなかった。
・最後に、研究者Liuらは、COVID-19患者78人を対象とした集団において、喫煙歴のある患者の割合(27.3%)が改善または安定した群(3.0%)よりも有意に高く、この差はp=0.018レベルで統計学的に有意であったことを明らかにした。多変量ロジスティック回帰分析では、喫煙歴は疾患進行の危険因子であった(OR=14.28;95%CI 1.58-25.00;p=0.018)。
・COVID-19 に感染した患者の喫煙状況に関するデータを報告した研究 5 件を同定した。注目すべきは、疾患の重症度を評価した最大の研究では、ICUサポート、機械的人工呼吸、または死亡した患者では、現在の喫煙者と以前の喫煙者の割合が高く、重症患者では喫煙者の割合が高かったことである。しかし、発表されたデータから、喫煙者はCOVID-19の重篤な症状を持つ可能性が1.4倍(RR=1.4、95%CI 0.98-2.00)、ICUへの入院、機械換気が必要な患者、死亡する可能性が非喫煙者に比べて約2.4倍(RR=2.4、95%CI 1.43-4.04)であったことが計算できる。
結論
利用可能なデータが限られており、上記の結果は疾患の進行に影響を与える可能性のある他の因子を調整していないにもかかわらず、エビデンスの重みが増すにつれてさらなる研究が必要であるが、喫煙はCOVID-19の進行と有害な転帰と関連している可能性が最も高いと考えられる。
コメント
以前に紹介した研究とよく似ています。当たり前と言われれば当たり前なのですが、組み入れられた研究や評価されたアウトカムによって結果が異なっていそうですね。
今回の研究の特徴は、アウトカム毎に統合していない点ですね。採択基準を満たした研究数が5件であり、異質性も高いと考えられますので、個々の研究結果を説明するにとどめている点が非常に良いと思います。
さて、研究結果としては、サンプル数に関わらず喫煙(現喫煙および喫煙歴)の影響とCOVID-19進行や重症化との関連性が示されています。やはり喫煙の益は少なそうですね。これを機会に禁煙してみるのも良いかと思います。というのも2019年から世界規模で流行している新型コロナウイルス感染症は、個人的な意見ですが終息しないと考えられます。おそらく季節性インフルエンザのような感染症になる可能性が高いです。となると長期的なリスク因子は排除しておいた方が賢明であると考えられます。ただし、そのリスクを考慮しても喫煙したい人もいると思います。この部分は個人の自由であると考えます。
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