ピロリ菌除菌後の胃食道逆流症は本当に存在するのか?
ある日、ピロリ菌除菌の患者さんが薬局を訪れた。処方内容は以下の通り;
- 背景
- 目的
- 結果
- 論文1:Background factors of reflux esophagitis and non-erosive reflux disease: a cross-sectional study of 10,837 subjects in Japan.
- 論文2:Effect of Helicobacter pylori treatment on gastroesophageal reflux disease (GERD): meta-analysis of randomized controlled trials.
- 論文3:Effects of Helicobacter pylori eradication on gastroesophageal reflux disease.
- 論文4:Is there an increased risk of GERD after Helicobacter pylori eradication?: a meta-analysis.
- コメント
- まとめ
背景
Rp 1) ボノサップ®️パック — 1日1シート 朝夕食後 7日分
Rp 2) タケプロン®️OD錠15mg — 1日1錠 夕食後 21日分 ボノサップ服用終了後より開始
ピロリ菌の一次除菌および除菌後の胃食道逆流症(GastroEsophageal Reflux Disease: GERD)予防の処方であると考えられる。ここでピロリ菌除菌後のGERDはどのくらい発生するのだろうか?という疑問がわいた。周りにきいてみると「10%ぐらいだったような」という、やや曖昧な回答。 そこで、目的
①どのくらいGERDが発生するのか?
②ピロリ菌除菌でGERD症状が緩和できるのか?
これら2点について明らかにするために論文検索を行った。
下記の論文4報がみつかった。試験結果を抜粋。結果
論文1:Background factors of reflux esophagitis and non-erosive reflux disease: a cross-sectional study of 10,837 subjects in Japan.
Saad AM et al. PLoS One. 2013 Jul 26;8(7):e69891. PMID: 23922844論文2:Effect of Helicobacter pylori treatment on gastroesophageal reflux disease (GERD): meta-analysis of randomized controlled trials.
Saad AM et al. Scand J Gastroenterol. 2012 Feb;47(2):129-35. PMID: 22229305論文3:Effects of Helicobacter pylori eradication on gastroesophageal reflux disease.
Qian B et al. Helicobacter. 2011 Aug;16(4):255-65. PMID: 21762264論文4:Is there an increased risk of GERD after Helicobacter pylori eradication?: a meta-analysis.
Yaghoobi M et al. Am J Gastroenterol. 2010 May;105(5):1007-13; quiz 1006, 1014. PMID: 20087334・日本人10,837例を対象にした研究では、逆流性食道炎は733人(6.8%)、NERDは1,722人(15.9%)であり、GERDとしては2,455人と、全体の22.7%を占めていた。割と多いなという印象を受けた。もしかしたら海外より罹患率は高いのかもしれない。 ・ピロリ菌除菌後のGERDについては、非除菌群と比較して差は認められなかったという報告がやや多かった。そのため海外、特にアメリカでは、ピロリ菌除菌後のGERD発生リスク上昇はない、あるいはGERD症状があったとしても一時的なものであり胃酸分泌抑制薬を使用するほどではない、と考えられているようです(聞いた話ですのでエビデンスなしです。エビデンスお持ちの方はご教示願います!)。 ・今回の論文について研究数及び症例数が少ないこと、メタ分析において統合された結果の異質性がやや高いことについては研究の限界として覚えておきたいところ。 ・コホート研究4件の統合結果において、ピロリ菌除菌によってGERD発生リスク(オッズ比)が2倍程度に上がっていたことが非常に興味深かった。 ・またピロリ菌除菌は、症候性GERDや逆流性食道炎のリスク増加に寄与していなかったが、GERD症状を優位に減少させた。さらに日本人においては、単施設での検討だがピロリ菌除菌により、逆流性食道炎の症状緩和が示唆された。 ・内視鏡的に潰瘍や炎症症状を呈している患者については、ピロリ菌除菌することで益があるかもしれない。しかしピロリ菌除菌後に、胃酸分泌抑を抑制するプロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor: PPI)がどの程度必要なのかについては明らかにできなかった。 ・除菌後からPPIを飲むことについては、一様に一般化するのではなく、患者毎に検討してみるのはいかがでしょうか。今回の症例については、以前から胃酸がこみ上げたり胸焼け症状があったので、薬を使っで良いのかな、という印象。コメント
まとめ
①どのくらいGERDが発生するのか?
→日本人を対象とした研究では、22.7%(REは6.8%、NERDは15.9%)。ただしピロリ菌除菌によるリスク増加は示されなかった。
→ピロリ菌除菌によるGERD発生頻度は変わらないという報告と増えるという報告の両方あったが、どちらもバラツキが大きかった。
②ピロリ菌除菌でGERD症状が緩和できるのか?
→ピロリ菌除菌により、GERD症状が緩和したという報告があった。日本人においては、ピロリ菌除菌により逆流性食道炎の発生リスク低下が示唆された。
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コメント
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