エリスロポエチン製剤(ESA)先行バイオ vs. バイオシミラー

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バイオシミラーは先行バイオと差があるのか?

バイオ医薬品は医療への貢献度が大きい反面、高価であることが課題です。医療費削減、患者負担の軽減等のため、より安価で同等の有効性が得られるバイオシミラーの開発が望まれています。

しかし、バイオシミラーの有効成分は分子量が大きく、かつ構造が複雑なため、低分子のジェネリック医薬品と比較して、同一性を示すことは困難です。そのため、先行バイオ医薬品と品質、安全性、有効性において同等性/同質性を示すことが必要です。

高分子のバイオ医薬品では、糖鎖の修飾の違いにより、有効性や安全性に差が出る可能性があります。そのため、バイオ医薬品の承認においては、ジェネリック医薬品と比較して、求められる試験が多くなります。

CKD患者8,161例、がん患者5,309例における先行バイオ vs. バイオシミラー

集団ベースの観察コホート研究の結果をご紹介します。

本研究ではCKD患者8,161例、がん患者(本邦では適応外使用)5,309例を対象に、バイオシミラー、エポエチンα先行バイオ、その他の先行バイオを比較しています。

その結果、全死亡、輸血、主要心血管イベントを含む複合アウトカムのイベント発生率に差は認められませんでした

一方、がん領域において、バイオシミラーとエポエチンα先行バイオの全死亡率の比較では、リスク推定値は統計的有意差の範囲内でしたが、バイオシミラーの保護効果が強調される結果となりました(修正HR=0.82、0.70~0.97)。しかし死因の割合について、腫瘍そのものによる死因の方が高いことが明らかとなりました。このため未知の交絡因子を含んでいる可能性が高いです。したがって、現時点においては、バイオシミラーとエポエチンα先行バイオ間で差があるとは言えません。

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✅まとめ✅ 有効性・安全性アウトカムにおいて、ESAバイオシミラーと先行バイオの間に差はないことが示唆された

根拠となった論文の抄録

目的:赤血球造血刺激薬(ESA)の先行バイオとエポエチンαバイオシミラーとの間で、臨床現場からESAナイーブな患者に投与した場合のベネフィット/リスクプロファイルを評価すること。

試験デザイン:集団ベースの観察コホート研究

試験設定:2012年から2014年の間にESAの電子治療計画(ETP)登録から検索された慢性腎臓病(CKD)又はがんを有するイタリア・ラツィオ州の全住民

試験参加者:全体で13,470例の偶発的なESA利用者が解析の対象となり、それぞれCKDでは8,161例、がんでは5,309例が解析対象となった。

介入:ATC B03XAで同定されたESAは、3つのグループに分類された。
   (1)バイオシミラー
   (2)エポエチンα先行バイオ
   (3)その他の先行バイオ
患者は、ETPの有効日から6ヶ月の追跡期間終了までESAに曝露された。

アウトカム指標:有効性(全死亡および輸血)と安全性(主要心血管イベント、血液異形成)。全死亡、輸血、主要心血管イベントを含む複合転帰を事前に定義した。いずれかの転帰のHRはCox回帰により推定した。

結果:CKDにおける全死亡、輸血、主要心血管イベント、血液異形成のリスク推定値については、バイオシミラーを使用している患者とすべての患者の間で差は認められなかった。複合アウトカムでは、これらの結果が確認された(バイオシミラーとエポエチンα投与群:調整後HR=1.02、95%CI 0.78~1.33、バイオシミラーとその他の先行バイオ:調整後HR=1.09、95%CI 0.85~1.41)。腫瘍学的な設定では、バイオシミラーとすべての先行バイオの間で同等のリスク推定値が観察された。

結論:どちらの設定においても、関連する有効性と安全性のアウトカムに関して、バイオシミラーと先行バイオの間に差はないことが示唆された。本研究は、医療サービスの将来の医薬品政策の決定に貢献すると同時に、バイオシミラーの承認経路についての安心感を提供するものである。腫瘍学的な設定は、腫瘍の種類、腫瘍の病期、投与された抗がん化学療法を考慮に入れて、さらなる研究を行う価値がある。

引用文献

Comparative effectiveness and safety of erythropoiesis-stimulating agents (biosimilars vs originators) in clinical practice: a population-based cohort study in Italy
Francesco Trotta et al.
BMJ Open. 2017 Mar 10;7(3):e011637. doi: 10.1136/bmjopen-2016-011637.
PMID: 28283484 PMCID: PMC5353346 DOI: 10.1136/bmjopen-2016-011637
ー続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28283484/

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