私的背景
薬剤の副作用について Rule of Threeという法則がある。関連するポアソン分布についても調べたのでまとめておく。
結果
Rule of Threeとは
「薬剤市販後調査で確認できるような重篤かつ稀な事象の生起に関する法則」である。
生起確率が 100(1-α)% 片側信頼区間の上限のときの期待度数を下表に示す。
n \ α | 0.1 | 0.05 | 0.025 | 0.01 |
10 | 2.056718 | 2.588656 | 3.084971 | 3.690427 |
100 | 2.276278 |
2.951305
|
3.621669 | 4.500741 |
1,000 | 2.299936 |
2.991250
|
3.682084 | 4.594583 |
10,000 | 2.302320 |
2.995284
|
3.688199 | 4.604110 |
100,000 | 2.302559 |
2.995728
|
3.688811 | 4.605064 |
1,000,000 | 2.302582 |
2.995728
|
3.688873 | 4.605160 |
Poisson | 2.302585 |
2.995732
|
3.688879 | 4.605170 |
n=number、例数α=alpha、危険率
(表1. 参考文献1より作成)
Senn(文献2)とUchiyama(文献3)は、Rule of Three(rule of three for zero events)を “absence of evidence is not evidence of absence“ と表現し、次のような形で説明している。
また文献1の著者は、新たなルールとして R’oを提案している。これによると、
と判断するようです。
ポアソン分布とは
「ある期間に平均 λ回起こる現象が、ある期間に X回起きる確率の分布」のようで、各発生回数における生起確率を算出できるようです。またランダムに起きる事象との相性が良く、逆を言えばランダムに起きず、何かの因子に強く影響を受けるようなアウトカムの算出においては、使い方に気をつける必要がある。
結論
Rule of Threeとは、例えば 100万人調べて 1度も事象が観測されなくても、他の 100万人中の 3人に事象が観測される可能性があるとする法則である。
つまり、ある新薬の臨床試験で重篤な副作用(あるいは有害事象)が観察されなかったからといって安心はできない。市販後調査でやっと検出できるような副作用もあるためである。
また Rule of Threeは α=0.05のとき、そして n=100以上のときによく近似し、例数 100万でも近似していた。これは Poisson分布からも導出でき、よく近似していた。従って zero eventsであっても Poisson分析によりリスクを推定できる。
また、100人に1人の頻度で発現する有害事象を検出するためには3倍の300人で検証する必要がある。
新しかろう良かろう、新しいから使ってみようという思考について、再認識と再考を求める法則ではなかろうか。
参考文献
- Iwasaki M et al. Statistical Inference for the Occurrence Probability of Rare Events – Rule of Three and Related Topics – 計量生物学; 26 巻 2 号: p.53-63. 2015
- Senn S. Statistical Issues in Drug Development. Chichester; John Wiley & Sons: 1997
- Uchiyama A. Management of safety information from clinical trials. DIA Tutorial “CIOMS Initiative for Safety Information” February 18 2005
-Evidence never tells you what to do-
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