デュピルマブ vs. オマリズマブ ― 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と喘息における初の直接比較試験(DB-RCT; EVEREST試験; Lancet Respir Med. 2025)

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デュピルマブとオマリズマブ、どちらを優先する?

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)は、IL-4/IL-13経路やIgEを介するタイプ2炎症が関与する疾患です。

一方、喘息は免疫経路によりType 2高炎症型と低炎症型に分類され、鼻茸合併例ではType 2高炎症型であることが多いです。

Type 2高炎症型喘息IL-4/IL-5/IL-13、好酸球、IgEが関与。デュピルマブ・オマリズマブが有効
Type 2低炎症型喘息好中球主体。IL-17などが関与。生物学的製剤への反応は乏しい

デュピルマブ(IL-4/13受容体阻害薬、商品名:デュピクセント)とオマリズマブ(抗IgE抗体、商品名:ゾレア)は、いずれも既に高い有効性が示されていますが、両者を直接比較した臨床試験は存在しませんでした

2025年に発表されたEVEREST試験は、両薬を直接比較(head-to-head)した初の第IV相二重盲検ランダム化試験です。


試験結果から明らかになったことは?

◆研究概要

項目内容
試験名EVEREST(EValuating trEatment RESponses of dupilumab vs omalizumab)
デザイン国際多施設・無作為化・二重盲検・第IV相試験
対象重症CRSwNP+軽度〜重度喘息合併患者(年齢≥18歳)
主な登録条件鼻茸スコア≥5(各鼻腔で≥2)、8週間以上の鼻閉・嗅覚障害、FEV₁≤85%予測値、吸入ステロイド使用中
介入デュピルマブ群:300mg皮下注 2週ごと
オマリズマブ群:体重・IgE値に基づき2〜4週ごと投与
※全例でモメタゾン点鼻薬を併用
主要評価項目鼻茸スコア(endoscopic nasal polyp score; NPS)の変化
University of Pennsylvania Smell Identification Test(UPSIT)嗅覚スコアの変化
追跡期間24週
登録数360例(デュピルマブ 181 例、オマリズマブ 179 例)/平均年齢 52 歳/男性 55%
試験登録NCT04998604
資金提供サノフィ社およびリジェネロン社

◆結果(表)

評価項目デュピルマブ群オマリズマブ群
(LS mean ± 95%CI)
p値
鼻茸スコア変化(NPS)改善大改善-1.60
(-1.96 ~ -1.25)
<0.0001
嗅覚スコア(UPSIT)改善大改善+8.0
(6.3 ~ 9.7)
<0.0001
有害事象(TEAE)115/179 (64%)116/173 (67%)

主な有害事象は鼻咽頭炎、頭痛、上気道感染、咳嗽などで、重篤例・死亡例はなし
両群とも安全性プロファイルは既報と一致していました。


◆結果の解釈

  • デュピルマブはオマリズマブに対し有効性で優越性を示した(鼻茸縮小および嗅覚改善)。
  • 両薬剤とも安全性に新たな懸念はなく、忍容性は良好。
  • 結果は、重症CRSwNP+喘息合併例におけるデュピルマブの位置づけを支持します。

◆試験の限界

  • 追跡期間が24 週と短く、長期的な再発抑制効果は未評価。
  • **特定の併存症(例:NSAID過敏症、好酸球性副鼻腔炎)**を含めていない。
  • 資金提供が製薬企業である点も留意が必要。
  • コスト・投与間隔・注射スケジュールの違いは臨床選択に影響し得る。

◆今後の展望

  • 長期エクステンション試験による持続効果・再投与時反応の確認。
  • 薬剤選択の個別化:IgE高値例ではオマリズマブが依然有効な可能性。
  • 併存喘息の重症度別効果解析など、表現型に応じた最適治療戦略の構築。

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◆まとめ

EVEREST試験は、CRSwNP+喘息を有する患者において、
デュピルマブがオマリズマブよりも有効性で優れることを示した初の直接比較試験です。
安全性は両薬剤で概ね同等であり、タイプ2炎症全般に対する抑制力の強さが臨床的に注目されます。

今後、費用対効果や長期成績を含めたエビデンスの蓄積が、治療選択の精緻化に寄与するでしょう。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、重症鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎および喘息併発患者において、デュピルマブはオマリズマブより優れた効果を示した。

根拠となった試験の抄録

背景: 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)は、主に2型炎症によって引き起こされます。2型炎症のドライバーとメディエーター(それぞれインターロイキン[IL]-4/IL-13シグナル伝達と免疫グロブリンE[IgE])を標的とする生物学的製剤デュピルマブとオマリズマブは、CRSwNPの治療に有効ですが、直接比較した症例はほとんどありません。呼吸器生物学的製剤における初の直接比較試験であるEVEREST(EValuating trEatment RESponses of dupilumab versus omalizumab)では、軽症、中等症、または重症喘息を有する重症CRSwNP患者を対象に、デュピルマブとオマリズマブの有効性と安全性を比較することを目的としました。

方法: EVEREST試験は、17カ国100の病院または臨床センターで実施された、国際ランダム化二重盲検第4相試験です。試験実施施設は、耳鼻咽喉科医、呼吸器科医、アレルギー科医、免疫科医が診療を行っている施設が選定され、過去に二重盲検試験を実施したことがあり、経鼻内視鏡検査と心電図検査機器を備えていることが条件でした。対象患者は、18歳以上で、重度のコントロール不良の鼻茸(鼻ポリープスコアが5以上[かつ両鼻孔で2以上])、スクリーニング前8週間以上鼻づまりと嗅覚喪失の症状があり、医師により喘息と診断された患者でした。患者は、デュピルマブ300 mgを2週間ごとに皮下投与する群、またはオマリズマブを体重およびIgEレベルに応じて段階的に投与する群(2週間ごとまたは4週間ごと)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、モメタゾンフランカルボン酸エステル点鼻スプレーを背景投与として24週間投与された。患者および治験責任医師は治験薬について盲検化された。主要評価項目は、24週時点の内視鏡的鼻ポリープスコアおよびペンシルベニア大学嗅覚識別検査(UPSIT)のベースラインからの変化であった。有効性は治療意図集団で評価され、安全性は治験薬を少なくとも1回投与された患者で評価された。本試験はClinicalTrials.gov(NCT04998604)に登録された。

結果: 2021年9月27日から2024年12月27日の間に、819人が研究への組み入れについてスクリーニングされ、459人が除外された(スクリーニングで不合格となった主な理由は、167人が鼻ポリープスコア≥5を満たさなかったか、鼻づまりと嗅覚喪失の症状が継続していなかった、114人が気管支拡張薬投与前のFEV1≦85%の予測正常値を満たさなかった 99人がオマリズマブの投薬量による適格基準を満たさなかった)、360人がランダムに割り当てられた(181人がデュピルマブ群、179人がオマリズマブ群に割り当てられた)。360人の参加者のうち、198人(55%)が男性、162人(45%)が女性で、全集団サンプルの平均年齢は52歳(SD 13.1)であった。 24週時点で、すべての主要および副次的有効性エンドポイントにおいて、デュピルマブ群はオマリズマブ群よりも有意に改善が認められました。ベースラインからの変化におけるデュピルマブ群とオマリズマブ群の最小二乗平均差は、鼻ポリープスコアが-1.60(95%信頼区間-1.96~-1.25、p<0.0001)、UPSITスコアが8.0(6.3~9.7、p<0.0001)でした。デュピルマブ群では179名中115名(64%)、オマリズマブ群では173名中116名(67%)が治療関連有害事象を報告し、その中で最も多くみられたのは鼻咽頭炎、過量投与、頭痛、上気道感染症、および咳嗽でした。本試験において死亡例は認められませんでした。

解釈: 重症CRSwNPおよび喘息併発患者において、デュピルマブはオマリズマブより優れた効果を示した。これらの知見は、2型呼吸器疾患患者におけるデュピルマブの実薬対照薬に対する有効性、デュピルマブおよびオマリズマブの既知の安全性プロファイルを裏付けるものであり、臨床現場においてCRSwNPおよび喘息併発患者に対するより適切な治療ターゲティングを可能にする可能性がある。

資金提供: サノフィ社およびリジェネロン・ファーマシューティカルズ社

引用文献

Dupilumab versus omalizumab in patients with chronic rhinosinusitis with nasal polyps and coexisting asthma (EVEREST): a multicentre, randomised, double-blind, head-to-head phase 4 trial
Eugenio De Corso et al. PMID: 41033334 DOI: 10.1016/S2213-2600(25)00287-5
Lancet Respir Med. 2025 Sep 28:S2213-2600(25)00287-5. doi: 10.1016/S2213-2600(25)00287-5. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41033334/

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