ビタミンB12誘導体メコバラミンがカペシタビン誘発手足症候群を予防する?(DB-RCT; BMJ. 2025)

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カペシタビン誘発の手足症候群にビタミンB12は有効なのか?

抗がん薬 カペシタビン は乳がんを含む固形腫瘍で広く用いられる経口フッ化ピリミジン製剤です。一方、副作用として手足症候群(Hand-Foot Syndrome:HFS)を高率に引き起こし、治療中止を要因となります。また、HFSは日常生活の質を大きく損なうため、発症予防が臨床的に重要です。

メコバラミン(メチルコバラミン、ビタミンB12誘導体、商品名:メチコバール)は末梢神経障害に対する保護作用が知られており、HFS予防薬としての可能性が注目されています。しかし、その有効性については懐疑的な側面もあり、質の高い研究結果が求められていました。

今回ご紹介するのは、中国で行われた多施設共同ランダム化比較試験です。メコバラミンの有効性と安全性を評価しています。


試験結果から明らかになったことは?

  • 対象患者:HER2陰性早期乳がん女性(18〜75歳)、術後補助療法としてカペシタビン投与予定
  • デザイン:多施設・二重盲検・プラセボ対照・第3相試験
  • 介入
    • メコバラミン群:0.5mgを1日3回経口投与
    • プラセボ群:同条件で投与
    • 最大24週間継続
  • 主要評価項目:カペシタビン治療中に初発するグレード2以上のHFS発症率
  • 副次評価項目:カペシタビンの減量・中止率、その他有害事象の発生率

◆主な結果

評価項目メコバラミン群 (n=117)プラセボ群 (n=117)群間差・解析結果
グレード ≥2 HFS発症率14.5%(17人)29.1%(34人)差 -14.5%
(95%CI -24.9 〜 -4.1)
p=0.003
HFSによるカペシタビン減量・中止7.7%(9人)13.7%(16人)差 -6.0%
(95%CI -13.9 〜 1.9)
その他の有害事象75.2%(88人)81.2%(95人)群間差なし
メコバラミン特有の副作用なしなし安全性に問題なし

◆結果の解釈

  • 主要評価項目であるHFSの発症率を有意に低下させた(発症率が半減)。
  • カペシタビンの減量・中止の回避効果も一定程度認められた。
  • 新たな副作用は確認されず、安全性に懸念はなし

これらの結果は、HER2陰性乳がんの補助療法でカペシタビンを使用する患者において、メコバラミンが有効な支持療法となる可能性を示しています。


◆研究の限界

  • 試験は中国国内の7施設に限られており、他の人種や地域での再現性は未検証。
  • 観察期間は24週間であり、長期的な予防効果や再発率への影響は不明
  • 他の抗がん薬に伴うHFSへの効果は検証されていない。

◆まとめ

メコバラミンは、カペシタビン誘発の中等度以上の手足症候群を有意に減少させ、副作用の新規リスクを伴わずに予防効果を示しました。今後、より大規模かつ多様な人種を対象とした検証が期待されます。

アジア人での検証結果であることから、日本人への試験結果の外挿も期待できます。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、カペシタビン術後治療を受けているHER2陰性早期乳がん患者において、経口メチルコバラミンは、予期せぬ安全性上の懸念なく、グレード2以上の症状の発現率を低下させることで、手足症候群の重症度を有意に軽減した。

根拠となった試験の抄録

目的: 補助カペシタビン治療を受けているヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性早期乳がん患者における手足症候群をメチルコバラミンが効果的かつ安全に予防できるかどうかを評価する。

試験設計: 多施設、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、第3相試験。

設定: 2022年1月から2024年2月までの中国の7つの病院。

試験参加者: 病理学的にHER2陰性早期乳がんと確認され、カペシタビンによる補助治療を受ける予定の18~75歳の女性。

介入: 適格な患者は、1:1の比率でランダムに割り当てられ、最大 24 週間、メチルコバラミン 0.5mgを経口で1日3回投与するか、プラセボを投与しました。

主な評価項目: 主要評価項目は、治療意図解析においてカペシタビン治療中に初めて発現したグレード2以上の手足症候群の発生率であった。

結果: 234名の患者がメチルコバラミン(n=117)またはプラセボ(n=117)を投与される群に無作為に割り付けられ、治療意図解析および安全性解析に組み入れられた。グレード2以上の手足症候群は、メチルコバラミン群では117名中17名(14.5%)、プラセボ群では117名中34名(29.1%)に発現した(リスク差 -14.5%、95%信頼区間 -24.9% ~ -4.1%、片側P値=0.003)。手足症候群によるカペシタビン投与の減量または中止率は、メチルコバラミン群で7.7%(117名中9名)、プラセボ群で13.7%(117名中16名)であった(リスク差 -6.0%、95%信頼区間 -13.9% ~ 1.9%)。その他の有害事象の発現率は両群で同程度でした(メチルコバラミン群で88件(75.2%)、プラセボ群で95件(81.2%))。メチルコバラミン特有の有害事象は認められませんでした。

結論: カペシタビン術後治療を受けているHER2陰性早期乳がん患者において、経口メチルコバラミンは、予期せぬ安全性上の懸念なく、グレード2以上の症状の発現率を低下させることで、手足症候群の重症度を有意に軽減した。これらの知見は、この患者集団におけるカペシタビン関連重症手足症候群の予防にメチルコバラミンを使用することを支持するものである。

試験登録: ClinicalTrials.gov NCT05165069

引用文献

Effect of methylcobalamin on capecitabine induced hand-foot syndrome in patients with HER2 negative early breast cancer: multicentre, double blind, randomised, placebo controlled, phase 3 trial
Yuan Xia et al. PMID: 40935571 PMCID: PMC12423938 DOI: 10.1136/bmj-2025-084290
BMJ. 2025 Sep 11:390:e084290. doi: 10.1136/bmj-2025-084290.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40935571/

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