インフルエンザ感染患者に対するラニナミビルの効果は限定的?(第2相RCT; IGLOO試験; 2014)

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臨床試験の背景

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)は比較的新しい抗インフルエンザ薬です。ラニナミビルはプロドラッグであり、加水分解により活性代謝物ラニナミビルに変換された後、抗ウイルス作用を示します。A型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制します。

日本での臨床研究の結果に基づき承認されていますが、海外では販売されていません。これはなぜなのでしょうか?

そこで今回は、海外で検証されたラニナミビルの第二相試験の結果をご紹介します。

臨床試験のPICOT

P:北半球と南半球の12か国にわたる639人の患者が登録され、このうち、248人がPCR検査でインフルエンザA型またはB型ウイルスに感染していることが確認され、治療意図に基づく有効性(有効性のITT)解析の対象となりました。

I:ラニナミビルオクタン酸エステル(LANI)の40mgおよび80mg

C:プラセボ

O:症状緩和までの時間

T:ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間第II相試験

主要な結果

インフルエンザ感染が確認された患者の約75%と19%がそれぞれインフルエンザA H1N1 2009とH3N2に感染しており、6%がインフルエンザBに感染していました。

症状緩和までの時間(中央値)
LANI 40mg102.3時間
LANI 80mg103.2時間
プラセボ104.1時間

Flu-iiQ患者記録アウトカム質問票で測定したところ、40mg群と80mg群のどちらも、試験の主要評価項目である症状緩和までの時間の中央値において、プラセボと比較して有意な短縮を達成しませんでした。インフルエンザ症状の緩和までの平均時間は、40mg群では102.3時間、80mg群では103.2時間であったのに対し、プラセボ群では104.1時間でした。

40mg群と80mg群の両患者は、qRT-PCRによって定量化された試験の3日目に、プラセボ群と比較してウイルス排出が統計的に有意に減少したことを示しました。さらに、プラセボと比較して、40mg群と 80mg群の両方で統計的に有意な割合の患者が試験の3日目に培養陰性でした。

40mg群のインフルエンザ感染患者では、プラセボ群と比較して二次細菌感染の発生率が統計的に有意に減少しました。

コメント

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)は、日本以外の国や地域で使用されていません。その理由はなぜなのでしょうか?

さて、海外で実施された二重盲検ランダム化比較試験の結果、プラセボと比較して、ラニナミビル40mg・80mgは、インフルエンザ症状の緩和までの時間を短縮しませんでした。

本試験結果から、海外での開発は中止されています。一方、日本では、オセルタミビルとの非劣性試験(MARVEL試験)が行われ承認申請されています。また曝露後予防効果については、プラセボとの比較試験で有効性が示されています(インフルエンザ罹患率を13%減少)。

注意点としては、治療薬としての検証が非劣性試験のみであり、プラセボが設定されていないことです。つまり、海外での検証結果のように、症状緩和までの時間においてプラセボと差がない可能性があります。そもそもオセルタミビルの有効性においても、プラセボと比較して症状緩和までの時間を1日程度早める効果が示されているにすぎません。

医療全体を考えるときにより重要となるのは「重症化予防」です。小児や高齢者、免疫抑制薬などを使用している患者は重症化しやすいことから、このような患者に抗ウイルス薬を優先して使用する必要があります。一方、いずれの臨床試験でも対象となっているのは比較的健康な人であり、プラセボとの効果が示されづらいのは想像に難くありません。

医療資源を枯渇させないために、どのような患者に、どんな薬が、どのくらい必要なのか、改めて考える必要があります。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 海外で実施された二重盲検ランダム化比較試験の結果、プラセボと比較して、ラニナミビル40mg・80mgは、インフルエンザ症状の緩和までの時間を短縮しなかった。

引用文献

Biota releases top-line results from Phase II trial of laninamivir octanoate
ClinicalTrialsArena. 2014年8月4日
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