SGLT-2阻害薬は心筋梗塞後にも有効なのか?
ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬は、心不全(HF)、2型糖尿病(T2DM)、慢性腎臓病(CKD)の患者において心血管系の転帰を改善することが知られています。しかし、心筋梗塞(MI)後の有効性については不明な点が多く、充分に検証されていません。
そこで今回は、心筋梗塞患者における心筋梗塞2次予防、心不全や心血管死亡等への効果を検証したメタ解析の結果をご紹介します。
本解析では、PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govについて系統的検索が行われました。
本解析の主要アウトカムは、心不全による入院(HHF)、心血管死、HHFまたは心血管死の複合、全死亡、主要心血管イベント(MACE)、MI再発、重症不整脈、腎障害、脳卒中でした。副次的アウトカムは左室駆出率(LVEF)と左室拡張末期容積(LVEDV)の改善が目標とされました。
試験結果から明らかになったことは?
22,370例の患者を対象とした13件の研究が組み入れられました。
リスク比 RR (95%CI) | |
心不全による入院(HHF) | RR 0.69(0.61〜0.78) p<0.001 |
HHFまたは心血管(CV)死亡の複合 | RR 0.87(0.77〜0.99) p=0.028 |
全死亡 | RR 0.82(0.73〜0.93) p=0.002 |
主要心血管イベント(MACE) | RR 0.68(0.53〜0.88) p=0.004 |
心筋梗塞(MI)再発 | RR 0.81(0.69〜0.94) p=0.007 |
重症不整脈 | RR 0.54(0.34〜0.85) p=0.009 |
腎障害 | RR 0.68(0.53〜0.87) p=0.002 |
メタ解析の結果、SGLT2阻害薬はHHF(RR 0.69、95%CI 0.61〜0.78、p<0.001)、HHFまたはCV死亡の複合(RR 0.87、95%CI 0.77〜0.99、p=0.028)、全死亡(RR 0.82、95%CI 0.73〜0.93、p=0.002)、MACE(RR 0.68、95%CI 0.53〜0.88、p=0.004)、MI再発(RR 0.81、95%CI 0.69〜0.94、p=0.007)、重症不整脈(RR 0.54、95%CI 0.34〜0.85、p=0.009)、腎障害(RR 0.68、95%CI 0.53〜0.87、p=0.002)を減少させました。
LVEF(MD 3.96%、95%CI 2.52~5.40、p<0.001)とLVEDV(MD -5.52mL、95%CI -10.21 ~ -0.83、p=0.021)の改善はSGLT2阻害薬群で顕著に大きいことが示されました。
コメント
SGLT-2阻害薬はさまざまな効果を示していますが、心筋梗塞後の効果については充分に検証されていません。
さて、メタ解析の結果、心筋梗塞(MI)後の患者において、まずSGLT2阻害薬が心不全による入院(HHF)、心血管死またはHHFの合併、全死亡、MACE、MI再発、重症不整脈、腎障害のリスクを有意に低下させることが明らかになりました。さらに、SGLT2阻害薬はLVEFとLVEDVを改善しました。
また、機能的・器質的な変化として、左室駆出率(LVEF)と左室拡張末期容積(LVEDV)の改善も示されています。したがって、心筋梗塞後にLVEFが低下した心不全患者において、より有効性が高いと考えられます。一方、LVEFが保たれた心不全(HFpEF)患者における効果は明確ではありません。これまでの臨床試験においても、プラセボと比較して、一部のアウトカムをやや改善する程度です。
更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ メタ解析の結果、心筋梗塞(MI)後の患者において、まずSGLT2阻害薬が心不全による入院(HHF)、心血管死またはHHFの合併、全死亡、MACE、MI再発、重症不整脈、腎障害のリスクを有意に低下させることがわかった。さらに、SGLT2阻害薬はLVEFとLVEDVを改善した。
根拠となった試験の抄録
目的:ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬は、心不全(HF)、2型糖尿病(T2DM)、慢性腎臓病(CKD)の患者において心血管系の転帰を改善することが知られている。しかし、心筋梗塞(MI)後の有効性については不明な点が多い。
材料と方法:PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govを用いて系統的検索を行った。
主要アウトカムは、心不全による入院(HHF)、心血管死、HHFまたは心血管死の複合、全死亡、主要心血管イベント(MACE)、MI再発、重症不整脈、腎障害、脳卒中であった。副次的アウトカムは左室駆出率(LVEF)と左室拡張末期容積(LVEDV)の改善を目標とした。
結果:22,370例の患者を対象とした13件の研究が組み入れられた。メタ解析の結果、SGLT2阻害薬はHHF(RR 0.69、95%CI 0.61〜0.78、p<0.001)、HHFまたはCV死亡の複合(RR 0.87、95%CI 0.77〜0.99、p=0.028)、全死亡(RR 0.82、95%CI 0.73〜0.93、p=0.002)、MACE(RR 0.68、95%CI 0.53〜0.88、p=0.004)、MI再発(RR 0.81、95%CI 0.69〜0.94、p=0.007)、重症不整脈(RR 0.54、95%CI 0.34〜0.85、p=0.009)、腎障害(RR 0.68、95%CI 0.53〜0.87、p=0.002)を減少させた。LVEF(MD 3.96%、95%CI 2.52~5.40、p<0.001)とLVEDV(MD -5.52mL、95%CI -10.21 ~ -0.83、p=0.021)の改善はSGLT2阻害薬群で顕著に大きかった。
結論:心筋梗塞(MI)後の患者において、まずSGLT2阻害薬が心不全による入院(HHF)、心血管死またはHHFの合併、全死亡、MACE、MI再発、重症不整脈、腎障害のリスクを有意に低下させることがわかった。さらに、SGLT2阻害薬はLVEFとLVEDVを改善した。
キーワード:有効性;メタ解析;心筋梗塞;Na-グルコース共輸送体2阻害薬
引用文献
Effects of sodium-glucose cotransporter-2 inhibitors in myocardial infarction patients: A systematic review and meta-analysis
Qiufeng Jia et al. PMID: 39691984 DOI: 10.1111/dom.16122
Diabetes Obes Metab. 2024 Dec 18. doi: 10.1111/dom.16122. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39691984/
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