小児片頭痛における予防薬はどれがよい?(RCTのネットワークメタ解析; JAMA Netw Open. 2024)

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小児の片頭痛予防薬として優れる薬剤とは?

小児片頭痛は、小児や青年のQOLや学業成績に大きな影響を及ぼすことが知られています。この集団における片頭痛予防のための薬理学的介入の有効性と安全性を理解することは、効果的な治療戦略を開発する上で極めて重要です。

そこで今回は、片頭痛と診断された小児患者を対象に、小児片頭痛予防のための薬理学的治療に関連する有効性と安全性について、さまざまな経口薬理学的介入を含む介入をプラセボと比較して評価することを目的に実施されたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

データソースは、PubMed、Embase、SCOPUSであり、2023年9月までの出版物が検索されました。検索用語と索引付けは、小児の片頭痛予防におけるランダム化比較試験を中心に、関連する研究が網羅できるように選択されました。解析への組み入れ基準は、片頭痛を有する小児患者を含むランダム化比較試験が対象でした。研究は、経口薬理学的介入の検討に基づいて選択されました。検索により、最初に9162件の引用が得られました。

データ抽出は、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従い、5人の研究者が独立にスプレッドシートへ重複して研究データが抽出されました。同定された異質性のため、主要アウトカムおよび副次的アウトカムについてランダム効果モデルが採用され、研究レベルの推定値が算出されました。データ解析は2023年12月~2024年3月に実施されました。

本解析の主要アウトカムは片頭痛頻度(1ヵ月あたりの発作回数)でした。副次的アウトカムは、50%以上の奏効率、頭痛持続時間、頭痛強度、障害(小児片頭痛特異的障害ツールによる評価)でした。また、有害事象についても評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

解析には、3,771人が参加した45件の試験が組み入れられました。

片頭痛頻度平均値の比 RoM
(95%CI)
vs. プラセボ
プレガバリンRoM 0.38(0.18~0.79
ビタミンD3併用トピラマートRoM 0.44(0.30~0.65

プラセボと比較して、プレガバリン(平均値の比[RoM] 0.38、95%CI 0.18~0.79)およびビタミンD3併用トピラマート(RoM 0.44、95%CI 0.30~0.65)は片頭痛頻度の減少と関連していました。

片頭痛頻度平均値の比 RoM
(95%CI)
vs. プラセボ
フルナリジン(日本では販売中止)RoM 0.46(0.26~0.81
レベチラセタムRoM 0.47(0.30~0.72
リボフラビンRoM 0.50(0.32~0.77
シナリジン/シンナリジン(日本では販売中止)RoM 0.64(0.46~0.88
トピラマートRoM 0.70(0.55~0.89
アミトリプチリンRoM 0.73(0.54~0.97

フルナリジン(日本では販売中止:RoM 0.46、95%CI 0.26~0.81)、レベチラセタム(RoM 0.47、95%CI 0.30~0.72)、リボフラビン(RoM 0.50、95%CI 0.32~0.77)、シナリジン/シンナリジン(日本では販売中止:RoM 0.64、95%CI 0.46~0.88)、トピラマート(RoM 0.70、95%CI 0.55~0.89)、およびアミトリプチリン(RoM 0.73、95%CI 0.54~0.97)も片頭痛頻度の減少と関連していましたが、これらの所見は個々の研究から得られた結果でした。

50%以上の反応率リスク比 RR
(95%CI)
vs. プラセボ
フルナリジンおよびα-リポ酸RR 8.73(2.44~31.20
フルナリジンRR 4.00(1.38~11.55
プレガバリンRR 1.88(1.13~3.14
シナリジン/シンナリジンRR 1.46(1.04~2.05

50%以上の反応率については、フルナリジンおよびα-リポ酸(リスク比[RR] 8.73、95%CI 2.44~31.20)、フルナリジン(RR 4.00、95%CI 1.38~11.55)、プレガバリン(RR 1.88、95%CI 1.13~3.14)、およびシナリジン/シンナリジン(RR 1.46、95%CI 1.04~2.05)が、プラセボよりも有意に高い有効性と関連していました。

頭痛強度平均値の比 RoM
(95%CI)
vs. プラセボ
プロプラノロールとシナリジン/シンナリジンRoM 0.45(0.28~0.72
プレガバリンRoM 0.57(0.33~0.96
バルプロ酸RoM 0.60(0.49~0.72
レベチラセタムRoM 0.62(0.50~0.77
シナリジン/シンナリジンRoM 0.64(0.54~0.76

プラセボと比較して、プロプラノロールとシナリジン/シンナリジン(RoM 0.45、95%CI 0.28~0.72)、プレガバリン(RoM 0.57、95%CI 0.33~0.96)、バルプロ酸(RoM 0.60、95%CI 0.49~0.72)、レベチラセタム(RoM 0.62、95%CI 0.50~0.77)、およびシナリジン/シンナリジン(RoM 0.64、95%CI 0.54~0.76)は、頭痛強度の軽減と有意に関連していました。

QOLの有意な改善や片頭痛発作の持続時間の短縮に関連する治療はありませんでした。

有害事象リスク比 RR
(95%CI)
vs. プラセボ
アミトリプチリンRR 3.81(1.41~10.32
トピラマートRR 4.34(1.60~11.75
バルプロ酸RR 5.93(1.93~18.23

有害事象は、プラセボと比較してアミトリプチリン(RR 3.81、95%CI 1.41~10.32)、トピラマート(RR 4.34、95%CI 1.60~11.75)、バルプロ酸(RR 5.93、95%CI 1.93~18.23)で高いことが示されました。

コメント

小児の片頭痛に対する予防薬として、薬剤の比較は充分に行われていません。

さて、ランダム化比較試験を対象としたネットワークメタ解析において、トピラマートとプレガバリンは頭痛の頻度と強度の減少と関連していました。統計的に有意な結果を示した他の薬物(フルナリジン、リボフラビン、アミトリプチリン、シナリジン/シンナリジン)もありましたが、確固とした結論を得るためにはより多くの研究が必要との見解に至りました。

有害事象については、プラセボと比較して、アミトリプチリン、トピラマート、バルプロ酸で有意なリスク増加が示されています。個々の有害事象について抄録で言及されていませんが、有効性・安全性を踏まえると、プレガバリンが優れていそうです。

ちなみに、2024年10月現在、プレガバリンの適応は以下の2つです。
○神経障害性疼痛
○線維筋痛症に伴う疼痛
※対象は成人であり、小児への投与は適応外使用となります。

小児の片頭痛予防薬として使用されていた、フルナリジンやシンナリジンが副作用の観点から販売中止されています。まだまだアンメットニーズの高い領域であると考えられることから、新薬の開発やドラッグリポジショニングの効果比較など、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたネットワークメタ解析において、トピラマートとプレガバリンは頭痛の頻度と強度の減少と関連していた。統計的に有意な結果を示した他の薬物(フルナリジン、リボフラビン、アミトリプチリン、シナリジン/シンナリジン)もあったが、確固とした結論を得るためにはより多くの研究が必要であった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:小児片頭痛は、小児や青年のQOLや学業成績に大きな影響を及ぼす。この集団における片頭痛予防のための薬理学的介入の有効性と安全性を理解することは、効果的な治療戦略を開発する上で極めて重要である。

目的:片頭痛と診断された小児患者を対象に、小児片頭痛予防のための薬理学的治療に関連する有効性と安全性を評価する包括的なネットワークメタ解析を実施し、さまざまな経口薬理学的介入を含む介入をプラセボと比較して評価すること。

データソース:PubMed、Embase、SCOPUSで2023年9月までの出版物を検索した。検索用語と索引付けは、小児の片頭痛予防におけるランダム化比較試験を中心に、関連する研究を網羅するように選択した。

研究の選択:組み入れ基準は、片頭痛を有する小児患者を含むランダム化比較試験を対象とした。研究は、経口薬理学的介入の検討に基づいて選択された。検索により、最初に9162件の引用が得られた。

データ抽出と統合:データ抽出は、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従った。5人の研究者が独立にスプレッドシートへ重複して研究データを抽出した。同定された異質性のため、主要アウトカムおよび副次的アウトカムにランダム効果モデルを採用し、研究レベルの推定値を算出した。データ解析は2023年12月~2024年3月に実施された。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは片頭痛頻度(1ヵ月あたりの発作回数)であった。副次的アウトカムは、50%以上の奏効率、頭痛持続時間、頭痛強度、障害(小児片頭痛特異的障害ツールによる評価)であった。有害事象も評価した。

結果:解析には、3,771人が参加した45の試験が組み入れられた。プラセボと比較して、プレガバリン(平均値の比[RoM] 0.38、95%CI 0.18~0.79)およびビタミンD3併用トピラマート(RoM 0.44、95%CI 0.30~0.65)は片頭痛頻度の減少と関連していた。フルナリジン(日本では販売中止:RoM 0.46、95%CI 0.26~0.81)、レベチラセタム(RoM 0.47、95%CI 0.30~0.72)、リボフラビン(RoM 0.50、95%CI 0.32~0.77)、シナリジン/シンナリジン(日本では販売中止:RoM 0.64、95%CI 0.46~0.88)、トピラマート(RoM 0.70、95%CI 0.55~0.89)、およびアミトリプチリン(RoM 0.73、95%CI 0.54~0.97)も片頭痛頻度の減少と関連していたが、これらの所見は個々の研究から得られたものである。
50%以上の反応率については、フルナリジンおよびα-リポ酸(リスク比[RR] 8.73、95%CI 2.44~31.20)、フルナリジン(RR 4.00、95%CI 1.38~11.55)、プレガバリン(RR 1.88、95%CI 1.13~3.14)、およびシナリジン/シンナリジン(RR 1.46、95%CI 1.04~2.05)が、プラセボよりも有意に高い有効性と関連していた。
プラセボと比較して、プロプラノロールとシナリジン/シンナリジン(RoM 0.45、95%CI 0.28~0.72)、プレガバリン(RoM 0.57、95%CI 0.33~0.96)、バルプロ酸(RoM 0.60、95%CI 0.49~0.72)、レベチラセタム(RoM 0.62、95%CI 0.50~0.77)、およびシナリジン/シンナリジン(RoM 0.64、95%CI 0.54~0.76)は、頭痛強度の軽減と有意に関連していた。
QOLの有意な改善や片頭痛発作の持続時間の短縮に関連する治療はなかった。
有害事象は、プラセボと比較してアミトリプチリン(RR 3.81、95%CI 1.41~10.32)、トピラマート(RR 4.34、95%CI 1.60~11.75)、バルプロ酸(RR 5.93、95%CI 1.93~18.23)で高かった。

結論と関連性:ランダム化比較試験のこのネットワークメタ解析において、トピラマートとプレガバリンは頭痛の頻度と強度の減少と関連していた。統計的に有意な結果を示した他の薬物(フルナリジン、リボフラビン、アミトリプチリン、シナリジン/シンナリジン)もあったが、確固とした結論を得るためにはより多くの研究が必要であった。いずれの薬剤もQOLや発作持続時間の改善とは関連しておらず、より包括的な治療戦略を開発し、特にビタミンを含む併用療法の可能性を探るためのさらなる研究の必要性が強調された。今後の研究では、これらの知見を検証し、小児の片頭痛管理における治療の展望を広げることに焦点を当てるべきである。

引用文献

Preventive Medications in Pediatric Migraine: A Network Meta-Analysis
Omid Kohandel Gargari et al. PMID: 39388181 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.38666
JAMA Netw Open. 2024 Oct 1;7(10):e2438666. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.38666.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39388181/

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