小児・思春期における糖尿病予備軍および2型糖尿病スクリーニングは有用なのか?
2型糖尿病と診断された青少年のうち、多くは若年成人期までに微小血管合併症を発症することが報告されています。そのため、早期発見・早期介入が求められますが、小児および青少年の糖尿病予備軍および2型糖尿病のスクリーニングの有益性・有害性については充分に検証されていません。
そこで今回は、スクリーニングで発見された糖尿病前症や最近診断された2型糖尿病に対するスクリーニングや介入を評価した対照研究を対象としたシステマティックレビューの結果をご紹介します。
本試験では、2021年5月3日までのPubMed/MEDLINE、Cochrane Library、試験登録、参考文献、専門家が検索対象となりました。2022年7月22日までの文献が調査されました。
本試験の主要アウトカムは死亡率、心血管疾患、糖尿病関連疾患、糖尿病発症、QOL、有害性でした。
試験結果から明らかになったことは?
本レビューでは、8件の論文(参加者 856例、平均年齢 14歳[範囲 10~17歳])が対象となった。そのうち、6件は思春期・青年期における2型糖尿病の治療選択肢(TODAY)研究によるものでした。スクリーニングの利益または害を直接評価した適格な研究はなかった。
メトホルミン、メトホルミン+ロシグリタゾン、メトホルミン+ライフスタイル介入を比較した1件のランダム化臨床試験(RCT)(TODAY:肥満の青年 699例、平均年齢 14歳)では、最近糖尿病の診断を受けた青年2例が腎障害を起こし(それぞれ0 v.s 1 vs. 1; P>0.99)、11例が糖尿病ケトアシドーシス(それぞれ5 vs. 3 vs. 3; P>0.70)を報告しました。
糖尿病予備軍を伴う肥満の青年 75例(平均年齢 13歳)を対象とした1件のRCTでは、集中的なライフスタイル介入と標準治療を比較し、フォローアップ期間は6ヵ月に過ぎませんでしたが、いずれの群でも糖尿病を発症した参加者はいなかったと報告しています。
介入の有害性については、異なる比較を評価した2件のRCTが、最近糖尿病と診断された若者を登録しました。主要な低血糖イベントの報告は参加者の1%未満でした。TODAYにおいて、軽度の低血糖イベントは、メトホルミンとロシグリタゾンを併用した青少年で、メトホルミンまたはメトホルミンと生活習慣介入を併用した青少年よりも多く報告されました(8.2% vs. 4.3% vs. 3.4%; P=0.05)。1件の試験において、消化器系の有害事象は、プラセボ投与群よりもメトホルミン投与群で多く報告されました(腹痛:25% vs. 12%、吐き気/嘔吐:17% vs. 10%、P値は報告されていない)
コメント
早期発見・早期治療が善とされ、さまざまなスクリーニングテストが行われていますが、その有益性・有害性については充分に検討されていません。
さて、小児・青少年における糖尿病予備軍・糖尿病スクリーニングに関するシステマティックレビューの結果、スクリーニングの利益または害を直接評価した適格な研究はありませんでした。
患者数や試験数が少ないことから、小児・思春期における糖尿病予備軍および2型糖尿病スクリーニングの有益性・有害性を検証するための前向き試験(横断研究を含む)の実施が求められます。
続報に期待。
コメント