グレパグルチドは短腸症候群の在宅中心静脈栄養を減らせるか?(DB-RCT; Gastroenterology. 2025)

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短腸症候群における「輸液離脱」の可能性を拓くGLP-2アナログとは?

短腸症候群(Short Bowel Syndrome:SBS)は、腸切除などによって吸収不良をきたし、在宅での静脈栄養(Parenteral Support:PS)を必要とすることが多い重篤な疾患です。これに対して、GLP-2アナログ製剤であるテデュグルチドが既に臨床使用されていますが、新たに開発されたグレパグルチド(glepaglutide)は、より作用時間の長い週1~2回投与の製剤として注目されています。

しかし、グレパグルチドの有効性・安全性について、充分に検証されていません。

そこで今回は、グレパグルチドの有効性と安全性を評価するために行われた第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

試験デザインと対象

  • デザイン:国際共同、ランダム化、プラセボ対照、並行群、二重盲検、第3相試験
  • 対象:短腸症候群による腸不全を有し、週3日以上の静脈栄養(PS)を必要とする患者106人
  • 介入:グレパグルチド10 mgを週2回投与、週1回投与、またはプラセボ(1:1:1割付)
  • 評価期間:24週間

主な結果(グレパグルチド週2回 vs. プラセボ)

評価項目(週24時点)グレパグルチド週2回群プラセボ群群間差(またはP値)
PS量の平均変化(L/週)-5.13*-2.85P = 0.0039(主要評価項目)
PS量 ≥20%減少を達成した割合(週20および24)65.7%38.9%P = 0.0243(副次評価項目)
PS日数が週1日以上減少した割合51.4%19.4%P = 0.0043(副次評価項目)
完全離脱(完全経腸自立)を達成した症例数5人(14%)0人(0%)
安全性良好良好

*週1回投与群では、プラセボ群と差が認められなかった。

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短腸症候群に対するグレパグルチドの有効性・安全性の評価が求められています。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、週2回投与のグレパグルチドがプラセボに比べて有意にPS量と日数を減少させました。特に、PS完全離脱(enteral autonomy)を達成した患者が14%示された点は、現行の治療と比較しても臨床的な意義が高いといえます。

一方、週1回投与では有効性が充分に確認されず、投与頻度と効果の関係が今後の検討課題と考えられます。また、解剖学的サブグループ間で一貫した効果が確認されたことから、幅広いSBS患者に応用可能性があることも示唆されています。

安全性プロファイルについても良好であり、既存のGLP-2治療に代わる選択肢として、今後の承認や実臨床での位置づけに期待が集まります。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、腸不全を伴う短腸症候群患者において、グレパグルチドは静脈栄養の必要量において臨床的に意味のある減少をもたらし、安全性も確認された。

根拠となった論文の抄録

背景と目的:グレパグルチドは、短腸症候群(SBS)患者の腸吸収を改善することを目的に開発された、作用時間の長いグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログである。本試験は、腸不全を伴うSBS患者における、グレパグルチドによる静脈栄養(PS)依存性の軽減効果および安全性を検証するために実施された。

方法:この国際的なプラセボ対照、ランダム化、並行群、二重盲検の第3相試験では、週3日以上PSを必要とするSBS患者を対象に、グレパグルチド10mg週2回、週1回、またはプラセボを24週間投与した。PS量は、48時間バランス期間の尿量がベースラインより10%以上増加した場合に同等量削減された。

結果:106人の患者がランダム化され投与された。主要評価項目では、週2回グレパグルチド投与群で週あたりPS量がベースラインから有意に減少した(-5.13L vs. -2.85L、P=0.0039)。この結果は主要な解剖学的サブグループ間でも一貫していた。
週2回群は、主要副次評価項目である以下2点においてもプラセボより優れていた:
① 週20および24時点でPS量がベースラインから20%以上減少した患者の割合(65.7% vs. 38.9%、P=0.0243)
② 週あたりPS日数が1日以上減少した患者の割合(51.4% vs. 19.4%、P=0.0043)
さらに、完全経腸自立(PS完全離脱)を達成した患者は、グレパグルチド週2回群で5人(14%)、プラセボ群では0人だった。
一方、週1回投与群では、主要および主要副次評価項目においてプラセボとの差は統計的に有意ではなかった。
患者報告アウトカム(Patient Global Impression of Change, PGIC)では、グレパグルチドに有意な改善が認められた。
グレパグルチドは安全で忍容性も良好と評価された。

結論:腸不全を伴う短腸症候群患者において、グレパグルチドは静脈栄養の必要量において臨床的に意味のある減少をもたらし、安全性も確認された。

引用文献

Glepaglutide, a Long-Acting Glucagon-like Peptide-2 Analogue, Reduces Parenteral Support in Patients With Short Bowel Syndrome: A Phase 3 Randomized Controlled Trial
Palle B Jeppesen et al. PMID: 39708985 DOI: 10.1053/j.gastro.2024.11.023
Gastroenterology. 2025 Apr;168(4):701–713.e6. Epub 2024 Dec 19.
ー 続きを読む:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39708985/

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