ICU患者におけるフロセミド+アセタゾラミド vs. フロセミド単独
集中治療室(ICU)では、水分管理が大きな課題となっています。特に、ICU患者は体液過剰を発症することが多く、死亡率や急性腎障害(AKI)の増加につながる可能性があることから、過剰な体液の除去はICUにおける体液管理の重要な要素です。
体液除去を目的とした利尿薬の投与が診療ガイドラインで推奨されており、ICU患者の40~70%に適用されています。特にループ利尿薬であるフロセミドは、最も一般的に使用されていますが、代謝性アルカローシスや電解質異常などの望ましくない副作用を引き起こす可能性がります。特に、代謝性アルカローシスは死亡リスクを増加させることから、フロセミド誘発性の代謝性アルカローシスの予防が肝要です。さらに臨床では、フロセミド耐性がよくみられ、別の課題となっています。
フロセミドと作用部位の異なる別のクラスの利尿薬を組み合わせた補助利尿療法は、このような耐性を克服し、効果的な利尿を維持できる可能性がありますが、実臨床における検証は充分ではありません。
そこで今回は、アセタゾラミドとフロセミドの併用が、利尿およびフロセミド誘発性代謝性アルカローシスの予防に及ぼす生理学的効果を評価することを目的としたランダム化比較試験の結果をご紹介します。
2施設で非盲検ランダム化パイロット試験が実施されました。担当医が静脈内利尿療法を計画している場合、ICU患者がフロセミド(40mg)とアセタゾラミド(500mg)のボーラス投与(n=15)またはフロセミド単独(40mg)投与(n=15)にランダムに割り付けられました。
尿量、フロセミドの追加使用、酸塩基パラメータ、電解質がベイズの枠組みに従って比較されました。
試験結果から明らかになったことは?
アセタゾラミドの併用は最初の6時間の尿量を増加させませんでした(平均差 -112ml、信頼区間 -742 ~ 514)。しかし、フロセミド単独と比較すると、24時間以上にわたって100%の確率でフロセミドに対するより大きな尿量反応が維持されました。
アセタゾラミドはまた、フロセミド単独と比較して、6時間後に血漿を酸性化し(pH差 -0.045、-0.081 ~ -0.008)、尿をアルカリ化しました(1.10、0.04~2.11)。
最後に、24時間以上にわたって重篤なアシドーシスや電解質異常は観察されませんでした。
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炭酸脱水酵素阻害剤であるアセタゾラミドは、フロセミドとは逆に血清を酸性化し尿をアルカリ化するため、利尿作用の他、代謝性アルカローシスの治療薬としても評価されています。さらに、ICU患者を対象とした後向きコホート研究では、アセタゾラミドの追加によりフロセミド耐性が軽減され、尿量が増える可能性があることが報告されています。しかし、ICU患者における検証は充分ではありません。
さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、アセタゾラミドの併用は利尿効果を増加させ、フロセミド誘発の代謝性アルカローシスを安全性の懸念なく相殺する可能性が示されました。
ICUにおける水分管理は重要課題の一つであることから、代謝性アルカローシスを予防しつつ体液除去が行える併用療法は有望かもしれません。
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、アセタゾラミドの併用は利尿効果を増加させ、フロセミド誘発の代謝性アルカローシスを安全性の懸念なく相殺する可能性が示された。
根拠となった試験の抄録
目的:フロセミドは集中治療室(ICU)で最も一般的に使用される利尿薬である。我々は、アセタゾラミドとフロセミドの併用が、利尿およびフロセミド誘発性代謝性アルカローシスの予防に及ぼす生理学的効果を評価することを目的とした。
材料と方法:2施設で非盲検ランダム化パイロット試験を行った。担当医が静脈内利尿療法を計画している場合、ICU患者をフロセミド(40mg)とアセタゾラミド(500mg)のボーラス投与(n=15)またはフロセミド単独(40mg)投与(n=15)にランダムに割り付けた。尿量、フロセミドの追加使用、酸塩基パラメータ、電解質がベイズの枠組みに従って比較された。
結果:アセタゾラミドの併用は最初の6時間の尿量を増加させなかった(平均差 -112ml、信頼区間 -742 ~ 514)。しかし、フロセミド単独と比較すると、24時間以上にわたって100%の確率でフロセミドに対するより大きな尿量反応を維持した。アセタゾラミドはまた、フロセミド単独と比較して、6時間後に血漿を酸性化し(pH差 -0.045、-0.081 ~ -0.008)、尿をアルカリ化した(1.10、0.04~2.11)。最後に、24時間以上にわたって重篤なアシドーシスや電解質異常は観察されなかった。
結論:アセタゾラミドの併用は利尿効果を増加させ、フロセミド誘発の代謝性アルカローシスを安全性の懸念なく相殺する可能性がある。これらの知見を検証し、臨床転帰への影響を評価するために、より大規模な試験が必要である。
登録番号:ACTRN12623000624684
登録タイトル:集中治療室における利尿薬単独療法と利尿薬併用療法のパイロット試験
キーワード:アセタゾラミド、利尿薬抵抗性、輸液管理、フロセミド、代謝性アルカローシス
引用文献
Furosemide with adjunctive acetazolamide vs furosemide only in critically ill patients: A pilot two-center randomized controlled trial
Akinori Maeda et al. PMID: 39689380 DOI: 10.1016/j.jcrc.2024.155002
J Crit Care. 2024 Dec 16:86:155002. doi: 10.1016/j.jcrc.2024.155002. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39689380/
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