長期療養を要する高齢者の骨粗鬆症に対するデノスマブの有効性は?(RCT; J Am Geriatr Soc. 2024)

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骨折リスクの高い長期療養患者に対するデノスマブの効果はどのくらい?

長期療養(long-term care, LTC)では、股関節骨折や椎体骨折の発生率が地域住民の8倍であることが報告されています。骨粗鬆症治療が広く利用可能であるにもかかわらず、LTC居住者は重要な臨床試験から除外され、臨床試験で治療を受けていません。

デノスマブ(商品名:プラリア)は比較的新しい骨粗鬆症治療のためのモノクローナル抗体療法です。

そこで今回は、LTC入居者におけるデノスマブの安全性と有効性を明らかにしようとしたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

LTCに居住する65歳以上の骨粗鬆症の男女201人を対象に、2年間の二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験が行われました。多疾病、運動障害、認知障害を有する参加者は除外されませんでした。介入として、デノスマブ60mgまたはプラセボを6ヵ月ごとに皮下投与されました。

本試験の主要評価項目は、24ヵ月後の股関節と脊椎の骨密度(BMD)の改善でした。副次的アウトカムは他の骨格部位のBMD、機能、安全性でした。

試験結果から明らかになったことは?

女性123例、男性78例を対象とし、平均±標準誤差年齢は81.5±0.6歳でした。全体として、83%と71%がそれぞれ12ヵ月と24ヵ月を完了しました。

(24ヵ月後)デノスマブ群プラセボ群
女性:脊椎BMD増加率7.41±0.93
p=0.014
2.15+0.56
女性:股関節BMD増加率4.62±0.62
p=0.007
-0.19±0.79
男性:7.91±0.96
p=0.002
1.12±1.13
男性:3.74±0.55
p=0.018
0.48±0.74

プラセボと比較して、デノスマブを投与された女性は24ヵ月後の脊椎BMD増加率(7.41±0.93 vs. 2.15+0.56、p=0.014)、股関節BMD増加率(4.62±0.62 vs. -0.19±0.79;p=0.007)、男性は脊椎(7.91±0.96 vs. 1.12±1.13;p=0.002)および股関節全体(3.74±0.55 vs. 0.48±0.74;p=0.018)でみられました。

安全性の指標に有意差はありませんでした。

コメント

新薬開発では対象患者が絞られることから、しばしば実臨床における患者への外挿が困難になります。股関節骨折や椎体骨折の発生率がより高いとされる、長期療養を必要とする骨粗鬆症患者におけるデノスマブの効果は充分に検証されていません。

さて、2年間のランダム化比較試験の結果、デノスマブは、長期療養において複数の合併症を有する骨粗鬆症高齢男女のBMDを改善する安全かつ有効な治療法でした。

ただし、検証されたのは骨密度(bone mineral density, BMD)であり、実際に骨折予防につながっているのかは不明です。更なる検証が求められます。

続報に期待。

smiling nurse and patient in room

✅まとめ✅2年間のランダム化比較試験の結果、デノスマブは、長期療養において複数の合併症を有する骨粗鬆症高齢男女のBMDを改善する安全かつ有効な治療法であった。骨折予防効果について更なる検証が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:長期介護(long-term care, LTC)では、股関節骨折や椎体骨折の発生率が地域住民の8倍である。骨粗鬆症治療が広く利用可能であるにもかかわらず、LTC居住者は重要な臨床試験から除外され、治療を受けていない。デノスマブ(商品名:プラリア)は比較的新しい骨粗鬆症治療のためのモノクローナル抗体療法である。ランダム化試験により、LTC入居者におけるデノスマブの安全性と有効性を明らかにしようとした。

方法:LTCに居住する65歳以上の骨粗鬆症の男女201人を対象に、2年間の二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を行った。多疾病、運動障害、認知障害を有する参加者は除外しなかった。介入はデノスマブ60mgを6ヵ月ごとに皮下投与、またはプラセボとした。
主要評価項目は、24ヵ月後の股関節と脊椎の骨密度(BMD)の改善であった。副次的アウトカムは他の骨格部位のBMD、機能、安全性であった。

結果:女性123例、男性78例を対象とし、平均±標準誤差年齢は81.5±0.6歳であった。全体として、83%と71%がそれぞれ12ヵ月と24ヵ月を完了した。プラセボと比較して、デノスマブを投与された女性は24ヵ月後の脊椎BMD増加率(7.41±0.93 vs. 2.15+0.56、p=0.014)、股関節BMD増加率(4.62±0.62 vs. -0.19±0.79;p=0.007)、男性は脊椎(7.91±0.96 vs. 1.12±1.13;p=0.002)および股関節全体(3.74±0.55 vs. 0.48±0.74;p=0.018)であった。安全性の指標に有意差はなかった。

結論:デノスマブは、LTCにおいて複数の合併症を有する骨粗鬆症高齢男女のBMDを改善する安全かつ有効な治療法であった。

キーワード:骨密度;デノスマブ;長期療養;骨粗鬆症

引用文献

Denosumab for osteoporosis in older adults in long-term care: A randomized trial
Susan L Greenspan et al. PMID: 39523676 DOI: 10.1111/jgs.19260
J Am Geriatr Soc. 2024 Nov 10. doi: 10.1111/jgs.19260. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39523676/

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