心室頻拍に対するカテーテルアブレーション vs. 抗不整脈薬(RCT; VANISH2試験; N Engl J Med. 2024)

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心室頻拍に対する治療比較

心室頻拍と虚血性心筋症の患者は有害転帰のリスクが高いことが報告されています。抗不整脈薬で心室頻拍が抑制されない場合、カテーテルアブレーションが一般的に用いられますが、カテーテルアブレーションが心室頻拍患者の第一選択治療として抗不整脈薬よりも有効かどうかは不明です。

そこで今回は、心筋梗塞の既往があり、臨床的に有意な心室頻拍(心室頻拍発作、適切な植え込み型除細動器[ICD]ショックまたは抗頻拍ペーシングの施行、緊急治療による持続的な心室頻拍)を有する患者を対象に、抗不整脈薬治療を受ける群とカテーテルアブレーションを受ける群に1:1の割合でランダムに割り付け、患者転帰を比較した国際共同ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

全例にICDが装着されていました。カテーテルアブレーションはランダム化後14日以内に施行され、抗不整脈薬物療法はあらかじめ規定された基準に従ってソタロールまたはアミオダロンが投与されました。

本試験の一次エンドポイントは、追跡期間中のあらゆる原因による死亡、またはランダム化後14日以上経過してからの心室頻拍発作、適切なICDショック、または内科的介入により治療された持続性心室頻拍の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

416例の患者が中央値4.3年間追跡されました。

カテーテルアブレーション群薬物療法群ハザード比
(95%信頼区間)
一次エンドポイント
全死亡、またはランダム化後14日以上経過してからの心室頻拍発作、適切なICDショック、または内科的介入により治療された持続性心室頻拍の複合
203例中103例(50.7%)213例中129例(60.6%)ハザード比 0.75
0.58~0.97
P=0.03
死亡45例(22.2%)54例(25.4%)ハザード比 0.84
(0.56~1.24)
14日後の心室頻拍発作44例(21.7%)50例(23.5%)でハザード比 0.95
(0.63~1.42)
14日後の適切なICDショック60例(29.6%)81例(38.0%)ハザード比 0.75
(0.53~1.04)
14日後のICDの検出限界以下の持続性心室頻拍の治療9例(4.4%)35例(16.4%)ハザード比 0.26
(0.13~0.55)

一次エンドポイントイベントはカテーテルアブレーション群203例中103例(50.7%)、薬物療法群213例中129例(60.6%)で発生しました(ハザード比 0.75、95%信頼区間 0.58~0.97;P=0.03)。

カテーテルアブレーション群では、術後30日以内の有害事象は死亡2例(1.0%)、非致死的有害事象23例(11.3%)でした。

薬物治療に割り付けられた患者では、抗不整脈薬治療に起因する有害事象として、肺毒性による死亡が1例(0.5%)、非致死的有害事象が46例(21.6%)でした。

コメント

心室頻拍(VT)は、心拍数が100/分以上となる場合を指します。拍動が遅い場合は「遅いVT」と呼ばれ、通常は良性で治療を必要としません。一方、血行動態障害による症状を有する場合、有意な心疾患(心筋梗塞や心筋症)や電解質異常、薬物の影響が原因となることが知られています。特に重篤な状態として、QT延長症候群では特殊なVTであるトルサード・ド・ポアントが関連し、死亡をはじめとした転帰を引き起こします。いずれの場合も、VTを進行させないことが重要であり、薬物治療やカテーテルアブレーションなどが選択されます。しかし、いずれの治療方法が優れているのかについては充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の結果、虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、カテーテルアブレーションという初期戦略は、抗不整脈薬治療よりも複合主要エンドポイントイベントのリスクを低下させました。

ただし、複合アウトカムの構成要素をみていくと、ICDの検出限界以下の持続性心室頻拍(遅いVT)の治療介入のみが著しく低いことがわかります。

遅いVTは心拍数が比較的低いため、血行動態が安定している場合が多く、症状が軽微または無症状であることがあります。ただし、場合によっては動悸や疲労感などの症状が現れることもあります。また、ICDがVTを認識しない場合でも、VTが持続すれば心臓の効率が低下し、患者に慢性的な負担を与える可能性があります。これに対しては、薬物療法(例:β遮断薬や抗不整脈薬)やICDの検出閾値の調整が検討される場合があります。

したがって、本試験結果のみでカテーテルアブレーションが優れていると結論付けることはできません。再現性の確認も含めて、より長期的なフォローアップが求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、カテーテルアブレーションという初期戦略は、抗不整脈薬治療よりも複合主要エンドポイントイベントのリスクを低下させた。複合アウトカムであることから結果の解釈に注意を要する。

根拠となった試験の抄録

背景:心室頻拍と虚血性心筋症の患者は有害転帰のリスクが高い。抗不整脈薬で心室頻拍が抑制されない場合、カテーテルアブレーションが一般的に用いられる。カテーテルアブレーションが心室頻拍患者の第一選択治療として抗不整脈薬よりも有効かどうかは不明である。

方法:国際的な試験において、心筋梗塞の既往があり、臨床的に有意な心室頻拍(心室頻拍発作、適切な植え込み型除細動器[ICD]ショックまたは抗頻拍ペーシングの施行、緊急治療による持続的な心室頻拍)を有する患者を、抗不整脈薬治療を受ける群とカテーテルアブレーションを受ける群に1:1の割合でランダムに割り付けた。全例にICDが装着されていた。カテーテルアブレーションはランダム化後14日以内に施行され、抗不整脈薬物療法はあらかじめ規定された基準に従ってソタロールまたはアミオダロンが投与された。
一次エンドポイントは、追跡期間中のあらゆる原因による死亡、またはランダム化後14日以上経過してからの心室頻拍発作、適切なICDショック、または内科的介入により治療された持続性心室頻拍の複合とした。

結果:416例の患者が中央値4.3年間追跡された。一次エンドポイントイベントはカテーテルアブレーション群203例中103例(50.7%)、薬物療法群213例中129例(60.6%)で発生した(ハザード比 0.75、95%信頼区間 0.58~0.97;P=0.03)。カテーテルアブレーション群では、術後30日以内の有害事象は死亡2例(1.0%)、非致死的有害事象23例(11.3%)であった。薬物治療に割り付けられた患者では、抗不整脈薬治療に起因する有害事象として、肺毒性による死亡が1例(0.5%)、非致死的有害事象が46例(21.6%)であった。

結論:虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、カテーテルアブレーションという初期戦略は、抗不整脈薬治療よりも複合主要エンドポイントイベントのリスクを低下させた。

資金提供:カナダ保健研究機構 他

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT02830360

引用文献

Catheter Ablation or Antiarrhythmic Drugs for Ventricular Tachycardia
John L Sapp et al. PMID: 39555820 DOI: 10.1056/NEJMoa2409501
N Engl J Med. 2024 Nov 16. doi: 10.1056/NEJMoa2409501. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39555820/

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