非ステロイド性抗炎症薬の使用と脳症発症との関連性はどのくらい?(データベース研究; Pharmazie. 2024)

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脳症と関連するNSAIDsはどれか?

脳症は、インフルエンザやヘルペスを含む様々な一般的感染症の最も重篤な合併症であり、しばしば死亡または重篤な神経学的障害をもたらします。

ウイルス性脳症の危険因子には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用が含まれますが、NSAIDs関連脳症に関する研究は限られています。

そこで今回は、NSAIDs関連脳症の特徴を調べることを目的としたデータベース研究の結果をご紹介します。

米国食品医薬品局有害事象報告システム( the United States Food and Drug Administration Adverse Event Reporting System, FAERS)および独立行政法人医薬品医療機器総合機構が公表している自発的な有害事象(AE)に関する報告が含まれる日本の有害事象報告(Japanese Adverse Drug Event Report, JADER)データベースのデータを用い、NSAID関連脳症の発生率について調査しました。これらのデータベースを用いて、報告されたオッズ比に基づきAEを検出しました。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が関与する疑わしい薬剤、併用薬剤、および薬物相互作用を分離することにより、脳症の病態とNSAIDsのAEとの関係が調査されました。

試験結果から明らかになったことは?

FAERSデータベースではロキソプロフェンエトドラクに、JADERデータベースではロキソプロフェンに有意な脳症シグナルが検出されました。

JADERデータベースでは、ロキソプロフェン投与群では70~79歳80歳以上インフルエンザウイルス感染群ヘルペスウイルス感染群で有意な脳症シグナルが検出されました。

ヘルペスウイルス感染症患者における有意な脳症シグナルは、80歳以上およびロキソプロフェン投与群で検出されました。

脳症発症へのロキソプロフェンの関与については、JADERデータベースはロキソプロフェンが疑われる薬剤としてリストアップされましたが、併用薬物相互作用は示されませんでした。

コメント

ウイルス感染症患者における解熱鎮痛薬であるNSAIDs使用と脳症発症リスクとの関連性については充分に検証されていません。

さて、米国と日本のデータベース研究の結果、ロキソプロフェンとエトドラクがウイルス性脳症に関連する可能性が示唆されました。特に高齢のウイルス感染者にロキソプロフェンを使用する際には慎重を期すことが推奨される結果でした。

ただし、本研究はシグナル検出をベースとした仮説生成的な結果を示しているにすぎません。再現性を含めて更なる検証が求められます。

とはいえ、現時点においてアセトアミノフェン(商品名:カロナール、タイレノールなど)よりもNSAIDsを優先して使用するケースはほぼないでしょう。アセトアミノフェンを使用できないときには、安全性データが他剤よりも比較的多いイブプロフェンの使用が優先されます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 米国と日本のデータベース研究の結果、ロキソプロフェンとエトドラクがウイルス性脳症に関連する可能性を示唆している。従って、高齢のウイルス感染者にロキソプロフェンを使用する際には慎重を期すことが推奨される。

根拠となった試験の抄録

背景:脳症は、インフルエンザやヘルペスを含む様々な一般的感染症の最も重篤な合併症であり、しばしば死亡または重篤な神経学的障害をもたらす。ウイルス性脳症の危険因子には非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が含まれるが、NSAID関連脳症に関する研究は限られている。本研究では、NSAID関連脳症の特徴を調べることを目的とした。

方法:米国食品医薬品局有害事象報告システム( the United States Food and Drug Administration Adverse Event Reporting System, FAERS)および独立行政法人医薬品医療機器総合機構が公表している自発的な有害事象(AE)に関する報告が含まれる日本の有害事象報告(Japanese Adverse Drug Event Report, JADER)データベースのデータを用いて、NSAID関連脳症の発生率を調査した。これらのデータベースを用いて、報告されたオッズ比に基づいてAEを検出した。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が関与する疑わしい薬剤、併用薬剤、および薬物相互作用を分離することにより、脳症の病態とNSAIDsのAEとの関係を調査した。

結果:FAERSデータベースではロキソプロフェンエトドラクに、JADERデータベースではロキソプロフェンに有意な脳症シグナルが検出された。JADERデータベースでは、ロキソプロフェン投与群では70~79歳、80歳以上、インフルエンザウイルス感染群、ヘルペスウイルス感染群で有意な脳症シグナルが検出された。ヘルペスウイルス感染症患者における有意な脳症シグナルは、80歳以上およびロキソプロフェン投与群で検出された。脳症発症へのロキソプロフェンの関与については、JADERデータベースはロキソプロフェンを疑われる薬剤としてリストアップしたが、併用薬物相互作用は示さなかった。

結論:今回の所見は、ロキソプロフェンとエトドラクがウイルス性脳症に関連する可能性を示唆している。従って、高齢のウイルス感染者にロキソプロフェンを使用する際には慎重を期すことが推奨される。

引用文献

Association of non-steroidal anti-inflammatory drug use with encephalopathy development: An analysis using the United States Food and Drug Administration Adverse Event Reporting System (FAERS) and Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) databases
K Kawadae et al. PMID: 38877682 DOI: 10.1691/ph.2024.4506
Pharmazie. 2024 Jun 1;79(6):118-123. doi: 10.1691/ph.2024.4506.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38877682/

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