内視鏡的止血成功後の高リスク消化性潰瘍再出血予防におけるPPI静脈内投与 vs. ボノプラザン(RCT; Gastroenterology. 2024)

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出血リスクの高い消化性潰瘍患者における再出血予防に有効なのは?

高リスク消化性潰瘍(PU)の止血後の再出血を予防するために、高用量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)療法が推奨されています。

ボノプラザンは様々な酸関連疾患においてPPIに劣らないことが証明されていますが、高リスクPU患者における再出血予防に対する有効性比較は充分に実施されていません。

そこで今回は、止血後の高リスクPU再出血予防に対するボノプラザンとPPIの有効性を比較することを目的に実施された多施設共同ランダム化非劣性試験の結果をご紹介します。

本試験は6施設で実施されました。内視鏡前治療と内視鏡治療は標準プロトコールに従って行われました。止血成功後、高リスクPU出血症例(Forrest class Ia/Ib、IIa/IIb)がボノプラザン投与群(20mgを1日2回3日間、その後20mgを1日1回28日間)と高用量PPI投与群(pantoprazole点滴静注8mg/hを3日間、その後オメプラゾール20mgを1日2回28日間)に1:1でランダムに割り付けられました。

本試験の主要アウトカムは30日間の再出血率でした。副次的アウトカムは、3日および7日再出血率、全死因死亡率および出血関連死亡率、救援療法実施率、輸血、入院期間、安全性などでした。

試験結果から明らかになったことは?

194例のうち、ベースラインの特徴、出血の重症度、潰瘍の病期は2群間で同等でした。

ボノプラザン群PPI群リスク差
(95%CI)
30日間の再出血率7.1%(98例中7例)10.4%(96例中10例)リスク差 -3.3%
-11.2 ~ 4.7
非劣性P<0.001

30日間の再出血率は、ボノプラザン群で7.1%(98例中7例)、PPI群で10.4%(96例中10例)であり、ボノプラザン群のPPI群に対する非劣性(10%以内のマージン)が確認されました(リスク差 -3.3%、95%信頼区間 -11.2 ~ 4.7;P<0.001)。

ボノプラザン群における3日後および7日後の再出血率は、PPIに対して非劣性を維持していました(Farrington and Manning検定によるP<0.001)。すべての副次的転帰も2群間で同等でした。

コメント

上部消化管出血は、日常的にしばしば遭遇する病態であり、内視鏡的止血術が有効であることが知られています。内視鏡技術の進歩により、多くの症例で止血可能な手技となりましたが、再出血例、止血困難例も存在し、IVR(interventional radiology)や外科的治療が必要になる症例も報告されています。

内視鏡的に止血できない場合の発生率は、具体的な原因や病状によって異なりますが、全体の10~20%程度であることが報告されており、内視鏡的治療が困難とされる症例に該当することが多いです。このため、代替療法の立案が求められています。

さて、ランダム化比較試験の結果、高リスクの消化性潰瘍出血患者において、30日後の再出血を予防するボノプラザンの有効性は、静脈内PPIに対して非劣性であることが示されました。

症例数、アウトカム発生数が限られているためか、非劣性解析のみが実施されています。区間推定値幅は1をまたいでいることから優越性が示される可能性は限りなく低いと考えられます。また、他の国や地域でも同様の結果が示されるのか、再現性が示されるのかも含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。 

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、高リスクの消化性潰瘍出血患者において、30日後の再出血を予防するボノプラザンの有効性は、静脈内PPIに対して非劣性であった。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:高リスク消化性潰瘍(PU)の止血後の再出血を予防するために、高用量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)療法が推奨されている。ボノプラザンは様々な酸関連疾患においてPPIに劣らないことが証明されている。本研究は、止血後の高リスクPU再出血予防に対するボノプラザンとPPIの有効性を比較することを目的とした。

方法:多施設共同ランダム化非劣性試験を6施設で実施した。内視鏡前治療と内視鏡治療は標準プロトコールに従って行われた。止血成功後、高リスクPU出血症例(Forrest class Ia/Ib、IIa/IIb)をボノプラザン投与群(20mgを1日2回3日間、その後20mgを1日1回28日間)と高用量PPI投与群(pantoprazole点滴静注8mg/hを3日間、その後オメプラゾール20mgを1日2回28日間)に1:1でランダムに割り付けた。
主要アウトカムは30日間の再出血率であった。副次的アウトカムは、3日および7日再出血率、全死因死亡率および出血関連死亡率、救援療法実施率、輸血、入院期間、安全性などであった。

結果:194例のうち、ベースラインの特徴、出血の重症度、潰瘍の病期は2群間で同等であった。30日間の再出血率は、ボノプラザン群で7.1%(98例中7例)、PPI群で10.4%(96例中10例)であった。ボノプラザン群のPPI群に対する非劣性(10%以内のマージン)が確認された(リスク差 -3.3%、95%信頼区間 -11.2 ~ 4.7;P<0.001)。ボノプラザン群における3日後および7日後の再出血率は、PPIに対して非劣性を維持した(Farrington and Manning検定によるP<0.001)。すべての副次的転帰も2群間で同等であった。

結論:高リスクの消化性潰瘍出血患者において、30日後の再出血を予防するボノプラザンの有効性は、静脈内PPIに対して非劣性であった(ClinicalTrials.gov番号:NCT05005910)。

キーワード:消化性潰瘍、プロトンポンプ阻害薬、上部消化管出血、ボノプラザン

引用文献

Comparison of Vonoprazan Versus Intravenous Proton Pump Inhibitor for Prevention of High-Risk Peptic Ulcers Rebleeding After Successful Endoscopic Hemostasis: A Multicenter Randomized Noninferiority Trial
Tanawat Geeratragool et al. PMID: 38582271 DOI: 10.1053/j.gastro.2024.03.036
Gastroenterology. 2024 Apr 5:S0016-5085(24)00362-7. doi: 10.1053/j.gastro.2024.03.036. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38582271/

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