マルチビタミン使用と死亡リスクとの関連性は?(コホート研究3件の併合解析; JAMA Netw Open. 2024)

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マルチビタミン服用と死亡リスクとの関連性を評価

米国の成人の3人に1人がマルチビタミン(MV)を使用しており、その主な動機は疾病予防であることが報告されています。しかし、MVがヒトの予後に及ぼす影響については充分に検証されていません。

2022年に米国の予防サービス専門委員会は、ランダム化臨床試験から得られたMV補給と死亡率に関するデータを検討し、追跡期間や外部妥当性が限られていることもあり、有益性や有害性を決定するための証拠は不十分であるとしています。

そこで今回は、MVの使用と死亡リスクとの関連を、健康的な生活習慣による交絡、および健康状態の不良な人がMVの使用を開始するという逆の因果関係を考慮して推定することを目的に実施されたコホート研究の結果をご報告します。

このコホート研究では、ベースラインのMV使用(1993年から2001年にかけて評価)、フォローアップのMV使用(1998年から2004年にかけて評価)、最長27年までの追跡期間、潜在的交絡因子の広範な特徴付けを行った米国の3件の前向きコホート研究のデータが使用されました。

本研究では、National Institutes of Health-AARP Diet and Health Study(327,732人)、Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial(42,732人)、Agricultural Health Study(19,660人)に参加した、がんや他の慢性疾患の既往のない成人が対象となりました。データの解析期間は2022年6月~2024年4月でした。

本研究の曝露は、自己申告によるMVの使用でした。

本研究の主要アウトカムは死亡率でした。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%CIが推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

参加者390,124人(年齢中央値 61.5[IQR 56.7〜66.0]歳;男性216,202人[55.4%])のうち、追跡期間中に死亡したのは164,762人でした;参加者159,692人(40.9%)は喫煙経験がなく、参加者157,319人(40.3%)は大卒でした。

毎日のマルチビタミン(MV)使用者では、女性が49.3%、大卒が42.0%であったのに対し、非使用者ではそれぞれ39.3%、37.9%でした。一方、日常的にMVを使用している人の11.0%(非使用者の13.0%)が現在喫煙者でした。

(追跡期間:最長27年まで)ハザード比
(95%CI)
追跡期間の前半多変量調整HR 1.04
1.02〜1.07
追跡期間の後半多変量調整HR 1.04
0.99〜1.08

MVの使用は、追跡期間の前半(多変量調整HR 1.04;95%CI 1.02〜1.07)または後半(多変量調整HR、1.04;95%CI 0.99〜1.08)において、全死因死亡リスクの低下とは関連していませんでした。HRは主要死因および時間変動解析においても同様でした。

コメント

マルチビタミンの長期的な影響については充分に検証されていません。

さて、米国の成人を対象としたこのコホート研究において、マルチビタミンの使用は死亡率と関連していませんでした。追跡期間の前半で、死亡リスクに対する多変量調整HR 1.04(1.02〜1.07)と、リスクがやや増加している結果が示されましたが、本結果をもってマルチビタミンが”危険”出あるとは言えません。あくまでも傾向が示されたに過ぎませんし、追跡期間の後半でリスク増加が示されていないことの説明はできません。また、マルチビタミンの具体的な成分について、層別解析されていないことから、どの因子が大きく影響しているのかについては不明です。

したがって、現時点におけるマルチビタミンの使用を推すことも否定することもできません。更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 米国の成人を対象としたこのコホート研究において、マルチビタミンの使用は死亡率と関連していなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:米国の成人の3人に1人がマルチビタミン(MV)を使用しており、その主な動機は疾病予防である。2022年に米国の予防サービス専門委員会は、ランダム化臨床試験から得られたMV補給と死亡率に関するデータを検討し、追跡期間や外部妥当性が限られていることもあり、有益性や有害性を決定するための証拠は不十分であるとした。

目的:MVの使用と死亡リスクとの関連を、健康的な生活習慣による交絡、および健康状態の不良な人がMVの使用を開始するという逆の因果関係を考慮して推定すること。

試験デザイン、設定、参加者:このコホート研究では、ベースラインのMV使用(1993年から2001年にかけて評価)、フォローアップのMV使用(1998年から2004年にかけて評価)、最長27年までの追跡期間、潜在的交絡因子の広範な特徴付けを行った米国の3件の前向きコホート研究のデータを使用した。参加者は、National Institutes of Health-AARP Diet and Health Study(327,732人)、Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial(42,732人)、Agricultural Health Study(19,660人)に参加した、がんや他の慢性疾患の既往のない成人であった。データの解析期間は2022年6月~2024年4月。

曝露:自己申告によるMVの使用。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは死亡率とした。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%CIを推定した。

結果:参加者390,124人(年齢中央値 61.5[IQR 56.7〜66.0]歳;男性216,202人[55.4%])のうち、追跡期間中に死亡したのは164,762人であった;参加者159,692人(40.9%)は喫煙経験がなく、参加者157,319人(40.3%)は大卒であった。毎日のMV使用者では、女性が49.3%、大卒が42.0%であったのに対し、非使用者ではそれぞれ39.3%、37.9%であった。一方、日常的にMVを使用している人の11.0%(非使用者の13.0%)が現在喫煙者であった。MVの使用は、追跡期間の前半(多変量調整HR 1.04;95%CI 1.02〜1.07)または後半(多変量調整HR、1.04;95%CI 0.99〜1.08)において、全死因死亡リスクの低下とは関連していなかった。HRは主要死因および時間変動解析においても同様であった。

結論と関連性:米国の成人を対象としたこのコホート研究において、マルチビタミンの使用は死亡率と関連していなかった。それでもなお、多くの米国成人が健康の維持または改善のためにマルチビタミンを使用していると報告している。

引用文献

Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts
Erikka Loftfield et al. PMID: 38922615 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.18729
JAMA Netw Open. 2024 Jun 3;7(6):e2418729. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.18729.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38922615/

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