冠動脈バイパス術後の抗血小板療法として優れているものはどれか?(DACAB試験の5年追跡結果; BMJ. 2024)

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チカグレロル+アスピリン vs. 各単剤療法

冠動脈バイパス術後の臨床転帰に対するさまざまな抗血小板戦略について、いずれかの効果が優れているのかについては充分に評価されていません。

そこで今回は、冠動脈バイパス術後の異なる抗血小板療法戦略(DACAB)試験を対象に、5年間の追跡調査の結果についてご紹介します。

DACAB試験は、中国の3次病院である6施設で実施されました。試験参加者の登録は2014年7月~2015年11月、5年間の追跡終了は2019年8月~2021年6月でした。

試験参加者は、選択的冠動脈バイパス術を受け、DACAB試験を完了した18~80歳の患者500例(女性91例(18.2%)を含む)でした。

患者は術後1年間、チカグレロル90mg 1日2回+アスピリン100mg 1日1回(抗血小板2剤併用療法:n=168)、チカグレロル単剤90mg 1日2回(n=166)、アスピリン単剤100mg 1日1回(n=166)に1:1:1でランダムに割り付けられました。1年目以降は担当医による標準治療に従って抗血小板療法が処方されました。

本試験の主要アウトカムは主要有害心血管イベント(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)であり、intention-to-treat原則を用いて解析されました。

治療群間のリスク比較にはTime-to-event解析が用いられました。複数の事後感度分析により所見の頑健性が検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

500例中477例(95.4%)で5年後の主要有害心血管イベントの追跡が完了しました。

二重抗血小板療法群チカグレロル単剤療法群アスピリン単剤療法群
5年後の主要有害心血管イベント39例54例55例

148例に主要有害心血管イベントが認められ、その内訳は二重抗血小板療法群39例、チカグレロル単剤群54例、アスピリン単剤群55例でした。

二重抗血小板療法群アスピリン単剤療法群ハザード比
(95%信頼区間)
5年後の主要有害心血管イベントのリスク22.6%29.9%ハザード比 0.65
0.43~0.99
P=0.04
二重抗血小板療法群チカグレロル単剤療法群ハザード比
(95%信頼区間)
5年後の主要有害心血管イベントのリスク22.6%32.9%ハザード比 0.66
0.44~1.00
P=0.05

5年後の主要有害心血管イベントのリスクは、二重抗血小板療法がアスピリン単剤療法に対して有意に低く(22.6% vs. 29.9%;ハザード比 0.65、95%信頼区間 0.43~0.99;P=0.04)、チカグレロル単剤療法に対しても有意に低いことが示されました(22.6% vs. 32.9%;0.66、0.44~1.00;P=0.05)。

結果はすべての感度分析で一貫していました。

コメント

多数の複雑な冠動脈病変を有する患者に対しては、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention, PCI)よりも冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting, CABG)が選択されます。PCI後の抗血小板療法については、多くの臨床試験報告がありますが、CABG後の抗血小板療法の効果比較に関する報告は限られています。

さて、DACAB試験の5年追跡調査の結果、術後1年間のチカグレロルベース二重抗血小板療法は、アスピリン単剤療法またはチカグレロル単剤療法と比較して、冠動脈バイパス術後5年間の主要有害心血管イベントのリスクを持続的に減少させました。CABG後にチカグレロルベースの二重抗血小板療法を実施する場合は、1年間実施した方が良さそうです。

ただし、他のP2Y12受容体拮抗薬との比較はなされていません。そもそもチカグレロルは、他の抗血小板薬が使用できない場合の治療選択肢であることも抑えておきたいところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ DACAB試験の5年追跡調査の結果、術後1年間のチカグレロルベース二重抗血小板療法は、アスピリン単剤療法またはチカグレロル単剤療法と比較して、冠動脈バイパス術後5年間の主要有害心血管イベントのリスクを持続的に減少させた。

根拠となった試験の抄録

目的:冠動脈バイパス術後の臨床転帰に対するさまざまな抗血小板戦略の効果を評価すること。

試験デザイン:冠動脈バイパス術後の異なる抗血小板療法戦略(DACAB)試験の5年間の追跡

設定:中国の3次病院6施設、登録は2014年7月~2015年11月、5年間の追跡終了は2019年8月~2021年6月。

試験参加者:選択的冠動脈バイパス術を受け、DACAB試験を完了した18~80歳の患者500例(女性91例(18.2%)を含む)。

介入:患者は術後1年間、チカグレロル90mg1日2回+アスピリン100mg1日1回(抗血小板2剤併用療法:n=168)、チカグレロル単剤90mg1日2回(n=166)、アスピリン単剤100mg1日1回(n=166)に1:1:1でランダムに割り付けられた。1年目以降は担当医による標準治療に従って抗血小板療法が処方された。

主要評価項目:主要アウトカムは主要有害心血管イベント(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)とし、intention-to-treat原則を用いて解析した。治療群間のリスク比較にはTime-to-event解析が用いられた。複数の事後感度分析により所見の頑健性が検討された。

結果:500例中477例(95.4%)で5年後の主要有害心血管イベントの追跡が完了した。148例に主要有害心血管イベントが認められ、その内訳は二重抗血小板療法群39例、チカグレロル単剤群54例、アスピリン単剤群55例であった。5年後の主要有害心血管イベントのリスクは、二重抗血小板療法がアスピリン単剤療法に対して有意に低く(22.6% vs. 29.9%;ハザード比 0.65、95%信頼区間 0.43~0.99;P=0.04)、チカグレロル単剤療法に対しても有意に低かった(22.6% vs. 32.9%;0.66、0.44~1.00;P=0.05)。結果はすべての感度分析で一貫していた。

結論:術後1年間のチカグレロルベース二重抗血小板療法は、アスピリン単剤療法またはチカグレロル単剤療法と比較して、冠動脈バイパス術後5年間の主要有害心血管イベントのリスクを減少させた。

試験登録:NCT03987373ClinicalTrials.gov NCT03987373

引用文献

Antiplatelet therapy after coronary artery bypass surgery: five year follow-up of randomised DACAB trial
Yunpeng Zhu et al.
BMJ. 2024 Jun 11:385:e075707. doi: 10.1136/bmj-2023-075707.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38862179/

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