重症および手術患者における血圧の管理目標値は高い方が良いのか?低い方が良いのか?
低血圧は、重症患者や周術期の患者における有害な転帰と関連しています。しかし、これらの仮定は観察研究によって支持されていることから、更なる検証が求められます。
そこで今回は、死亡率に対する血圧目標値の低値と高値の影響を比較することも目的に実施されたランダム化比較試験のメタ解析の結果をご紹介します。
本解析では、PubMed、Cochrane、Scholarが開始時から2024年2月10日まで検索されました。解析対象は、重症患者および周術期の管理における血圧目標の低値と高値を比較したランダム化試験でした。
主要アウトカムは、入手可能な最長追跡時点での全死因死亡率でした。
試験結果から明らかになったことは?
検索文字列により同定された2,940件の研究のうち、28件(重症患者12件、周術期16件)、合計15,672例が組み入れられました。
低い血圧標的群 | 高い血圧標的群 | 相対リスク (95%CI) | |
死亡率 | 1,019/7,679例 [13.3%] | 1,103/7,649例 [14.4%] | 相対リスク 0.93 (0.87〜0.99) p=0.03;I2=0% |
低い血圧標的群の患者は死亡率が低いことが示されました(23件の研究:1,019/7,679例[13.3%] vs. 1,103/7,649例[14.4%];相対リスク 0.93;95%CI 0.87〜0.99;p=0.03;I2=0%)。
これは、ベイズアプローチによる死亡率増加の可能性が97.4%に相当。これらの知見は、主にICUで実施され、治療が24時間以上継続した研究によってもたらされました。しかし、結果の大きさと方向性は、バイアスリスクの低い研究に限定した分析を含む感度分析の大部分でも同様でした。また、低い血圧標的群では心房細動の発生率が低く、輸血を必要とする患者が少ないことも観察されました。その他の副次的アウトカムには差はみられませんでした。
コメント
重症および手術患者における最適な血圧の管理目標値については、結論が得られていません。
さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果、血圧目標値が高い場合よりも低い場合の方が、死亡率、心房細動、輸血の必要性が減少しました。
結果の異質性は低いものの、組み入れられたのは主にICUで実施され治療が24時間以上継続した研究でした。出版バイアスが生じている可能性は否定できませんが、対象が重症および手術患者であるため、当然の結果であるとも受け取れます。
具体的にはどのくらいの血圧なのか?も含めて、まだまだ検証が求められる分野であると考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、血圧目標値が高いよりも低い場合の方が、死亡率、心房細動、輸血の必要性が減少した。
根拠となった試験の抄録
目的:低血圧は、重症患者や周術期の患者における有害な転帰と関連している。しかし、これらの仮定は観察研究によって支持されている。このランダム化比較試験のメタ解析の目的は、死亡率に対する血圧目標値の低値と高値の影響を比較することである。
データ源:PubMed、Cochrane、Scholarを開始時から2024年2月10日まで検索した。
研究選択:重症患者および周術期の管理における血圧目標の低値と高値を比較したランダム化試験。
データ抽出:主要アウトカムは、入手可能な最長追跡時点での全死因死亡率とした。このレビューはProspective International Register of Systematic Reviews(CRD42023452928)に登録された。
データ統合:検索文字列により同定された2,940件の研究のうち、28件(重症患者12件、周術期16件)、合計15,672例が組み入れられた。低血圧標的群の患者は死亡率が低かった(23件の研究が含まれる:1,019/7,679例[13.3%] vs. 1,103/7,649例[14.4%];相対リスク 0.93;95%CI 0.87〜0.99;p=0.03;I2=0%)。これは、ベイズアプローチによる死亡率増加の可能性が97.4%に相当する。これらの知見は、主にICUで実施され、治療が24時間以上継続した研究によってもたらされた。しかし、結果の大きさと方向性は、バイアスリスクの低い研究に限定した分析を含む感度分析の大部分でも同様であった。また、低圧対象群では心房細動の発生率が低く、輸血を必要とする患者が少ないことも観察された。その他の副次的アウトカムには差はみられなかった。
結論:プールされたランダム化比較試験のエビデンスに基づくと、血圧目標値が高いよりも低い場合の方が、死亡率、心房細動、輸血の必要性が減少する。より低い血圧目標が有益である可能性はあるが、現在も不確かである。しかし、今回のメタ解析はこれまでの知見や推奨を裏付けるものではない。これらの結果は将来のガイドラインに情報を提供し、保護血行動態の概念の研究を促進するかもしれない。
引用文献
Low Versus High Blood Pressure Targets in Critically Ill and Surgical Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Filippo D’Amico et al. PMID: 38656245 DOI: 10.1097/CCM.0000000000006314
Crit Care Med. 2024 Apr 24. doi: 10.1097/CCM.0000000000006314. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38656245/
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