未熟児慢性肺疾患予防のためのアジスロマイシン療法は有効ですか?(DB-RCT; AZTEC試験; Lancet Respir Med. 2024)

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早産児の未熟児慢性肺疾患に対するアジスロマイシンの効果は?

マクロライド系抗生物質が妊娠30週未満で出生するリスクの高い早産児の未熟児慢性肺疾患(CLD, 新生児慢性肺疾患とも呼ばれる)の発症率を低下させるかどうかについては、系統的レビューで矛盾するエビデンスが報告されており、肺ウレアプラズマ属(Ureaplasma spp.)がコロニー形成された早産児もその対象です。充分な検出力を有する試験が不足しているため、更なる検証が求められています。

マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンが早産児において生理学的に定義された中等度または重度のCLDを発症することなく生存率を改善するかどうかを評価することを目的に実施されたランダム化比較試験(AZTEC試験)の結果をご紹介します。

AZTEC試験は多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験であり、英国の28施設の三次新生児集中治療室で実施されました。対象は、妊娠30週未満で出生し、出生後72時間以内に非侵襲的(持続的気道陽圧または加湿高流量鼻カニューレ療法)または侵襲的(気管内チューブによる)呼吸補助を2時間以上受けた乳児でした。

対象となった乳児は、ランダムに並べ替えられた4つのブロックを用いて、アジスロマイシンを1日あたり20mg/kgを3日間、その後10mg/kgを7日間静脈内投与する群とプラセボを投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。

割り付けは施設と出生時の妊娠週数(28週未満と28週以上)で層別化されました。アジスロマイシンとプラセボのバイアルは、臨床医、両親、研究チームのマスキングを確実にするため、タンパーエビデント(tamper-evident)カスタムダンボールカートン*に封入されました。
*不正開封の跡がすぐ分かるようカスタムされたダンボール箱

本試験の主要アウトカムは、生理的に定義された中等度または重度のCLDを月経後36週時点で発症していない生存期間でした。転帰と安全性はintention-to-treatベースで解析されました(ランダムに割り付けられた乳児全員、ランダム化後の事象にかかわらず)。

試験結果から明らかになったことは?

乳児は2019年10月9日から2022年3月22日の間に募集されました。1,505例の適格乳児のうち799例(53.1%)がランダム割付けを受け、3例の乳児がデータ使用の同意を含めて取り下げられ、796例が解析の対象となりました。

介入群
(アジスロマイシン群)
プラセボ群3段階調整OR aOR
(95%CI)
中等度または重度のCLDを認めない生存394例中166例(42%)402例中179例(45%)aOR 0.84
0.55〜1.29
p=0.43

中等度または重度のCLDを認めない生存は、介入群394例中166例(42%)、プラセボ群402例中179例(45%)に認められました(3段階調整OR[aOR]0.84、95%CI 0.55〜1.29、p=0.43)。

肺のウレアプラズマ属コロニーは治療効果に影響しませんでした。

全体として、アジスロマイシン群では7件の重篤な有害事象が報告され(重篤度5件、中等度2件)、プラセボ群では6件の重篤な有害事象が報告されました(重篤度2件、中等度2件、軽度2件)。

コメント

未熟児慢性肺疾患(CLD, 新生児慢性肺疾患とも呼ばれる)について、国内の診療ガイドライン(JEBNeo 早産児の慢性肺疾患の予防・治療のための診療ガイドライン, 2023年)では、ウレアプラズマ陽性である場合には、⽣後2週間以内のアジスロマイシン投与を検討することを許容しています。ただし、肥厚性幽⾨狭窄症の発症に注意するよう併記されています(弱い推奨、低いエビデンスの確実性)。肥厚性幽⾨狭窄症とは、幽門(胃の出口)の筋肉が厚くなることで狭くなってしまい、母乳やミルクなどの内容物が通過しにくくなる状態です。

この推奨からも分かるように、予防的なアジスロマイシン投与の有益性については充分に検証されていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、アジスロマイシンの予防的使用は、ウレアプラズマ属菌のコロニー形成の有無にかかわらず、生理学的に定義された早産児の未熟児慢性肺疾患を有さない生存期間を改善しませんでした。

本試験結果を踏まえると、ウレアプラズマ陽性であっても積極的な予防的アジスロマイシン投与は推奨できません。英国以外の国や地域でも同様の結果が得られるのか、再現性も含めた検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、アジスロマイシンの予防的使用は、ウレアプラズマ属菌のコロニー形成の有無にかかわらず、生理学的に定義された早産児の未熟児慢性肺疾患を有さない生存期間を改善しなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:マクロライド系抗生物質が妊娠30週未満で出生するリスクの高い早産児の未熟児慢性肺疾患(CLD)の発症率を低下させるかどうかについては、系統的レビューで矛盾するエビデンスが報告されており、肺ウレアプラズマ属(Ureaplasma spp.)にコロニー形成された早産児もその対象である。充分な検出力を有する試験が不足しているため、われわれはマクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンが早産児において生理学的に定義された中等度または重度のCLDを発症することなく生存率を改善するかどうかを評価することを目的とした。

方法:AZTECは多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験であり、英国の28施設の三次新生児集中治療室で実施された。対象は、妊娠30週未満で出生し、出生後72時間以内に非侵襲的(持続的気道陽圧または加湿高流量鼻カニューレ療法)または侵襲的(気管内チューブによる)呼吸補助を2時間以上受けた乳児とした。対象となった乳児は、ランダムに並べ替えられた4つのブロックを用いて、アジスロマイシンを1日あたり20mg/kgを3日間、その後10mg/kgを7日間静脈内投与する群とプラセボを投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられた。割り付けは施設と出生時の妊娠週数(28週未満と28週以上)で層別化した。アジスロマイシンとプラセボのバイアルは、臨床医、両親、研究チームのマスキングを確実にするため、タンパーエビデントカスタムダンボールカートン*に封入された。
*不正開封の跡がすぐ分かるようカスタムされたダンボール箱
主要アウトカムは、生理的に定義された中等度または重度のCLDを月経後36週時点で発症していない生存期間であった。転帰と安全性はintention-to-treatベースで解析された(ランダムに割り付けられた乳児全員、ランダム化後の事象にかかわらず)。
本試験はISRCRN(11650227)に登録され、終了した。

研究結果:乳児は2019年10月9日から2022年3月22日の間に募集された。1,505例の適格乳児のうち799例(53.1%)がランダム割付けを受け、3例の乳児がデータ使用の同意を含めて取り下げられ、796例が解析の対象となった。中等度または重度のCLDを認めない生存は、介入群394例中166例(42%)、プラセボ群402例中179例(45%)に認められた(3段階調整OR[aOR]0.84、95%CI 0.55〜1.29、p=0.43)。肺のウレアプラズマ属コロニーは治療効果に影響しなかった。全体として、アジスロマイシン群では7件の重篤な有害事象が報告され(重篤度5件、中等度2件)、プラセボ群では6件の重篤な有害事象が報告された(重篤度2件、中等度2件、軽度2件)。

解釈:アジスロマイシンの予防的使用は、ウレアプラズマ属菌のコロニー形成の有無にかかわらず、生理学的に定義されたCLDを発症することなく生存期間を改善しなかったことから、臨床診療において推奨することはできない。

資金提供:英国国立医療介護研究機構(UK National Institute for Health and Care Research)

引用文献

Azithromycin therapy for prevention of chronic lung disease of prematurity (AZTEC): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial
John Lowe et al. PMID: 38679042 DOI: 10.1016/S2213-2600(24)00079-1
Lancet Respir Med. 2024 Apr 25:S2213-2600(24)00079-1. doi: 10.1016/S2213-2600(24)00079-1. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38679042/

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