軽症~中等症の症状を有するCOVID-19外来患者におけるフルボキサミンの
フルボキサミンは、強迫性障害の治療薬として1994年に米国食品医薬品局、1995年5月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって承認された選択的セロトニン再取り込み阻害剤であり、現在は、社会不安障害やうつ病など様々な精神疾患の治療に使用されています。初期のCOVID-19試験では、フルボキサミンを投与された患者の臨床転帰が改善したことが報告されています(PMID: 35385087、PMID: 33180097、PMID: 30728287)。しかし、ワクチン接種も進んでいる中で、軽症~中等症の症状を有するCOVID-19外来患者におけるフルボキサミンの症状期間短縮あるいは入院防止効果は不明です。
そこで今回は、米国において、軽症~中等症のCOVID-19に対する低用量フルボキサミン(50mg、1日2回)の10日間投与の有効性をプラセボと比較検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験では、現在実施中のAccelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV-6)プラットフォームを用いたランダム化臨床試験であり、軽症から中等症のCOVID-19外来患者を対象に、再利用薬(epurposed medications、Drug Repositioning)を試験するようにデザインされました。2021年8月6日から2022年5月27日の間に、米国内の91施設で、検査でSARS-CoV-2感染が確認され、7日以内に急性COVID-19の症状を2つ以上経験した30歳以上の被験者計1,288例が登録されました。試験参加者は、フルボキサミン50mgを1日2回10日間投与する群と、プラセボを投与する群にランダムに割り付けられました。
本試験の主要アウトカムは、持続的な回復(症状がない連続した3日間のうち3日目と定義)までの時間でした。28日目までの入院、緊急医療受診、救急外来受診、死亡の複合アウトカムを含む7つの副次的アウトカムが設定されました。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された1,331例(年齢中央値 47歳[IQR 38~57歳]、57%が女性、67%がSARS-CoV-2ワクチンの2回以上の接種を報告)中、1,288例が試験を完了しました(フルボキサミン群 674例、プラセボ群 614例)。
フルボキサミン群 | プラセボ群 | ハザード比 HR (95%CI) | |
持続的回復までの時間 | 12日 (IQR 11~14日) | 13日 (IQR 12~13 日) | HR 0.96 (0.86~1.06) 利益[HR>1で決定]が得られる確率の事後 P=0.21 |
入院、緊急医療受診、救急部受診、または死亡 | 26例(3.9%) | 23例(3.8%) | HR 1.1 (0.5~1.8) 利益[HR<1により決定]が得られる確率の事後 P=0.35 |
持続的回復までの時間の中央値は、フルボキサミン群で12日(IQR 11~14日)、プラセボ群で13日(IQR 12~13 日)でした(ハザード比 [HR] 0.96、95%信用区間 0.86~1.06、利益[HR>1で決定]が得られる確率の事後 P=0.21)。複合アウトカムについては、フルボキサミン群の26例(3.9%)が入院、緊急医療受診、救急部受診、または死亡したのに対し、プラセボ群の23例(3.8%)でした(HR 1.1、95%信用区間 0.5~1.8、利益[HR<1により決定]が得られる確率の事後 P=0.35)。フルボキサミン群の1例とプラセボ群の2例が入院した;いずれの群でも死亡は発生しませんでした。有害事象は両群ともまれでした。
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COVID-19の流行初期からフルボキサミンによる重症化の抑制などの有効性が報告されていました。しかし、ワクチン接種者が増えている中で、軽症~中等症の症状を有するCOVID-19外来患者におけるフルボキサミンの有効性は不明でした。
さて、本試験結果によれば、軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミン50mgを1日2回10日間投与しても、プラセボと比較して持続的回復までの時間を改善することはありませんでした。すでに条件付き承認・承認されている治療薬がある中で、未承認のフルボキサミンを選択する意義はなさそうです。
ワクチン未接種者が少なくなっている中で、より重症化しやすい因子を有しているCOVID-19患者に対する有効性の高い治療戦略の確立が求められます。
☑まとめ☑ 軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミン50mgを1日2回10日間投与しても、プラセボと比較して持続的回復までの時間を改善することはなかった。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:軽症~中等症の症状を有するCOVID-19外来患者におけるフルボキサミンの症状期間短縮あるいは入院防止効果は不明である。
目的:米国において、軽症~中等症のCOVID-19に対する低用量フルボキサミン(50mg、1日2回)の10日間投与の有効性をプラセボと比較検討する。
試験デザイン、設定、参加者:現在実施中のAccelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV-6)プラットフォームを用いたランダム化臨床試験は、軽症から中等症のCOVID-19外来患者を対象に、再利用薬(epurposed medications、Drug Repositioning)を試験するようにデザインされた。2021年8月6日から2022年5月27日の間に、米国内の91施設で、検査でSARS-CoV-2感染が確認され、7日以内に急性COVID-19の症状を2つ以上経験した30歳以上の被験者計1,288例が登録された。
介入:参加者は、フルボキサミン50mgを1日2回10日間投与する群と、プラセボを投与する群にランダムに割り付けられた。
主要アウトカムと測定方法:主要アウトカムは、持続的な回復(症状がない連続した3日間のうち3日目と定義)までの時間であった。28日目までの入院、緊急医療受診、救急外来受診、死亡の複合アウトカムを含む7つの副次的アウトカムが設定された。
結果:ランダム化された1,331例(年齢中央値 47歳[IQR 38~57歳]、57%が女性、67%がSARS-CoV-2ワクチンの2回以上の接種を報告)中、1,288例が試験を完了した(フルボキサミン群 674例、プラセボ群 614例)。持続的回復までの時間の中央値は、フルボキサミン群で12日(IQR 11~14日)、プラセボ群で13日(IQR 12~13 日)であった(ハザード比 [HR] 0.96、95%信用区間 0.86~1.06、利益[HR>1で決定]が得られる確率の事後 P=0.21)。複合アウトカムについては、フルボキサミン群では26例(3.9%)が入院、緊急医療受診、救急部受診、または死亡したのに対し、プラセボ群では23例(3.8%)でした(HR 1.1、95%信用区間 0.5~1.8、利益[HR<1により決定]が得られる確率の事後 P=0.35)。フルボキサミン群の1例とプラセボ群の2例が入院した;いずれの群でも死亡は発生しなかった。有害事象は両群ともまれであった。
結論と妥当性:軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミン50mgを1日2回10日間投与しても、プラセボと比較して持続的回復までの時間を改善することはなかった。これらの知見は、軽症~中等症のCOVID-19患者において、この用量と期間でのフルボキサミンの使用を支持するものではない。
臨床試験登録 :ClinicalTrials.gov Identifier NCT04885530
引用文献
Effect of Fluvoxamine vs Placebo on Time to Sustained Recovery in Outpatients With Mild to Moderate COVID-19: A Randomized Clinical Trial
Matthew W McCarthy et al. PMID: 36633838 DOI: 10.1001/jama.2022.24100
JAMA. 2023 Jan 12. doi: 10.1001/jama.2022.24100. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36633838/
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