喘息増悪時にはSABAとICS+SABA、どちらが良いのか?
喘息症状の悪化に伴い、患者は一般的に短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)救助療法に頼ることになりますが、SABAは悪化した炎症に対処できません。そのため、急性増悪期の喘息患者は重度の喘息増悪のリスクにさらされています。アルブテロールとブデソニドの合剤をレスキュー薬として使用することで、アルブテロール単独と比較して、喘息の重症化リスクを低減できる可能性があります。
そこで今回は、吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等症から重症の喘息患者を対象に、アルブテロール単独と比較したアルブテロール・ブデソニドのレスキュー薬としての有効性と安全性を比較検討したMANDALA試験の結果をご紹介します。本試験は、多国籍第3相イベントドリブンランダム化試験でした。
本試験では、成人および青年(12歳以上)を1:1:1の割合で、3つの試験群のいずれかにランダムに割り付けました。
- アルブテロール180μgとブデソニド160μgの固定量併用投与(1回の投与量はそれぞれ90μgと80μgの2回投与)(高用量併用投与群)
- アルブテロール180μgとブデソニド80μgの合剤(各用量はそれぞれ90μgと40μgの2回投与)
- アルブテロール180μg(各用量は90μgの2回投与[アルブテロール単独群])
※4~11歳の小児は、低用量併用群またはアルブテロール単独群にランダムに割り付けられました。
有効性の主要評価項目は、intention-to-treat集団で行われたtime-to-event解析における重症喘息増悪の初発イベントでした。
試験結果から明らかになったことは?
合計3,132例の患者がランダム化を受け、そのうち97%が12歳以上でした。
重症喘息増悪のリスク | |
高用量併用群 vs. アルブテロール単独群 | ハザード比 0.74 (95%CI 0.62~0.89) P=0.001 |
低用量併用群 vs. アルブテロール単独群 | ハザード比 0.84 (95%CI 0.71~1.00) P=0.052 |
重症喘息増悪のリスクは、高用量併用群の方がアルブテロール単独群よりも26%有意に低いことが示されました(ハザード比 0.74、95%信頼区間[CI] 0.62~0.89;P=0.001)。低用量併用群のハザード比は、アルブテロール単独群と比較して0.84(95%CI 0.71~1.00;P=0.052)でした。
有害事象の発生率は、3つの試験群で同様でした。
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喘息予防・管理ガイドライン2021によれば、喘息治療の治療のステップは4段階に分かれています。増悪治療としては、軽症増悪に対しSABAが推奨されていますが、中等症以上、あるいはICS+LABAで長期管理されている場合は、ICSを含めた治療管理が求められます。しかし、日本ではICS+SABAの合剤が販売されていないことから、ICS+SABAに関する記載はありません。
さて、本試験結果によれば、4歳以上でコントロール不良の中等症から重症の喘息患者において、アルブテロール(SABA)180μgとブデソニド(ICS)160μgの合剤を必要に応じて使用した場合、アルブテロールのみを必要に応じて使用した場合と比較して、重度の喘息増悪のリスクが著しく低いことが示されました。一方、SABA+ブデソニド80μgではリスク減少傾向でした。効果推定値から見ても用量依存性が示されていることから、重度の喘息増悪リスクに対しては、SABA単独よりもSABAにICSを併用した方が良さそうです。ただし日本ではICS+SABAは販売されていません。ICS+LABAでも同様の有効性・安全性が認められるのかは不明です。
続報に期待。
✅まとめ✅ コントロール不良の中等症から重症の喘息患者において、アルブテロール180μgとブデソニド160μgの合剤を必要に応じて使用した場合、アルブテロールのみと比較して、重度の喘息増悪のリスクが著しく低かった。
根拠となった試験の抄録
背景:喘息症状の悪化に伴い、患者は一般的に短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)救助療法に頼ることになるが、SABAは悪化した炎症に対処できないため、患者は重度の喘息増悪のリスクにさらされている。アルブテロールとブデソニドの合剤をレスキュー薬として使用することで、アルブテロール単独と比較して、喘息の重症化リスクを低減できる可能性がある。
方法:吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等症から重症の喘息患者を対象に、アルブテロール単独と比較したアルブテロール・ブデソニドのレスキュー薬としての有効性と安全性を、多国籍第3相イベントドリブンランダム化試験を実施し、試験中も継続して投与した。成人および青年(12歳以上)を1:1:1の割合で、3つの試験群のいずれかにランダムに割り付けた。アルブテロール180μgとブデソニド160μgの固定量併用投与(1回の投与量はそれぞれ90μgと80μgの2回投与)(高用量併用投与群)。アルブテロール180μgとブデソニド80μgの合剤(各用量はそれぞれ90μgと40μgの2回投与)、またはアルブテロール180μg(各用量は90μgの2回投与[アルブテロール単独群])。4~11歳の小児を対象に、低用量併用群またはアルブテロール単独群にランダムに割り付けた。
有効性の主要評価項目は、intention-to-treat集団で行われたtime-to-event解析における重症喘息増悪の初発イベントとした。
結果:合計3,132例の患者がランダム化を受け、そのうち97%が12歳以上であった。重症喘息増悪のリスクは、高用量併用群の方がアルブテロール単独群よりも26%有意に低かった(ハザード比 0.74、95%信頼区間[CI] 0.62~0.89;P=0.001)。低用量併用群のハザード比は、アルブテロール単独群と比較して0.84(95%CI 0.71~1.00;P=0.052)であった。有害事象の発生率は、3つの試験群で同様であった。
結論:さまざまな吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等症から重症の喘息患者において、アルブテロール180μgとブデソニド160μgの合剤を必要に応じて使用した場合、アルブテロールのみを必要に応じて使用した場合と比較して、重度の喘息増悪のリスクが著しく低いことが示された。
資金提供:アビリオン社
ClinicalTrials.gov番号:NCT03769090
引用文献
Albuterol-Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue Inhaler for Asthma
Alberto Papi et al. PMID: 35569035 DOI: 10.1056/NEJMoa2203163
N Engl J Med. 2022 Jun 2;386(22):2071-2083. doi: 10.1056/NEJMoa2203163. Epub 2022 May 15.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35569035/
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