呼吸器患者におけるアドヒアランスと吸入手技の定量的評価において、電子的モニタリングの有効性はどのくらいですか?(前向きコホート研究; Int J Clin Pract. 2020)

03_呼吸器系
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A quantitative evaluation of adherence and inhalation technique among respiratory patients: An observational study using an electronic inhaler assessment device

Iman Hesso et al. PMID: 31621983 DOI: 10.1111/ijcp.13437

Int J Clin Pract. 2020 Feb;74(2):e13437. doi: 10.1111/ijcp.13437. Epub 2019 Oct 31.

Keywords: adherence; asthma; chronic obstructive pulmonary disease (COPD); community pharmacy; electronic monitoring device (EMD); inhaler technique (IT).

背景

アドヒアランス不良と吸入手技(inhaler technique, IT)に関連した問題は、歴史的に文献で報告されている。

アドヒアランスとITの評価に使用される一般的な方法のほとんどは、不正確または主観的なものであると報告されている。

患者が自宅で吸入器を使用している間、アドヒアランスとITの両方を客観的に測定できる電子モニタリング装置(electronic monitoring devices, EMDs)は、現在ではほとんど存在しない。

そこで、本研究では、英国で初めてこのようなEMDsを使用した地域ケアの呼吸器患者のアドヒアランスレベルとITを調べることを目的とした。

方法

プロスペクティブ、多施設、観察的コホート研究を実施した。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の患者を、ロンドン西部と南部の独立したコミュニティ薬局から募集した。

患者には乾式粉体吸入器(DPI)をEMDsに装着して1ヶ月間使用した。

アドヒアランスはまた、薬局の調剤データ、吸入器用量カウンターおよび自己報告を使用して評価された。

結果

・患者48例のデータが得られた。選択したEMDによって特定された正しい間隔かつ正しい方法で吸入器を使用したのは患者8例のみであった。

・EMDsによって測定された実際のアドヒアランス率の中央値は42.7%であった。これは、ドーズカウンターのアドヒアランスの中央値(100%)、薬剤補充アドヒアランス(MRA)の中央値(100%)、カバーした日数の割合(PDC)(97.8%)、自己申告のアドヒアランスとは有意に異なっていた(それぞれP<0.001)。

・1ヵ月間にDPIの使用を試みたファイルは2,188件あり、そのうち840件にITエラーがあった。手技エラー率(technique error rate, TER)の中央値は30.1%であった。記録された最も一般的なエラーは以下の通りであった:複数回の吸入、吸入なしでの薬剤装填、デバイスの正しい装填の失敗。

結論

今回の研究では、用量カウンター、処方箋の補充、自己申告などの手段が、観察された患者の高レベルのアドヒアランスを示していることが示された。しかし、EMDsから提供された客観的なデータでは、実際のアドヒアランス率が有意に低いことが示されており、地域社会の患者のアドヒアランスがいかに可変的で問題であり続けているかを反映している。

コメント

喘息、COPDなどの呼吸器疾患については、疾患コントロールのために吸入アドヒアランスが重要です。したがって、吸入アドヒアランスの評価を研究した報告が多くなされています。その一方で、研究の質、内的妥当性の低さについて懸念されており、その評価方法の客観的な手法が求められています。

吸入器の種類として、加圧式定量噴霧吸入器(pressurized meterdose inhaker; pMDI)、ソフトミスト吸入器(soft mist inhaler; SMI)、ドライパウダー吸入器(dry powder inhaler; DPI)があり、今回の研究ではDPIを使用している患者を対象としています。

さて、本試験結果によれば、用量カウンター、処方箋の補充、自己申告によるアドヒアランスはほぼ100%でしたが、客観的指標である電子モニタリング装置(electronic monitoring devices, EMDs)では42.7%と有意に低い値でした。また複数回の吸入、吸入なしでの薬剤装填、デバイスの正しい装填の失敗などの手技エラーも報告されており、手技エラー率は30.1%でした。

吸入アドヒアランスは高くても約50%と捉えておいた方が良いのかもしれません。薬局や病院での継続的な吸入指導が必要である一因にもなるのではないでしょうか。継続して追っていきたいテーマです。今後の報告に期待。

✅まとめ✅ 喘息あるいはCOPD患者における吸入アドヒアランスは、用量カウンター、処方箋の補充、自己申告ではほぼ100%であったが、電子モニタリング装置では42.7%であり、手技エラー率は30.1%であった

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