Levetiracetam for convulsive status epilepticus in childhood: systematic review and meta-analysis
Ibtihal Abdelgadir et al.
Arch Dis Child. 2020 Oct 15;archdischild-2020-319573. doi: 10.1136/archdischild-2020-319573. Online ahead of print.
PMID: 33060105
DOI: 10.1136/archdischild-2020-319573
Keywords: neurology; pharmacology; therapeutics.
試験の重要性
てんかん発作の長期化は、重大な並存疾患を伴う生命を脅かす緊急事態である。
目的
小児の痙攣性てんかん重積状態(convulsive status epilepticus, CSE)の治療におけるレベチラセタムの有効性と安全性を明らかにすること。
データソースおよび試験の選択
PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびCumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureを、開始から2020年4月までの間に検索しました。
生後1ヶ月~18歳の小児を対象としたランダム化比較試験(randomised controlled trials, RCTs)のみを評価対象とした。
2名のレビュアーがデータの評価と抽出を行った。
データの抽出と合成
特定された被引用数 20,637報のうち10研究が含まれた。
主なアウトカム
てんかん発作(Cessation of seizure activities)の停止、てんかん発作停止までの時間、迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation, RSI)の必要性、集中治療室(intensive care unit, ICU)入院、24時間後の発作の再発、有害事象、全死亡。
結果
・RCT 10件を対象とした(n=1,907)。
・レベチラセタムとフェニトイン(リスク比(RR)=1.03、95%CI 0.98~1.09)、レベチラセタムとホスフェニトイン(RR=1.16、95%CI 1.00~1.35)、またはレベチラセタムとバルプロ酸塩(RR=1.10、95%CI 0.94~1.27)を比較しても、てんかん発作活動の停止に有意差は認められなかった。
・レベチラセタム vs. フェニトイン(平均差(MD)=0.45、95%CI -1.83~0.93)、またはレベチラセタム vs. ホスフェニトイン(MD=0.70、95%CI -4.26~2.86)の てんかん発作停止時期について差は認められなかった。
・ICU入院、有害事象、24時間後の発作の再発、RSI、全死亡率に関しては有意差はなかった。
結論
レベチラセタムは、小児CSEのセカンドライン治療としてフェニトイン、ホスフェニトイン、バルプロ酸塩と同等である。
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てんかん重積状態(SE)とは?
てんかん重積状態(SE)とは、「発作がある程度の長さ以上に続くか、または、短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの」と定義されてきました(国際抗てんかん連盟:ILAE,1981)。持続時間について、けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで,30分以上持続すると後遺障害の危険性がある(ILAE,2015)とされています。
通常、てんかん発作は1〜2分で治ることが多いため、5分間以上継続する場合はSEと判断されるという事です。
てんかん重積状態とは?
けいれん発作が5分以上持続する場合を早期てんかん重積状態(early status epilepticus)、ベンゾジアゼピン系薬剤による治療で頓挫せず30分以上持続する場合を確定したてんかん重積状態(established status epilepticus)、抗てんかん薬の点滴・静注などで頓挫せず60~120分以上持続する場合を難治てんかん重積状態(refractory status epilepticus)といいます。
治療は、各々のstageに応じた治療を行い、全身麻酔によっても抑制されず24時間以上持続する場合を超難治てんかん重積状態(super-refractory status epilepticus)といいますが、治療法は確立されていません。また、非けいれん性てんかん重積状態(NSE)の治療もけいれん性てんかん重積状態に準じますが、全身麻酔の有用性は定まっていません。
各ステージの治療法は?
第1段階:早期てんかん重積状態
第1段階での治療薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパム静脈内注射ないしロラゼパム静脈内注射(本邦未承認)です。
全身麻酔薬としては、小児に対してミダゾラムが推奨されています。
第2段階:確定したてんかん重積状態
第2段階での治療薬は、ホスフェニトイン、フェノバルビタール、ミダゾラム、レベチラセタムです。
第3段階:難治てんかん重積状態(refractory status epilepticus)
第3段階での治療薬は、ミダゾラム、プロポフォール、チオペンタール、チアミラールです。
今回の研究で分かったことは?
今回の研究の対象となった痙攣性てんかん重積状態(CSE)とは、SEの第2段階のことです。本邦ではミダゾラム(適応外使用)が推奨されています。
海外では本邦の推奨とは異なり、小児CSEの治療薬として、フェニトイン、ホスフェニトイン、バルプロ酸塩が推奨されているようです。今回、レベチラセタムの有効性が、これらの推奨薬と差があるのか検証しています。
さて、試験結果によれば、てんかん発作活動の停止に有意差は認められず、またICU入院、有害事象、24時間後の発作の再発、RSI、全死亡率に関しても差がなかったとのことです。
したがって、現段階において、小児CSEに対するレベチラセタムは、セカンドライン治療としてフェニトイン、ホスフェニトイン、バルプロ酸塩と同等ということになります。
日本においては、海外と比較して、小児てんかんの研究が遅れているように思います。日本人を対象とした研究あるいは、海外の試験結果を慎重に外挿した診療ガイドラインの充実が求められるのではないでしょうか。
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